事業承継
(画像=PIXTA)

昨今では地方を中心に、「後継者が見つからない…」と悩む中小企業が珍しくない。今や後継者不足は社会問題のひとつであり、国全体で早急に対策を進めることが求められている。後継者に対して不安を感じる経営者は、いち早く正しい対策をチェックしておこう。

目次

  1. 中小企業が直面する「後継者不足」の実情
  2. なぜ事業承継が進まない?中小企業の後継者探しに潜む課題
    1. 1.親族が後継者になりたがらない
    2. 2.親族内で意見が割れ、後継者がなかなか決まらない
    3. 3.後継者候補の能力不足・知識不足
    4. 4.親族外に継がせることへの躊躇
  3. 事業承継がビジネスチャンスにつながる?課題解決に向けた動きも
  4. 後継者がいない…そんな時に中小企業がとれる3つの選択肢
    1. 1.親族や従業員を育成し、後継者にする
    2. 2.M&Aで会社を売却する
    3. 3.上場によって優秀な人材を集める
  5. 後継者が見つからない中小企業が、事業承継を成功させるポイント
    1. 1.早急に準備にとりかかり、余裕のあるスケジュールを組み立てる
    2. 2.現経営者が健在なうちに専門家へ相談する
    3. 3.会社の資産や企業価値を把握しておく
  6. 後継者には教育が必要!経営知識・スキルを学ばせる育成方法とは?
  7. 後継者不足は深刻ではあるものの、解決できない問題ではない
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中小企業が直面する「後継者不足」の実情

日本全国の中小企業にとって、「後継者不足」は喫緊の課題となっている。特に経営者が高齢にさしかかっている企業では、黒字経営を続けていても後継者不足によって倒産をむかえてしまうケースが珍しくない。

その現状をもう少し理解するために、以下では後継者不足に関する中小企業庁のデータを見ていこう。「中小企業庁長官 平成30年 年頭所感」によると、国内の中小企業は以下のような状況に直面している。

〇中小企業が直面している状況
・今後10年の間に、70歳を超える経営者が約245万人にのぼる
・そのうち、約半数にあたる127万人の経営者が後継者未定である
・この現状を放置すると、2025年頃までで約650万人の雇用、約22兆円のGDPを失う

上記の「127万人(後継者未定の経営者)」は、日本企業全体の3分の1にものぼる数字だ。このまま後継者不足が解決されない状況が続くと、近い将来「大廃業時代」が到来することで、日本経済は大きなダメージを受けることになる。

もちろん、当事者である中小企業のオーナーにとっても、後継者不足は決して放置できない問題だろう。後継者不足はすぐに解決できる問題ではないため、将来的に直面する可能性がある経営者は、いち早く現状の理解と対策を進めることが重要だ。

>>後継者対策についてもっと知りたい方はこちら

なぜ事業承継が進まない?中小企業の後継者探しに潜む課題

では、中小企業の事業承継はなぜスムーズに進んでいないのだろうか。ケースごとに事情はやや異なるが、その要因としては主に以下の4点が挙げられる。

1.親族が後継者になりたがらない

身内に配偶者や子どもがいる場合、多くの経営者は「親族に跡を継いでほしい」と考えている。周りの従業員にとっても、親族が後継者になることは妥当と感じるケースが多いため、親族がそのまま後継者になれば事業承継はスムーズに進むはずだ。

しかし、該当する親族がすでにほかの職業に就いている場合や、現時点で会社の経営が行き詰まっている場合には、親族本人が「後継者になりたがらない」ことが多い。また、経営者になると個人保証などのリスクを抱える形になるため、そのリスクを嫌って労働者という道を選択する人も増えてきている。

2.親族内で意見が割れ、後継者がなかなか決まらない

中小企業の事業承継では、経営者とその配偶者や、子ども同士(後継者候補)で意見が割れてしまい、後継者がなかなか決まらないようなトラブルが起こりがちだ。「誰を後継者にするのか?」について揉めることもあれば、「子どもには継がせたくない」とそもそも事業承継に反対されてしまう光景も見受けられる。

また、経営者がさまざまな資産を所有している場合は、事業承継が相続・贈与のトラブルにつながる恐れもある。つまり、家庭の状況次第で事業承継は非常にデリケートな問題となるため、周りの人が安易に踏み込めない状況も多く存在するだろう。

3.後継者候補の能力不足・知識不足

仮に後継者候補が見つかっても、その人物に経営者としてのスキルが備わっているとは限らない。事業に関するノウハウはもちろん、経営者には特有のスキルや資質も求められる。

そのような能力・知識が不足している状態では、安心して会社の今後を任せることは難しいだろう。無理に事業承継を進めると、経営が一気に傾いてしまう恐れがある。

したがって、事業承継では「必要な能力・知識を備えた後継者」を見つけることが必須となるが、候補となる人材が限られた中小企業では、該当する人物がそもそも見つからないケースが多い。

4.親族外に継がせることへの躊躇

身内に後継者候補が見つからなかった場合は、親族外への事業承継も考えなくてはならない。一般的にはナンバー2にあたる従業員が適任者となりそうだが、ナンバー2にあたる人材は以下のような課題を抱えている可能性がある。

〇ナンバー2を後継者に選ぶ際の懸念材料
・経営者の補完的な業務をこなすことが多いため、経営能力自体には疑問が残る
・経営者とあまり年齢が離れていないため、本当の意味での世代交代にはならない
・社内での立ち振る舞いによっては、従業員からの支持が少ない場合も

また、経営者の中には「会社を手放したくない」との想いから、親族外承継を拒んでしまうケースもあるだろう。身内が引き継いでくれれば会社の存在を近くに感じられるが、従業員や社外の人物に承継するとなれば、精神的なダメージを受けてしまう経営者は多いはずだ。

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事業承継がビジネスチャンスにつながる?課題解決に向けた動きも

ここまでは後継者不足の厳しい現状を解説してきたが、実は中小企業の事業承継を「ビジネスチャンス」として前向きにとらえる企業も存在する。たとえば、地方進出を狙う企業の中には、手っ取り早く地方での経営基盤を整えるために、地方中小企業の買収を積極的に検討している企業が多い。

また、経営資源が乏しいスタートアップにとっても、中小企業の買収は効率的な成長につながる。技術的に優れた中小企業を買収すれば、短期間で新しい技術を生み出せる可能性もあるため、事業承継に悩む中小企業は「イノベーションを生む土台」ともいえる存在なのだ。

このように、あえて地方の中小企業を求めるケースが増えてきた影響で、近年では事業承継の課題解決に向けた動きが顕著になってきている。具体的な動きとしては、以下のようなものが挙げられるだろう。

事業承継の課題解決に向けた主な動き概要
事業承継税制の実施事業承継における相続税・贈与税に関して、一定期間の納税猶予を受けられる制度。
・公的な相談窓口の設置事業承継をサポートする、「事業引継ぎ相談窓口」「事業引継ぎ支援センター」が日本全国に設置されている。
・マッチングプラットフォームの登場「TRANBI」や「M&Aクラウド」など、M&Aのマッチングを支援する民間サービスが登場した。

さらに、中小企業庁は2017年7月7日に「事業承継5ヶ年計画」の策定を発表することで、事業承継支援を集中的に支援する姿勢を見せている。上記の「事業承継税制」はまさに計画の一環だが、今後もさまざまな施策が実施されるかもしれない。

つまり、中小企業の事業承継問題は、解決に向けて国内全体が動き出している状況だ。新しい制度やサービスが登場すれば、今以上に事業承継を進めやすい環境が整う可能性があるため、最新情報は引き続きチェックしておきたい。

後継者がいない…そんな時に中小企業がとれる3つの選択肢

国内全体で課題解決に向けた動きが見られるとはいっても、「後継者が見つからない…」と悩む経営者は焦りを感じているはずだ。新しい制度やサービスを活用することは大切だが、後継者不足を解決するには経営者自身が積極的に動くことも求められる。

では、後継者がいない中小企業には、具体的にどのような選択肢が残されているだろうか。後継者不足に悩む経営者は、各選択肢の概要やメリット・デメリットを以下でしっかりと確認しておこう。

1.親族や従業員を育成し、後継者にする

現時点で経営者にふさわしい人材が見つからなくても、教育・育成によって経営者に育て上げることは可能だ。詳しくは後述するが、経営者として必要な知識・スキルを学ばせる方法には、さまざまな選択肢がある。

会社に近しい人物を後継者にできれば、承継後の会社経営に大きな支障をきたすことはなく、現経営者の精神的な負担も抑えられるだろう。ただし、以下でまとめた通り、親族や従業員への承継には軽視できないデメリットもある。

メリットデメリット
・従業員からの理解を得やすい
・経営者の負担を抑えられる
・方法次第では、時間やコストを抑えられることも
・親族を跡継ぎにする場合は、事業承継の手続きを簡略化できる
・株式を買い取る資金が必要になる(後継者)
・相続税や贈与税などの税負担が増える
・育成コストがかかる

身内を後継者にする場合であっても、事業承継を進めるには株式を買い取ってもらう必要がある。つまり、後継者側で買取資金を用意する必要があるため、後継者は余裕をもって資金計画を立てておかなくてはならない。

2.M&Aで会社を売却する

M&Aによって会社を合併・買収してもらう方法は、手っ取り早く後継者不足を解決できる選択肢だ。M&Aが実施されると、買収側の企業が経営をそのまま引き継いでくれるため、会社そのものや事業、さらには従業員の雇用を守ることにつながる。

ただし、身内への承継とは状況が大きく異なるため、注意しておきたいデメリットも以下のように変わってくる。

メリットデメリット
・後継者不足を手っ取り早く解決できる
・会社や事業をたたまなくて済む
・従業員の雇用を守れる
・オーナーの手元に売却益が残る
・専門家に依頼するコストや、サービスの利用料などが発生する
・会社や事業が完全に手元から離れる
・M&A実施後に経営方針が変わってしまう恐れも

一般的なM&Aでは、相手探しの段階から仲介会社などの専門家に依頼するケースが主流だ。専門家に依頼をするとM&Aをスムーズに進めやすくなるが、売買価格によっては数千万円以上のコストが発生する場合もあるので、料金体系は事前にしっかりとチェックしておきたい。

3.上場によって優秀な人材を集める

上場とは、公開取引市場に株式を公開することだ。株式会社が上場を果たすと、社会的な信用性や注目度が一気に上昇するため、優秀な人材が集まりやすくなる。その中から次期後継者を選べば、会社や事業のさらなる成長を期待できるだろう。

ただし、中小企業にとって上場のハードルは非常に高く、そもそも上場を目指せない企業が多い。

メリットデメリット
・優秀な人材が集まりやすくなる
・個人保証や担保提供が不要になる
・会社のさらなる成長を期待できる
・有限会社はそもそも上場できない
・中小企業にとってはハードルが非常に高い
・周りからの理解も必要になる

上場は選択肢のひとつではあるものの、多くの中小企業にとって現実的な手段ではない。仮に上場を目指すのであれば、数年単位での綿密な事業計画と資金計画が必要になる。

細かく見れば「廃業」もひとつの選択肢にはなるが、廃業をすると会社・事業が完全に無くなってしまうため、ほとんどの経営者は望んでいない選択肢のはずだ。したがって、上記で紹介した3つの方法をしっかりと見比べて、各ケースに最適な方法を見極めておきたい。

後継者が見つからない中小企業が、事業承継を成功させるポイント

事業承継を成功させるには、上記で紹介した3つの選択肢以外にも押さえておきたいポイントがある。特に以下で挙げる3つの点は、すぐにでも意識するべき重要なポイントとなるので、後継者不足に悩む経営者はしっかりと読み進めていこう。

1.早急に準備にとりかかり、余裕のあるスケジュールを組み立てる

一般的な事業承継ではさまざまな工程が必要になるので、想像以上に時間がかかってくる。簡単に挙げるだけでも、「後継者の選定と育成」「事業運営の引き継ぎ」「専門家探し」などの工程が必要であり、数年単位で計画が進められるケースも決して珍しくはない。

したがって、経営者は後継者不足を認識し始めた段階で、早急に準備にとりかかることが重要だ。特に経営者が高齢にさしかかっている場合は、いつ現経営者が働けなくなるかわからないので、少しでも早く行動を始めなくてはならない。
また、M&Aにおける買い手が見つからないなど、事業承継では想定外のトラブルが発生することも多いため、余裕のあるスケジュールを組み立てることも忘れないようにしよう。

2.現経営者が健在なうちに専門家へ相談する

事業承継において、仲介会社や弁護士などの専門家は非常に心強い存在だ。専門的な視点から最適な手段を提案してもらえるうえに、相談先によっては最適なパートナー企業を紹介してもらえる可能性がある。

ただし、「身を引きたいから相談をしよう」のように、引退直前に依頼をするのではタイミングとしては遅い。理想のタイミングで引退をしたいのであれば、現経営者が健在なうちに相談をすることが必要だ。

相談をする時期が早いほど、中小企業がとれる選択肢にも幅が出てくるため、事業承継を意識したらすぐに専門家へ相談することを心がけよう。

>>事業承継の相談先についてもっと知りたい方はこちら

3.会社の資産や企業価値を把握しておく

「後継者不足の解決」のみに集中していると、そのほかの条件面が目に入らなくなってしまい、不利な形で会社を売却してしまう恐れがある。特に事業承継の手段としてM&Aを選択する場合は、ほとんどの買い手側が「少しでも安く買収したい」と考えているため、安く買い叩かれないように細心の注意を払うことが必要だ。

したがって、現段階での会社の資産や企業価値は、経営者自身がしっかりと把握しておかなくてはならない。仲介会社などの専門家に依頼をすれば、会社の資産・企業価値を詳しく算定してもらえるため、前もって依頼することを検討しておこう。

後継者には教育が必要!経営知識・スキルを学ばせる育成方法とは?

これから事業承継に臨む経営者は、後継者に経営知識・スキルを学ばせるための育成方法も知っておきたい。しばらくは現経営者が付き添い、実務を通して直接ノウハウを伝える方法もひとつの手だが、後継者の育成方法としてはほかにも以下のような選択肢がある。

後継者の主な育成方法概要
・セミナーに参加させる経営者同士の交流会や、すでに成功を収めた実業家のセミナーなど、経営知識を学べるイベントに参加させる方法。
・会社の改革プロジェクトを任せる中長期的な経営ビジョンの策定など、会社の改革プロジェクトを任せることで、後継者のリーダーシップや判断力を磨く方法。
・中小企業大学校で研修を受けさせる「中小企業大学校」とは、中小機構が実施する経営者向けの研修のこと。多彩な研修メニューが用意されているだけではなく、受講者同士による情報交換の場としても活用されている。

事業承継に臨む現経営者は、当然ながら本業もこなさなくてはならない。特に高齢にさしかかっている経営者にとって、本業と後継者育成の両立は非常にハードルが高いだろう。
そのため、上記で紹介したセミナーなどを活用し、後継者自身の努力によって知識・スキルを身につけてもらう方法も検討することが大切だ。ただし、経営知識・スキルは一朝一夕では身につかないので、後継者育成に関しても余裕をもったスケジュールを組むようにしよう。

>>後継者育成のポイントについてもっと知りたい方はこちら

後継者不足は深刻ではあるものの、解決できない問題ではない

多くの中小企業が直面する「後継者不足」は、今や社会問題ともいえるほど深刻だ。ただし、事業承継を支援する環境は徐々に整いつつあり、後継者を育成する方法にも複数の選択肢がある。

人材が限られた地方の中小企業であっても、事前にしっかりと計画を立てたうえで行動を始めれば、後継者不足は決して解決できない問題ではない。「後継者がなかなか見つからない…」と悩んでいる経営者は、本記事を参考にしながらいち早く行動を始めてみよう。

文・THE OWNER編集部

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