経営者,アーリーリタイア
(画像=kosmos111/Shutterstock.com)

現在第一線で活躍している経営者にも、いずれはリタイアする時がやって来る。それは、自身の体力によるものか、それとも他の要因によるものかはわからない。突然リタイアを余儀なくされることを考えると、事業がうまくいっているうちにリタイアすることを考えてみてもいいだろう。「アーリーリタイア」をして、余生をゆっくり過ごすのも悪くないはずだ。

経営者のアーリーリタイアは、サラリーマンのそれとは違うのだろうか。また、どのような点に注意してリタイアの準備をすればいいのだろうか。

目次

  1. アーリーリタイアとは?
  2. 経営者だって検討したいアーリーリタイア
  3. 経営者がアーリーリタイアするために準備しておくべき3つのこと
    1. (1)自分の生活費の準備
    2. (2)会社と従業員のための準備
    3. (3)相続に関する準備
  4. 経営者のアーリーリタイアとして、M&Aは積極的に検討すべき?
  5. アーリーリタイアのためには、入念な準備が必要

アーリーリタイアとは?

昨今、「FIRE」、つまりアーリーリタイアを目指す人が増えているという。FIREとは“Financial Independence Retire Early”の頭文字をとったもので、若いうちから資産形成を始め、経済的自立を果たして早期に仕事を辞め、その後は自由に生きるという生き方だ。20~30代の若手サラリーマンの間で、話題になっているという。

アーリーリタイア(早期リタイア)とは、60歳の定年を待たずに仕事生活からリタイアすることだ。近年では30代・40代の高年収の会社員や起業家がアーリーリタイアを志し話題となっている。

また、アーリーリタイアと似た言葉に、セミリタイアがある。セミリタイアは貯金や資産をもとに定年前に退職し、自由な時間を過ごしながらも一定の収入は得られる仕事をする生活スタイルを指す。

セミリタイアは完全には労働を辞めないのに対して、アーリーリタイア(早期リタイア)は貯金・退職金・資産のみで生活を送らなければならない。そのためアーリーリタイアをする人の多くは、若いうちに多くの資産を持つ富裕層や高収入の職業、起業家・経営者などに限られるのだ。

経営者だって検討したいアーリーリタイア

一般的にサラリーマンには定年があり、働ける期間が限られている。一方で経営者には定年という概念がなく、その気になればいくらでも働き続けることができる。実際、中小企業経営者の年齢で最も多いのは66歳であり、サラリーマンなら定年退職している年齢だ。

では、経営者はリタイアを検討する必要はないのだろうか。実はリタイアに関しては、経営者のほうがサラリーマンよりも真剣に考えなければならない。その理由は2つある。

1つは、サラリーマンには代わりがいるが経営者には代わりがいない、ということだ。サラリーマンは組織で仕事をしているため、たとえ優秀な人が辞めても事業を継続できる。しかし中小企業の場合は経営者が重要な実務を担っているケースが多く、経営者が倒れたら途端に事業の継続が困難になることが多い。したがって経営者は、自分に何かあった際のプランを用意しておかなければならない。

もう1つは、早くやめることで世界が広がるということだ。経営者は、自分の会社に多大なる時間と労力を割いているはずだ。逆に言えば、経営者でいる期間は他のことができない、とも言える。リタイアすることで世界が広がり、次にやりたいことが見つかるかもしれない。

実際、リタイア後に「シリアルアントレプレナー」となり、連続して事業を起こしている人もいる。事業の目途がついた時に後進に道を譲り、自分は別の新しいことを始めることは、自分のためにも社会のためにもプラスになるはずだ。

経営者がアーリーリタイアするために準備しておくべき3つのこと

経営者が実際にアーリーリタイアする場合、どんな準備が必要になるのだろうか。主に以下の3点が考えられる。

(1)自分の生活費の準備

リタイアすると収入が途絶えるので、リタイアする際は生活費の見通しを立てておく必要がある。

2018年の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は月額平均28万7,315円、年間では約350万円だ。少なくとも、この金額を向こう1年間で確保しなければならない。仮に50歳でリタイアして、貯金を切り崩して生活しようとすると、65歳までの15年間で5,250万円ものお金が必要になる。

65歳になって年金がもらえるとしても、中小企業経営者の多くは国民年金のみを受給することになるので、受給額は夫婦2人で最大月13万円程度だ。年間約150万円なので、200万円足りないことになる。

仮に夫婦ともに85歳まで生きるとすると、5,250万円に200万円×20年を足した9,250万円ものお金が必要になる。リタイアする年齢によって変わるが、資産はなるべく多く残しておいたほうがいいだろう。

資産を形成する方法は、主に3つある。1つは、保険などでリタイア時に必要な資金を蓄えておくことだ。イデコなどの公的制度を使う方法、年金保険を使う方法、会社で退職金を積み立てる方法などがある。またリタイアする際に、自社株を売却してお金を作る方法もある。この場合は、仕組みをうまく利用すると会社の節税にも役立つことがある。

もう1つは、不労所得を得ることだ。たとえば現役時代に投資用不動産を買って、リタイア後もその不動産から賃料収益を得る方法がある。不動産だけでなく、投資信託や株を運用する方法もある。ただし、市場の影響を受けやすく、価格や利益が不安定であることがデメリットと言える。

3つ目は完全にリタイアするのではなく、セミリタイアする方法だ。これまで培ってきたノウハウを生かして他社の手伝いをすることもできるし、顧問として自分の会社に残る方法もある。リタイア後、執筆活動や講演活動で収入を得ている人もいる。

現役時代のようにバリバリ働くのではなく、足りない分を補うために仕事をするイメージだ。こちらは、ある程度の収入が期待できるが、都合のいい時に仕事があるわけではないことがデメリットだ。

いずれにしても、いつリタイアするのか、その後の生活にどれくらいお金がかかるのか、そのお金をどうやって工面するのかは、リタイアする前にじっくり検討すべきだ。信頼できる税理士や、ファイナンシャルプランナーに相談してもいいだろう。

(2)会社と従業員のための準備

自分がリタイアした後の会社と、残る従業員のための準備も検討しなければならない。

会社を清算するという方法がある。この場合会社は残らないから、その後のことは考える必要がない。従業員が家族だけで、会社を清算しても問題ない場合もあるだろう。しかしながら、ほとんどの場合は取引先や一般の従業員がいるため、すぐには会社を清算できないケースが多い。

その場合、会社を誰かに引き継ぐことになる。問題は、誰に引き継ぐかだ。中小企業の多くは、創業者またはその家族が経営者であることが多い。この場合は身内に引き継ぐか、身内以外の人に引き継ぐかで、すべき準備は変わってくる。

身内に引き継ぐ場合は、引き継ぎ自体はさほど難しくはないだろう。とはいえ、古参の従業員と新しい経営者の関係がうまくいかないこともある。

身内以外に引き継ぐ場合は、さらに難しい。中小企業の借入金には、ほとんどの場合経営者の個人保証がついており、これを含めて新経営者に引き継ぐことになる。また、経営の経験がない人がいきなり中小企業の経営者になるケースでは、その後の経営に不安が残る。

このように、会社を引き継ぐにあたって、後継者選びが難航するケースは多い。経営者がリタイアする場合は、会社を残すかどうか、残す場合は後継者を誰にするか、その後継者への引き継ぎ期間や方法などについて、しっかり準備をしておかなければならない。

(3)相続に関する準備

子どもがいる場合は、相続の準備も忘れてはならない。保有資産の大半が会社の株式という場合は、特に注意が必要だ。

相続では相続税が発生するが、自社株を換金できないために相続税の支払いに窮するケースは少なくない。しかし、相続税の支払いのために株を売ってしまうと、経営の一体性が保てなくなるおそれがある。これについては事前に税理士などに相談した上で、対策を講じておくといいだろう。

経営者のアーリーリタイアとして、M&Aは積極的に検討すべき?

経営者のアーリーリタイアに、M&Aを活用する方法もある。自社の事業の一部あるいは全部を別の会社売却する方法で、自社株式を売却することで手元に資金を残すことができる。実際に中小企業では、M&Aなどを使って他社に事業を承継するケースが増えている。

自社株式の売却によって現金を残すことができるだけでなく、事業の売却後も経営が安定する可能性が高いことがM&Aのメリットだ。買収側は事業に期待して買収をするわけだから、買収後もその事業に資金やリソースを投じてくれる可能性が高い。事業の継続性という観点でも、M&Aにはメリットがあるのだ。

一方で、デメリットもある。M&Aは買収先探しや価格交渉も含めてタフなプロセスであることと、会社が完全に自分の手から離れてしまうことだ。M&Aを選ぶ際は、経営者に覚悟が必要になることを忘れてはならない。

アーリーリタイアのためには、入念な準備が必要

アーリーリタイアという選択は、経営者には魅力的に映るだろう。しかし経営者の場合は、自分のリタイア後の生活だけでなく、残す会社や従業員についても入念に準備をしておかなければならない。親族に承継するのか、従業員に承継するのか、M&Aを行うのか、また相続についてはどうするのか。

不測の事態に備える意味でも、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談して、対策を立てることをおすすめする。

文・THE OWNER編集部

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