
シニア関連市場規模はコロナ禍前の水準に迫るまで回復、一方で物価高による影響の懸念からシニア層の消費行動にはシビアな側面も
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のシニア関連12市場65サービスを調査し、2023年のシニア関連マーケットの動向を幅広くまとめた。
1.調査結果概要
少子高齢化が進み、人口構成や世帯構成が変化していく中で、消費購買層としてのシニア層の重要度は年々高まっている。使えるお金や時間に余裕があるとされているシニア層の消費をどのように取り込むかが、今後のマーケティング活動のポイントの一つになるからである。
本調査では、シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業などに焦点をあて、その市場動向を分析し、参入の取り組み等を広く調査した。特に、介護・リハビリや老人ホームなどといった、従来からの高齢者向けマーケットだけでなく、レジャー、スポーツ、趣味といったカテゴリや、流通事業者の動向も捉えている。
コロナ禍で大きく減少したシニア関連市場規模は、2022年から復調基調が鮮明となり、2023年はコロナ禍前に近い水準まで回復したと推計する。2023年には社会経済活動が本格的に回復したことで、多くのシニア関連マーケットがプラス成長となった。2024年については伸び率はやや鈍化するものの、シニア関連市場は引き続き拡大傾向で推移を見込む。
ただし、当然ながら各カテゴリで回復状況には格差があり、急激に進行する物価高の消費行動への影響も懸念される。サービスによっては客数が戻らない中で、商品単価・顧客単価の上昇が先行して市場規模が拡大した市場もある。単価の上昇を消費者がどこまで受け入れられるのか、特に年金生活者には物価上昇の影響は大きく、今後もシニア層の消費動向には注視していく必要がある。
2.注目トピック
シニア関連市場は急回復するも、シニア層の消費行動にはシビアな側面も
シニア関連マーケットのうち、介護・リハビリ市場では、介護報酬改定が大きく影響する。複数回の介護報酬引き上げで、市場規模は再び拡大に向かっている。近年の介護保険は高齢者の自立を支援する在宅介護へとシフトし、中でも訪問介護サービスは大きく伸長した。
しかしながら、介護・リハビリ事業に参入した企業の撤退や廃業、大手企業によるM&Aも続いている。介護・リハビリ市場では深刻な人材不足、大手企業との競合激化、物価高騰等による経営環境の悪化と今後も淘汰、再編が進んでいくと見られる。
コロナ禍で甚大な打撃を受けた旅行市場は急回復しており、2024年もさらに回復が続く見通しとなっている。
娯楽市場は行動制限の撤廃で施設への入場制限も解除され、市場は急速に回復し、娯楽市場全体ではコロナ禍前の水準を上回るまで拡大しているものの、映画やカラオケボックスは苦戦が続いている。
このように、各カテゴリによって格差や課題はあるものの、シニア関連市場全体ではコロナ禍前の水準に迫るまで回復した。ただし、現状、シニア層の多くは全般的に消費にはシビアだ。有価証券などの金融資産は持ち直しているものの、公的年金支給への不安や将来の医療費や介護費用など、今後の生活への不安を感じるからである。
景気の先行きについての不透明感も拭えないという側面もある。また、2021年頃からの物価の上昇が徐々にシニア層の家計を圧迫している。高齢者無職世帯の実収入の9割近くは社会保障給付による収入となっているが、大半の世帯では支出が収入を上回る赤字状態である。それらの世帯では、公的年金の不足分を金融資産の取り崩しなどで賄っている。
そのような状況下での物価高騰の影響は大きく、生活防衛意識が高まり、消費に対してより慎重にならざるを得ないだろう。シニア層が消費をする際には、自分の要求水準を満たすものなのか、自分の価値観に合ったものなのか、シビアな目で商品やサービスを厳選する傾向が今後さらに強まっていくと考える。
調査要綱
1.調査期間: 2025年4月~6月 2.調査対象: シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業など 3.調査方法: 当社専門研究員による文献調査、ならびに直接面談調査併用 |
本調査では、以下のシニア関連12市場65サービスを対象とし、マーケットの動向を調査した。 1.介護・リハビリ市場(訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、施設サービス、介護福祉用品、介護ロボット) 2.住宅市場(有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、シニア向け分譲マンション) 3.宅配市場(在宅配食サービス・宅配弁当、生協個配、ネットスーパー宅配、外食チェーン宅配・ファストフード宅配) 4.各種支援サービス市場(見守りサービス、家事代行サービス、シニア人材派遣・シニア向け起業支援、シニア向け婚活支援・マッチングサービス、終活支援サービス、金融サービス) 5.旅行市場(ツアー、介護旅行・バリアフリー旅行、クルーズツアー、鉄道旅行バスツアー) 6.スポーツ市場(フィットネスクラブ、ゴルフ、登山・アウトドア、ボウリング、卓球ダンス) 7.娯楽市場(音楽、映画、カラオケ、ゲームセンター、テーマパーク・遊園地、温浴施設) 8.趣味・習い事市場(カルチャーセンター、大学公開講座、日本文化教室、アート教室、資格取得教室、パソコンスクール、音楽教室) 9.食品・外食市場(食品、健康食品・サプリメント、介護食・高齢者食、惣菜・弁当、飲食店、コーヒー・カフェ) 10.衣料品・日用品市場(アパレル、化粧品、大人用紙おむつ、毛髪業(かつら・増毛)、杖、眼鏡・コンタクトレンズ、補聴器) 11.家電・情報機器市場(生活家電、音響機器、シニア向け携帯電話・スマートフォン) 12.流通(スーパー、コンビニエンスストア、百貨店、ドラッグストア・薬局、通信販売) |
<市場に含まれる商品・サービス> 同上 |
出典資料について
資料名 | 2025年版 シニア関連市場マーケティング年鑑 |
発刊日 | 2025年06月26日 |
体裁 | A4 548ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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