会計ソフト
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確定申告は帳簿の作成・管理が煩雑になりやすいが、会計ソフトの利便性向上で、会計処理の実務が進めやすくなった。ただ、会計ソフトは、費用計上する際の勘定科目に注意が必要である。ここでは、会計ソフトの勘定科目や、運用上の注意点などについて説明していく。

目次

  1. クラウド型会計ソフトとは?
    1. クラウド型会計ソフトの勘定科目は「通信費」が一般的
  2. インストール型会計ソフトとは?
    1. インストール型会計ソフトの勘定科目は消耗品費または資産計上
  3. 会計ソフト導入後の勘定科目の選び方
    1. 収益
    2. 費用
    3. 資産
    4. 負債
    5. 純資産
  4. 会計ソフト導入時や勘定科目を選ぶ時のポイントと注意点
    1. 勘定科目は自由に決めていい
    2. 選択する勘定科目は統一する
    3. 「雑費」の使い過ぎは良くない
    4. 会計ソフトに入力するときは事前に準備しておく
  5. 会計ソフトの勘定科目はクラウドかインストール化で異なる!

クラウド型会計ソフトとは?

クラウド型会計ソフト型とは、会計ソフトを利用するためのライセンスが付与され、インターネットを通じてWebブラウザ上で使用するタイプの会計ソフトである。ソフトを購入する必要がないため、導入費用は比較的安くできるが、利用するためにはライセンス料を定期的に払い続ける必要がある。

クラウド型会計ソフトは、インターネット環境さえあれば、使用場所はもちろん、パソコンやタブレット端末の種類を選ばないため、リモートワークにも向いている。会計処理に関わるデータは、会計ソフトを提供する事業者側のクラウドサーバーに保管されるため、基本的には自社で保管する必要はない。

ただし、データ消失やハッキングなどのリスクに備えて、データ管理の責任に関して、会計ソフトの利用規約を確認すべきである。

また、インターネットの通信環境が悪い場合や、クラウド型会計ソフトの提供事業者が利用するサーバーがダウンした場合は、利用に支障がでるので注意が必要である。

クラウド型会計ソフトは、定期的にバージョンアップされるため、会計処理に関連する法律の変更があった場合でも、常に最新の状態で利用できる。保守サービスが付帯している場合は、操作説明などのサポートを受けることもできる。

クラウド型会計ソフトの勘定科目は「通信費」が一般的

クラウド型会計ソフトは、最低限の機能のみであれば料金が発生しないものもあり、一定の事業規模の法人で使用する場合や、利用人数が複数人に及ぶ場合、または特定の機能が必要になった際に、上位プランへの変更と共に費用が発生するというモデルが多い。

クラウド型会計ソフトの使用料金が発生すると、費用として会計処理をすることになる。勘定科目の選択には企業の自由度が認められているため、勘定科目は「通信費」「消耗品費」「雑費」などが考えられる。

クラウド型会計ソフトの導入支援を受ける場合には、コンサルティング費用がかかることがあるが、これについては、すべて経費に計上して差し支えない。ソフトの利用料と同じ勘定科目にするか、コンサルティング費用として支払手数料にするのもよいだろう。

インストール型会計ソフトとは?

インストール型の会計ソフトは、パソコンにソフトをインストールすることで利用できる会計ソフトである。

インストール型会計ソフトには二つの種類がある。データを特定のパソコンに保存し、そのパソコンだけで利用できる「スタンドアロン版」と、データをサーバーに保存し、そのサーバーにアクセスできる複数のパソコンで利用する「ネットワーク版」だ。

どちらも、会計処理データの保存は自社で行う。スタンドアロン版は、バックアップファイルが会計ソフトをインストールしたパソコン内に保存されるため、そのパソコンが壊れた場合、過去分も含めて会計データにアクセスできなくなる可能性もある。外部ハードディスクに、バックアップファイルを定期的に保存しておくなどのリスク対策が必要である。

ネットワーク版の場合は、バックアップファイルはサーバー上の特定の場所に保存されることになる。クラウドサーバーや複数のハードディスクに分けてバックアップをとる仕組みにしておけば安心である。また、サーバーへのアクセスを制限していなければ、場所を選ばずに複数人でも利用ができるため、リモートワークも可能となる。

このように、インストール型会計ソフトの機能は、スタンドアロン版よりもネットワーク版の方が優れているが、導入費用も高額になることが多く、管理サーバーの構築や運用にも費用がかかる。

インストール型会計ソフトは、ソフト購入のほか、保守サービスが別途必要なケースもある。機能改善や税制改正などの変更を反映させるためには、新しい会計ソフトを再度購入するか、常に保守サービスを契約しておくなどの対処も必要だ。

インストール型会計ソフトの勘定科目は消耗品費または資産計上

インストール型会計ソフトは、クラウド型会計ソフトのようにライセンスを付与されるのではなく、ソフトウェアを購入することになる。

ポイントは、金額によって費用の処理方法が異なることと、会計と税務で考え方が異なることである。ここでいう金額とは、購入費用だけではなく、導入に当たって必要とされる設定作業や、カスタマイズ等に掛かる費用も合計しなければならない点に注意が必要である。

インストール型会計ソフトウェアの取得原価の、3つのパターンにおける勘定科目について説明する。

(1)取得原価が10万円未満

全額を経費計上することが一般的である。このときの勘定科目は消耗品費とするとよい。10万円未満であれば、会計と税務の扱いは変わらない。

(2)取得原価が10万円以上の場合

会計と税務の扱いが複数あり、3つの選択肢が考えられる。

会計処理税務処理
全額費用消耗品費で全額費用計上一括償却資産として3年にわたり損金処理(税金計算上の経費)
一括償却資産「一括償却資産」として3年にわたり減価償却費を計上一括償却資産として3年にわたり損金処理
ソフトウェア(固定資産)「ソフトウェア」として5年にわたり減価償却費を計上「ソフトウェア」として5年にわたり損金処理

一括償却資産は、税務上特別な扱いができるもので、20万円未満の資産については、3年で均等に損金にできる仕組みである。

例えば、決算日が12月31日である会社が、15万円のパソコンを12月31日に購入した場合、その事業年度に15万円を消耗品費として処理するか、一括償却資産として計上して5万円の減価償却費を計上することになり、いずれの場合も5万円を損金にできる。

全額費用とする場合は、会計と税務で扱いが異なり、税務申告書の作成時に忘れずに調整をしないと、損金を基準以上に計上してしまった場合に、税務調査で指摘されることになる。

固定資産として費用処理する場合は、ソフトウェアは耐用年数の取り決めによって、会計ソフトの場合は5年で償却することになる。ソフトウェアという固定資産に計上して経費計上を繰り延べるので、利益は多くなるが、損金も繰り延べるので税金の前払いになるとも言える。

(3)取得原価が20万円以上の場合

全額費用とするか、固定資産として処理するかの2つの選択肢が考えられる。

会計処理税務処理
全額費用消耗品費で全額費用計上「ソフトウェア」として5年にわたり損金処理
ソフトウェア(固定資産)「ソフトウェア」として5年にわたり減価償却費を計上「ソフトウェア」として5年にわたり損金処理

会計ソフトウェアの取得原価が20万円以上の場合、一括償却資産は選択できず、税務上はソフトウェアとして扱う必要がある。会計上は、会計ソフトの導入費用を一時の費用と考えて、税務申告書作成時において調整をする方法と、資産計上をして会計税務の処理を合わせる方法がある。

会計ソフト導入後の勘定科目の選び方

会計処理には勘定科目を選択する必要があるが、その上位概念として、収益・費用・資産・負債・純資産の5つがある。どんな経営者やビジネスパーソンでも、正しく理解が必要な概念である。

収益

収益とは、会社の資産を増やすものであり、たとえば売上高や、利息収入、雑収入などがある。売上高とは、会社の本業から得られる収益であり、販売した商品や提供したサービスの対価として得られる。雑収入は、本業外の収益であり、例えば不要になった備品を売却した収益や、助成金による収益などが挙げられる。

費用

費用とは、会社の資産を減らすものであり、会社運営に必要な販売費や管理費などが挙げられる。例えば、電話代やインターネット代、切手等は「通信費」、事務用品や名刺、コピー代などは「消耗品費」、国や地方公共団体に払う手数料や税金、警察など公的機関へ納付する違反金などは「租税公課」とするのが一般的である。

資産

資産とは、現預金や、現預金を生むことになるものである。売上の未入金などの債権はいずれ現預金となるだろうし、在庫や固定資産はその販売や使用によって現預金を生むことが期待される。

負債

負債とは、現預金が社外に出ていくことになるものである。仕入やその他経費の未払金、従業員の税金や社会保険料の預り分などが挙げられる。

純資産

資産から負債を引いたものであり、会社設立や増資時の資本金、配当していない過去の利益の蓄積などで構成されている。純資産を直接会計処理することは殆どない。

会計ソフト導入時や勘定科目を選ぶ時のポイントと注意点

勘定科目は自由に決めていい

勘定科目は自社で自由に設定できる。一般的には「通信費」「消耗品費」などがあるが、「電話代」「切手代」「会計関連費用」などでもよい。現実的には、会計処理のしやすさと、経営管理のしやすさで、ある程度集約した勘定科目を用いるのがいいだろう。

選択する勘定科目は統一する

確定申告の際には、一度でも費用計上を行なったものについては、同一の勘定科目を通年使用すべきである。例年と異なる勘定科目を用いると、会計データの比較可能性が失われる恐れがある。

例えば、昨年と比べて消耗品費が増えている原因を調査する場合、会計ソフトの勘定科目ごとの処理を見にいくことになる。このとき、従来は「通信費」としていた費用が、「消耗品費」に変更されていたり、消耗品費に入っているべきパソコン周辺機器の費用が「雑費」になっていたりすると、正確な分析ができなくなる。

「雑費」の使い過ぎは良くない

「雑費」は、他の勘定科目に当てはまらないような、雑多な費用や微細な費用を処理するときに使われる。要素の異なる費用が含まれるため、増減分析ができなかったり、そもそも雑費が分析対象外になることもある。極力費用を正しく定義し、勘定科目のルールを明確にすることが、事業コストの管理に役に立つであろう。

会計ソフトに入力するときは事前に準備しておく

通常の会計ソフトであれば、「勘定科目マスタ」という機能が存在する。実際に会計処理をする前に、自社の勘定科目体系を設計して、正しくマスタを設定しておく必要がある。

マスタを設定していないと、暫定処理をした後の修正が煩わしくなったり、都度マスタ設定をする手間が掛かる恐れがある。また、管理しておきたいコストを後になって思いついて処理し直すことになれば、会計処理の効率が悪くなってしまうだろう。

会計ソフトの勘定科目はクラウドかインストール化で異なる!

会計ソフトを購入した場合の勘定科目は、クラウド型ソフトかインストール型ソフトかによって異なり、インストール型の会計ソフトの場合は、金額によっても勘定科目が異なることをご理解いただけただろうか。

会計ソフトを導入する場合には、勘定科目設定などの利用前の準備、バックアップなどの利用時の注意や、勘定科目の運用などを考慮した上で、有用な会計データを蓄積し、経営管理に役立ててほしい。

文・新井良平(スタートアップ企業経理・内部監査責任者)

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