【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは

「NFTとDAOが、地方創生の起爆剤に。」

NFTの技術を活用し、ふるさと納税の新たな形を全国の自治体に提供してきた、株式会社あるやうむ。彼らはこれまでに20を超える自治体で「NFTによる地方創生」を支援してきました。

そして今、新たな挑戦として、国の「地域おこし協力隊」制度とDAOを組み合わせ、持続可能な地域コミュニティの創出を目指しています。

NFTとDAOは、日本の地方が抱える課題をどのように解決するのか。そして、弱冠20代でこのユニークな事業を牽引する畠中博晶氏とは、一体どのような人物なのでしょうか。

今回は株式会社あるやうむの代表取締役である畠中博晶さんをお招きし、その歩みと事業の全貌、そして地方創生が秘める可能性について、詳しく伺いました。

畠中博晶(はたなか ひろあき)氏 株式会社あるやうむ 代表取締役
東京・渋谷での中高生活に疲れ、北大への進学を機に札幌移住を志すも、周囲の猛反対に遭い断念。失意のまま進学した、京都大学総合人間学部在学中の2017年に、仮想通貨の裁定取引を始める。それ以降ずっとブロックチェーン/仮想通貨の世界にのめり込み、裁定取引で稼いだ資金で2020年3月に念願の札幌移住を果たす。2020年11月に、株式会社あるやうむを創業。
小林 憲人(こばやし けんと) 株式会社NFTMedia 代表取締役
2006年より会社経営。エンジェル投資を行いながら新規事業開発を行う株式会社トレジャーコンテンツを創業。2021年にNFT Mediaを新規事業として立ち上げる。「NFTビジネス活用事例100連発」著者。ジュンク堂池袋本店社会・ビジネス書週間ランキング1位獲得。

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目次

  1. NFTで地域をPRする「株式会社あるやうむ」とは
  2. まちづくりへの情熱と札幌移住の夢
  3. Web3業界に踏み込んだきっかけ
  4. 国の制度を活用した「地域おこし協力隊DAO」とは
  5. 地域おこし協力隊の導入事例①北海道の余市町
  6. 次回予告

NFTで地域をPRする「株式会社あるやうむ」とは

【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは
引用:プレスリリース

小林: 早速ですが、畠中さんがどんな方なのか皆さんに知っていただきたいので、自己紹介をお願いできますでしょうか。

畠中氏: はい、私、株式会社あるやうむの代表を務める畠中博晶と申します。業務内容としましては、NFTやDAOといった技術を地方自治体の皆様に提供させていただき、ふるさと納税の寄付を集めたり、地域の関係人口創出やPRに繋げたりといった事業をしています。

小林: 会社の事業の中で、畠中さんご自身の役割はどのようなものでしょうか。

畠中氏: いくつかありますが、メディアに出てお話しさせていただく広報的な役割が一つです。あとは、会社のお金まわりですね。 弊社はスタートアップとして投資家や金融機関の皆様から資金を調達しているので、そういった財務の部分を担当しています。

また、自治体の首長、つまり町長さんに直接お会いして「NFTやDAOを導入すると、こんないいことがありますよ」とお話しするトップ営業も私の重要な役割です。あとは、社員の採用も私が担当していますね。

【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは

小林: 採用・採用設計の部分もご自身でされているのですね。

畠中氏: そうですね。フルコミットのメンバーは私を含めて6人と少数なので、DMなどで「入社したい」と連絡をくださった方とは、分け隔てなく全員と私が直接オンラインでお話しさせていただいています。累計でいうと、100人くらい本体採用の部分を行ってきました。

小林: フルコミット6名で、他に業務委託の方などもいらっしゃるイメージですか。

畠中氏: そうですね。アルバイトの方や、パートナーとして地域に移住し、DAOコミュニティを運営してくださっている「移住DAOマネージャー」の方々もいます。 そうした業務委託の方まで含めると、全体で30人ほどの組織になります。

面白いのが、メンバー全員がフルリモートで働いている点で、コアメンバー6人のうち北海道在住は3人、残りは長野、神奈川、群馬とバラバラです。

これは人間関係でバイアスがかからないようにすることが主な目的です。Discordでは日頃ボイスチャットでやり取りしていますが、札幌にいるメンバーとも、対面で会うのは年に1、2回ぐらいですね。

小林:面白い取り組みですね!事業内容としては、大きく二つに分けられるのでしょうか。

畠中氏: はい。ざっくり言うと二つの事業があります。

一つが「ふるさと納税」の返礼品をNFTで開発する事業、もう一つが「地域おこし協力隊」という国の制度を活用して、地域のためのDAOコミュニティを運営していく事業です。 どちらも国の制度を背景に、私たちのソリューションを組み合わせて事業を作っている形になりますね。

小林:そうすると、両方ともお客様というのは自治体の方になるんですか。

畠中氏:そうですね!自治体の方が国の制度を活用して、移住者を集めたりするって形なので、最終的な決裁権者みたいなものは自治体になります。

まちづくりへの情熱と札幌移住の夢

【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは

小林: こうした事業をされている畠中さんのバックグラウンドが気になります。京都大学を卒業されてから、北海道であるやうむを創業されるまでの経緯を教えてください。

畠中氏: 私は19歳まで東京で過ごしました。中学・高校はトップの少し下くらいの学校にいたのですが、私はドベでギリギリ入ったクチでして。頭の良さや家柄、教養といった面で差があるなと6年間ものすごく思い知らされ、「もうここにいても駄目だな」と感じていました。

それで東京を出ようと思ったとき、高校生の頃から「まちづくり」や都市について考えるのがすごく好きだったんです。 シムシティのようなシミュレーションゲームに熱中していましたね。 その中で、「1m以上の雪が降る、かつ人口100万人以上の都市」という、世界でも札幌しかないユニークな街に強く惹かれていました。

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小林: そうなんですね!その頃からまちづくりに興味があったのですね。

畠中氏: はい。自転車で首都圏のいろんな街を回ったり、「札幌vs福岡」みたいな都市の比較を考えたりするのが好きでした。

ただ、大学進学の際は周囲から「もっと良い大学に行きなよ」と反対され、札幌行きは断念して、しゃあないからと京都大学へ進学しました。 京都には修学旅行であまり良い思い出がなかったので、隣町の滋賀県大津市に住んでいました。人生で滋賀県に住むチャンスはもうないだろうなと思って(笑)。

大学では教育とまちづくりが融合した「教育行政」というニッチな学問を研究していました。 例えば、人口に応じて高校をどう配置すれば最適か、といったことを考える学問です。

小林: まさにリアルシムシティですね。そのときの経験が今に活きている部分はありますか?

畠中氏: それはありますね。私たちが向き合っている「ふるさと納税」や「地域おこし協力隊」は一般行政の分野ですが、根底にある法律の体系は同じです。 法律は憲法を頂点に、法律、政令、省令、告示、通知という入れ子構造になっていて、この構造を理解していると、どこにルールが書かれているか、どう調べれば情報が出てくるかがわかります。 この行政の仕組みに関する知識がなければ、NFTをふるさと納税に活用できるかどうかの判断も難しかったと思います。

Web3業界に踏み込んだきっかけ

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小林: 大学を卒業後、札幌に移住されたのですか?

畠中氏: そうですね。大学院への進学を機に念願の札幌に移住しました。 ただ、好きな学問分野ではあったのですが、大学院での研究には熱が入らず、結局辞めて事業に専念することになりました。

小林: そこから、現在の「地方創生×NFT」という事業に本格的に舵を切られたのですね。

畠中氏: はい。もともと市議会議員になりたくて、そのための資金集めという側面もあって会社を作ったんです。 社名の「あるやうむ」はアラビア語で「今日」という意味なのですが、最初は「お客さんが“この日”に使うグッズを作りたい」という思いでグッズ販売事業を始めました。

でも、その事業はなかなかうまくいかなくて。2020年から2021年はDeFiバブルの黄金期で、正直に言うとグッズ販売よりトレードした方が儲かってしまったんです(笑)。 好きなことではあったのですが、そこまで熱を入れ続けるほどではなかった。 結局、自分のよりディープな得意分野であるまちづくりと、クリプトの領域で勝負せざるを得なくなった、というのが正直なところですね。

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小林: お話の中に「クリプト」という言葉が出てきました。JPYCの岡部さんとも交流があると伺っていますが。

畠中氏: はい。Web3業界に入るきっかけは、JPYCさんのお手伝いを始めたことです。 最初は僕が一方的に岡部さんのことを知っていて、色々ツイートしていたら、当時のCOOだった方から「コミュニティ運営を手伝っていただけませんか」と声をかけていただきました。

正直、トレーダーをやっていたので、この業界がいかに胡散臭いか、実体経済に結びついていないかというのは当事者としてよくわかっていました。 カジノ業界のような世界で時間を過ごすことにかなり悩んだのですが、昔からのクリプト仲間に「今はそうかもしれないけど、あと20年たったらわからなくないですか?」と言われて。 それもそうだなと納得して、この業界に足を踏み入れました。

小林: そもそもクリプトに関わられたのはいつ頃なのですか?

畠中氏: 大学2回生の時ですね。2017年の仮想通貨元年に「教習所代」として親からもらったお金をコインチェックに振り込んだのが始まりです(笑)。

小林: 教習所に行かずに(笑)。そこで得た資金が、今の事業の原資にもなっているのですか?

畠中氏: そうですね。アービトラージで資金を稼ぎ、札幌への移住を実現できました。

今で言えば大した金額ではありませんが、もしあのお金がなかったら、お金を稼ぐために東京に戻らざるを得なかったと思います。 自分の好きな街で事業ができているのも、クリプトのおかげですね。

国の制度を活用した「地域おこし協力隊DAO」とは

【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは

小林: それでは、現在の事業の柱である「地域おこし協力隊DAO」について、具体的にどのような事業なのか教えていただけますか。

畠中氏: 地域のためにオンライン上のDAOを作り、地域の内外の人たちが繋がれるようにするソリューションです。

狙いとしては、地域を応援してくれる「関係人口」を増やしたり、DAO運営者が町で一番先進技術に詳しい人になることで、行政サービスのDXを推進したりすることにあります。 このDAOを運営する人を、「地域おこし協力隊」という国の移住制度を使って地域に派遣する、というのが最大の特徴です。

小林: なぜこの「地域おこし協力隊」の制度とDAOを結びつけようと思ったのでしょうか。

畠中氏: きっかけは、新潟県の山古志地域が成功させている「山古志DAO」の存在です。 私たちのふるさと納税NFTを導入してくださる熱心な自治体職員の方から、「山古志のようなDAOをうちでもやってみたい」という相談をよくいただいていました。

しかし、DAOを機能させるには、山古志の竹内さんのように地域に根ざしてコミュニティを温め続ける存在が不可欠です。 これを民間企業がやろうとすると、その人件費だけでもかなりのコストがかかり、自治体にとってはハードルが高かったのです。

その課題を解決するアイデアとして、2023年の9月末、社内から「地域おこし協力隊の制度を使えば、コストを抑えながら地域のためのDAO運営者を派遣できるのでは?」という声が上がりました。 自治体の予算が固まる10月まで時間がない中で、これまでお付き合いのあった自治体さんに一斉に声をかけ、この構想がスタートしました。

小林: 移住してきた「移住DAOマネージャー」の方は、あるやうむさんからどのようなサポートを受けられるのですか?

畠中氏: 移住者一人ひとりに弊社の担当者がついて、週に1回のミーティングで生活やコミュニティ運営の困りごとをヒアリングします。 また、協力隊員の方が一人では動かしにくいような、私たちの持つ発信力やネットワークといったリソースを提供し、活動を全面的にバックアップしています。

地域おこし協力隊の導入事例①北海道の余市町

【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは
引用:株式会社あるやうむ公式HP

小林: 実際に「地域おこし協力隊DAO」を導入した事例として、北海道の余市町ではどのような活動が行われていますか?

畠中氏: 余市町には、Nounsコミュニティで活躍されているhiroさんという方が移住されました。 彼のDAOでは、地域の外にいるコミュニティメンバーが、それぞれの特技を活かして「デジタル町民講座」のようなものをオンラインで開いてくれています。 AIやAR、NFTの発行など、様々な技術に町民が触れる機会が生まれています。

小林: 面白い取り組みですね。

畠中氏: はい。他にも、月に一度コミュニティで集まってビーチクリーニングを行っています。 この活動をhiroさんがXで発信したところ、なんとNouns DAOのサブDAOから「その活動は素晴らしいから支援したい」と声がかかり、毎月100〜150ドルほどの支援金がDAOに送金されるようになりました。

【前編】あるやうむの畠中氏に聞く!NFTとDAOで実現する地方創生の新たな形とは

小林: それはすごい!外部のリソースが流れ込んできているわけですね。

畠中氏: まさにその通りです。また、隣の小樽市に住むツアーガイドの方が「余市のDAOが面白いから」と、余市専用のガイドツアーを自発的に作ってくれたんです。

通常、自治体がツアーを作るには多額の予算が必要ですが、DAOによってコミュニケーションコストが下がった結果、そうしたものが自然発生的に生まれています。

DAOができてまだ1年少しですが、これだけの成果が出ていることに私たちも驚いています。

次回予告

前編では、畠中氏のユニークな経歴から、国の制度を上手く活用した「地域おこし協力隊DAO」の仕組み、そして北海道余市町での驚くべき成功事例までを伺いました。

後編では、まず地域おこし協力隊DAOの新たな事例を紹介。自治体や地域住民からのリアルな反響にも触れていきます。さらに、株式会社あるやうむのビジネスモデルや、行政を巻き込みながらプロジェクトを推進する秘訣、そして「想定通りに進まなかった点」といった事業の裏側まで、より深く切り込みます。

また、地方創生におけるブロックチェーンの可能性や今後のビジョン、札幌で起業したからこその気づき、そしてこれからWeb3業界を目指す方への貴重なアドバイスも語っていただきますので、どうぞご期待ください。

関連リンクはこちら

・株式会社あるやうむ 公式HP:https://alyawmu.com/
 株式会社あるやうむ  公式X :https://x.com/alyawmu
・畠中氏        公式X :https://x.com/2929ojisan
 地域おこし協力隊DAO概要/申し込み :https://dao.alyawmu.com/