ボーナス
(画像=takasu/Shutterstock.com)
澤田 朗
澤田 朗(さわだ・あきら)
日本相続士協会理事・相続士・AFP。1971年生まれ、東京都出身。日本相続士協会理事・相続士・AFP。相続対策のための生命保険コンサルティングや相続財産としての土地評価のための現況調査・測量等を通じて、クライアントの遺産分割対策・税対策等のアドバイスを専門家とチームを組んで行う。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

企業の業績や個人の成績によって支給される額が変わるボーナスだが、中小企業と大企業・公務員とでは支給額に差はあるのだろうか。今回は中小企業のボーナスと併せて、大企業・公務員のボーナスがどれくらい支給されているのかをお伝えする。

目次

  1. 中小企業のボーナスの平均は?
  2. 中小企業者の定義
    1. 1.事業所規模5~29人企業のボーナスの平均
    2. 2.従業員規模30~99人企業のボーナスの平均
  3. 大企業のボーナスの平均は?
    1. 1.事業所規模100~499人企業のボーナスの平均
    2. 2.事業所規模500~999人企業のボーナスの平均
    3. 3.事業所規模1,000人企業のボーナスの平均
  4. 公務員のボーナスの平均は?
    1. 1.国家公務員のボーナスの平均
    2. 2.地方公務員のボーナスの平均
  5. 民間企業の賞与は事業規模や業種、業績により大きく差ができる

中小企業のボーナスの平均は?

中小企業の定義や規模によるボーナス支給額(平均)についてみていこう。なお、ボーナスの平均額は中小企業・大企業共に2018年冬季と2019年夏季に労働者1人あたりに支給された額となる。

中小企業者の定義

はじめに中小企業の定義からお伝えする。中小企業庁では下記の通り定義しているが、統計調査結果が下記の従業員数と一致しないため、今回は事業所規模99人までを中小企業、100人以上を大企業としてお伝えすることをご了承いただきたい。

業種分類中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社または
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社または
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社または
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5,000万円以下の会社または
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

1.事業所規模5~29人企業のボーナスの平均

平均額2018年冬季2019年夏季
上位1位55万7,592円(電気・ガス・熱供給等)58万0,231円(電気・ガス・熱供給等)
上位2位52万9,827円(複合サービス事業)49万3,816円(金融業・保険業)
上位3位48万6,307円(金融業・保険業)47万0,693円(複合サービス事業)
下位3位18万7,825円(医療・福祉)16万6,346円(医療・福祉)
下位2位12万9,567円(生活関連サービス業等)14万2,707円(生活関連サービス業等)
下位1位5万2,773円(飲食サービス業等)4万6,281円(飲食サービス業等)
全業種平均26万5,140円26万1,268円

電気・ガス等のインフラ事業、複合サービス業、金融業の支給額が高く、医療・福祉、サービス業の支給額が低いことがわかる。特に飲食サービス業は、全業種平均・上位業種の平均との差が大きくなっている。

2.従業員規模30~99人企業のボーナスの平均

平均額2018年冬季2019年夏季
上位1位69万4,055円(電気・ガス・熱供給等)68万9,654円(電気・ガス・熱供給等)
上位2位61万0,459円(教育・学習支援業)59万9,622円(学術研究等)
上位3位53万9,666円(情報通信業)59万9,177円(建設業)
下位3位26万2,758円(医療・福祉)23万2,331円(医療・福祉)
下位2位12万8,087円(生活関連サービス業等)14万2,707円(その他のサービス業)
下位1位5万5,650円(飲食サービス業等)5万3,825円(飲食サービス業等)
全業種平均34万3,977円33万1,267円

こちらも同様に電気・ガス等のインフラ関連業、複合サービス業、金融業の支給額が高く、医療・福祉、サービスの支給額が低い。飲食業の支給額が著しく低いのも同様で、中小企業全体で見ると同規模の企業であっても業種によって金額に差が出ていることがうかがえる。また、従業員規模が大きいほど支給額が多いことも確認できる。

大企業のボーナスの平均は?

次に大企業のボーナス支給額がどのようになっているかを見ていこう。

1.事業所規模100~499人企業のボーナスの平均

平均額2018年冬季2019年夏季
上位1位96万0,612円(鉱業・採石業等)89万2,231円(鉱業・採石業等)
上位2位77万7,747円(建設業)83万3,344円(建設業)
上位3位76万8,356円(電気・ガス・熱供給等)82万8,010円(電気・ガス・熱供給等)
下位3位18万6,445円(飲食サービス業等)22万3,844円(生活関連サービス業等)
下位2位16万8,075円(生活関連サービス業等)19万6,360円(その他のサービス業)
下位1位15万9,248円(その他のサービス業)13万1,819円(飲食サービス業等)
全業種平均45万1,179円43万1,227円

100人以上の事業規模になると、中小企業との支給額の差は大きい。上位3位までは建設・インフラ関連の業種であり、これらの業種は業績が良かったため支給額が増えていると想像できる。一方、飲食・生活等のサービス業については中小企業と同様に支給額が平均を下回り、業種間の差も広がっていることが見て取れる。

2.事業所規模500~999人企業のボーナスの平均

※鉱業・採石業等の統計無し

平均額2018年冬季2019年夏季
上位1位97万5,562円(建設業)117万0,760円(建設業)
上位2位95万1,778円(金融業・保険業)97万5,762円(学術研究等)
上位3位93万0,915円(学術研究等)86万2,189円(電気・ガス・熱供給等)
下位3位45万4,803円(生活関連サービス業等)43万2,957円(複合サービス事業)
下位2位15万3,851円(飲食サービス業等)17万8,535円(飲食サービス業等)
下位1位12万2,960円(その他のサービス業)12万1,566円(その他のサービス業)
全業種平均57万3,075円54万6,180円

500人以上の事業規模ではこれまで上位だった業種に加えて、金融業・学術研究等の事業の支給額が上位となっている。証券会社・保険会社・銀行等の企業や学術・開発研究機関、広告業の支給額が他の業種よりも高いことが考えられる。

なお、2019年夏季の建設業の支給額が100万円を超える一方で、サービス業については平均額を下回り、この事業規模でも業種間で大きく差が出ている。

3.事業所規模1,000人企業のボーナスの平均

※2018年冬季は不動産業、物品賃貸業、複合サービス事業、鉱業・採石業等、
2019年夏季は複合サービス事業、鉱業・採石業等の統計無し

平均額2018年冬季2019年夏季
上位1位119万3,938円(建設業)116万9,723円(学術研究等)
上位2位118万7,964円(学術研究等)116万1,260円(不動産業・物品賃貸業)
上位3位111万3,733円(電気・ガス・熱供給等)113万0,455円(電気・ガス・熱供給等)
下位3位35万9,803円(飲食サービス業等)26万7,330円(生活関連サービス業等)
下位2位21万8,853円(生活関連サービス業等)10万8,397円(その他のサービス業)
下位1位12万5,009円(その他のサービス業)10万4,766円(飲食サービス業等)
全業種平均75万6,458円75万6,531円

1,000人以上の大企業では冬季・夏季共に上位3業種は支給額が100万円を超えている。また他の事業規模では見られなかった不動産業が上位に来ているのが特徴的である。建設業はこの規模に限らず上位となっているが、支給額は事業規模に比例して多くなっている。電気・ガス事業も大企業の支給額の多さが順位を押し上げていることがうかがえる。

中小企業・大企業全体を見ると、事業規模・業種によって支給額に差が出ていることがわかる。また事業規模に限らず、建設業の支給額の高さとサービス業の支給額の低さが目立つ結果となっている。

公務員のボーナスの平均は?

民間企業のボーナス(賞与)に当たるものとして公務員には「期末手当」「勤勉手当」が支給される。それぞれ毎年6月1日と12月1日を基準日として年2回支払われる。

・期末手当
民間における賞与等の特別給に該当する手当である。基準日の給料・手当合計額に一定の割合を乗じた額に、基準日前一定期間の在職期間の区分に応じて一定の割合を乗じて得た額を支給する。

・勤勉手当
民間における賞与に類似し、勤務成績に対する報償的意図を持つ手当である。基準日の給料・手当合計額に、勤務期間に応じて定められた割合に成績に応じて定められた割合を乗じて得た額を支給する。

1.国家公務員のボーナスの平均

こちらは2019年6月と12月に支給された平均額となる。一般職国家公務員(管理職を除く行政職職員)の平均支給額(成績標準者)は、6月が約67万9,100円(平均給与額の2.195ヵ月分)、12月は約68万7,700円(同2.245ヵ月分)となっている。

なお国家公務員の人事評価は、下記2つの「定期評価」と、条件付の任用を正式なものとするか否かについての判断のために行う「特別評価(能力評価により行う)」によって行われる。いずれの評価も評価期間中の職務行動や業務の達成状況を評価基準に照らして絶対評価で行われ、その評価が勤勉手当に反映されることになる。

・能力評価
職員がその職務を遂行するに当たり、発揮した能力を把握した上で行われる勤務成績の評価

・業績評価
職員がその職務を遂行するに当たり、挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価

ちなみに、主な特別職等の期末手当の支給額は下記の通りとなる。下記のうち内閣総理大臣・国務大臣・最高裁長官・衆参両院議長及び国会議員については、勤勉手当は支給されず期末手当のみ支給される。一般職である事務次官および局長クラスについては、期末手当と勤勉手当が支給される。

なお、勤勉手当は成績標準者として試算している。また、内閣総理大臣は月額給与および期末手当の30%、国務大臣は同20%を国庫に返納する申し合わせがされているため、支給額から自主返納額を控除した額が支給される。

・主な特別職等の期末手当の支給額の試算例(2019年)
※()内は自主返納額を控除した支給額

6月期12月期
内閣総理大臣約569万円
(約398万円)
約586万円
(約410万円)
国務大臣約415万円
(約332万円)
約427万円
(約342万円)
事務次官約323万円約333万円
局長クラス約246万円約253万円
最高裁長官約569万円約586万円
衆・参両院議長約527万円約543万円
国会議員約314万円約324万円

2.地方公務員のボーナスの平均

こちらは2018年度に支給された平均額となる。都道府県・政令指定都市・市区町村別に金額が公表されている。それぞれの平均額等は下記の通りである。

・都道府県(全職種) 職員1人当たり期末・勤勉手当支給額(2018年度)

期末手当勤勉手当
最高平均額105万600円(茨城県)81万8,600円(東京都)
最低平均額89万2,900円(鳥取県)56万7,700円(鳥取県)
47都道府県平均100万1,391円70万7,079円

・指定都市(全職種) 職員1人当たり期末・勤勉手当支給額(2018年度)

期末手当勤勉手当
最高平均額107万5,600円(横浜市)76万4,000円(横浜市)
最低平均額90万8,900円(札幌市)66万2,600円(札幌市)
20指定都市平均99万3,895円71万5,155円

・市区町村(全職種) 職員1人当たり期末・勤勉手当支給額(2018年度)
※北海道島牧村の統計無し

期末手当勤勉手当
最高平均額122万3,800円(兵庫県西宮市)81万1,700円(東京都武蔵野市)
最低平均額39万4,200円(北海道中富良野町)27万9,100円(北海道中富良野町)
1721市区町村平均859,544円606,549円

民間企業の賞与は事業規模や業種、業績により大きく差ができる

民間企業・公務員共に、年間にボーナスが支給されるが、特に民間企業は事業規模やその年の業績等によって企業間の支給額に差が出る。今回ご紹介した数値はあくまでも平均額で自身の支給額とは単純に比較できないため、自身の業績・企業への貢献度等が賞与等に反映されているのかを改めて確認するきっかけにしていただければ幸いである。

文・澤田朗(相続士・フィナンシャルプランナー)