財産分与,離婚
(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)
小林 芽未
小林 芽未(こばやし・めみ)
2011年早稲田大学第二文部卒業。2014年日本大学大学院法務研究科卒業。2015年司法試験合格。司法修習終了後,都内の企業法務を扱う法律事務所で勤務弁護士として執務した後,東京神田にてS&M法律事務所を開所。大学時代に学んだ心理学を生かし,依頼者に寄り添いながら男女問題・離婚問題に注力した業務をおこなう。司法試験を目指す前は,不動産業等事業会社にて勤務していた。弁護士、宅地建物取引士、APCカウンセラー認定講座修了。

「コンピ」という言葉をきいたことはあるだろうか。コンピとは、婚姻から生ずる費用、つまり婚姻費用を略したものである。今回はこの婚姻費用をめぐる様々な問題についてみていこう。

婚姻費用とは?

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を営むうえで必要な費用をいう。住居の家賃、食費、洋服代、子どもの教育費、医療費、交際費、ペットの飼育費など、ほとんどの生活費が婚姻費用となる。夫婦が同居している間は、共同生活を送っているために婚姻費用の分担が問題となる場面はあまりないだろう。

婚姻費用の分担が問題となってくるのは、そのほとんどが別居となった場合だ。たとえ夫婦の関係が著しく悪化し、離婚協議中という状況であっても、現実に離婚が成立しておらず法律的に婚姻状態にあるならば、婚姻費用分担義務を免れることはできない。相手から離婚を切り出され、加えて別居を強行されたような場合でも、請求されれば婚姻費用を支払わなければならないのだ。

そして、夫婦の一方が婚姻費用の分担義務を履行しないときは、他の一方は婚姻費用分担請求権を取得することとなる。婚姻費用分担請求権を取得すれば、裁判所に調停や審判を申立てることもでき、裁判所によって認められたならば給料を差し押さえて強制的に支払わせる、すなわち強制執行さえもできてしまうのだ。

配偶者には自分と同レベルの生活を送れるようにする義務がある

民法760条には、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定されている。夫婦が婚姻費用を分担することは法律で定められた義務となっているのだ。これは、夫婦間の扶養義務のあらわれである。

夫婦となったからには、配偶者にも自身の生活と同レベルの生活を送らせなければならない。注意しなくてはいけないのは、必要最低限の生活を送れるようにすればいいのではなく、自身と同レベルの生活を送れるようにしてあげなくてはいけないということだ。とすると、高所得であればあるほど、相手に支払うべき婚姻費用の金額は高額となる。

婚姻費用の分担は、収入が高い方から収入が低いほうへ金銭の流し、夫婦間の経済状況が平等となるように調整する機能を有している。