LINEヤフーは、働く全ての人が心身ともに最高のコンディションで仕事に向き合える企業となることを宣言し、健康経営の理念を就業規則にも明記して健康に関わる目標値を定めている。「働くwell-beingの向上」の取り組みについて、グッドコンディションサポート部の加茂隆氏と川村由起子氏に聞いた。(取材・執筆・編集:日本人材ニュース編集部

「働くwell-beingの向上」でパフォーマンス最大化を目指す【LINEヤフー】

LINEヤフー
人事総務統括本部 横断推進本部 グッドコンディションサポート部 部長
加茂 隆氏

「働くwell-beingの向上」でパフォーマンス最大化を目指す【LINEヤフー】

LINEヤフー
グッドコンディションサポート部
川村 由起子氏

事業概要を教えてください

加茂 当社はLINEやヤフーなどのグループ会社による再編によって誕生した日本最大級のテックカンパニーです。

「『WOW』なライフプラットフォームを創り、日常に『!』を届ける。」をミッションに掲げ、検索・ポータルeコマース、メッセンジャー、広告、金融など、インターネットを通じて幅広い領域でサービスを展開しています。

従業員数は約1万1000人以上となっています。

「働くwell-beingの向上」の取り組みを始動した背景について教えてください

加茂 当社は「働く人の心身のコンディションを最高の状態にすることが最大のパフォーマンスにつながり、働く人自身とその家族の幸せにつながる」と考えています。

どれほどテクノロジーが発達したとしても、サービスを生み出す源泉は、“人”です。より良いサービスを提供していくためにも、従業員の良いコンディションが必須であると捉え、「働くwell-beingの向上」の取り組みに着手しました。

「働くwell-beingの向上」でパフォーマンス最大化を目指す【LINEヤフー】
●LINEヤフー「人材戦略全体図」

「グッドコンディションボーナス」について教えてください

加茂 「グッドコンディションボーナス」は、従業員の適性体重保持と身体運動量の増加を目的とした取り組みです。専用のアプリを活用し、日常生活におけるウォーキングの歩数と月1回の体重計測結果を記録してもらい、目標歩数をクリアした回数に応じてインセンティブという形で翌月の給与に上乗せして付与されることになっています。

現在は6割以上の従業員が参加し、毎月の1人当たりの平均給付額は2000円弱程度です。

川村 国が掲げる目標は1日8000歩ですが従業員の平均歩数が低くかったこともあり、当初の目標歩数はうつ病予防効果のある1日4000歩でした。その歩数以上歩いている人はうつ病になる確率が低いとスポーツ庁サイトでも公表されています。

それに、高すぎる目標だとやる気が起きなくなってしまいます。数値データや参加状況を見ながら、4000歩から5000歩へ、そして現在は6000歩へと段階的に上げてきています。

加茂 達成条件のコントロールは難しいものがありますが、ゆくゆくは8000歩にしたいと思っています。

「グッドコンディションボーナス」導入のきっかけを教えてください

加茂 コロナ禍は、当社にとって非常に大きなインパクトがありました。それを機にリモートワークを推進することになったからです。家からあまり出なくなったことで、明らかに従業員の運動量が下がりました。

それに対して非常に危機感を抱き、積極的に歩いてもらうためのイベントとして、2020年10月からスタートさせました。発案者は川村さんです。

川村 実は以前から「ぜひ実施したい」と思っていましたが、コロナ禍で従業員の歩数が確実に減っていたこともあり、そのタイミングでの導入になりました。

「グッドコンディションボーナス」以外で、「働くwell-beingの向上」に関する取り組みを教えてください

加茂 取り組みは、かなり多岐にわたっています。例えば、病気の早期発見・治療のために精密検査の二次検査費用を補助しています。年2万円を上限に身体のウィークポイントになるところを積極的に治しに行ってもらうようにしています。

また、社内レストランで提供する食材にも気を遣っています。脂質を抑えたメニューや野菜を多く摂れるメニュー、減塩メニューを選んでもらえる工夫しています。部のメンバーはアイデアが豊富なので、さまざまな施策を提案してくれます。

さまざまな企画が挙がってくる中、採用する基準を教えてください

加茂 ポイントは主に2つあります。まずは全従業員に共通した課題であること。もう一つは、施策を投下した効果が私たちの最終的な目標であるパフォーマンスの向上に寄与することです。

取り組みを通じて、具体的にどのような成果を目指していますか

加茂 大前提は、従業員が最高のパフォーマンスを発揮してくれることです。一人一人が生き生きとしていて、家族も含めてハッピーな状態で仕事に向き合ってくれることが私たちの大きなテーマです。

ただ、これだけだと測りようがないので、「プレゼンティーイズム」の測定結果を指標として位置づけています。具体的には3カ月に1回のペースでコンディションチェックのアンケートを取り続け、その中の一つとして「プレゼンティーイズム」に関する項目を織り込んでいます。

「ベストなコンディションが100%であるとしたら、今は何%の状態ですか」と聞いています。その数字を自ら上げていけるようにしてもらいたいというのが私たちの願いです。

川村 従業員のヘルスリテラシーを高めていくことで、自ずと「プレゼンティーイズム」も改善されていくと考えています。加えて環境要因も重要になってくるので、そこは会社としてサポートしていきたいです。

取り組みに対して経営層から求められていることや従業員の声などを教えてください

加茂 今年4月から、会社としてはリモートワークだけでなく、リアルでのコミュニケーションも重視しており、ハイブリッドワークを実施していく方向に舵を切り始めています。

今後は昼の食事や夜の懇親の場にもより配慮していかなければいけないと考えています。そういったことに対して経営層は非常に感度が高く、従業員のパフォーマンス向上のために積極的に取り組んでいこうと、かなり予算を割り当ててくれています。

川村 アンケートなどを通じて従業員の声を聞き、その結果を施策に反映するように心がけています。「グッドコンディションボーナス」に関しても、「気づいたら歩数が増えていた」「楽しい」などと前向きなコメントが多数寄せられています。

今後拡充したい内容や展望などを教えてください

加茂 川村さんが展開してくれている「歩くイベント」は、従業員がかなり認知しており参加も多くなっているという手ごたえがあります。さらに第二の柱を作りたいと思っており、私たちが着目しているのは「睡眠」です。

実際、従業員のアンケートを取るとパフォーマンスの阻害要因として運動量の低下に次いで上がってくるのが睡眠だったりします。良い睡眠は、次の日の活動に対してポジティブな影響をもたらすので、そこに対して何かできないかと1年ほど前から取り組みを進めているところです。

まずは、睡眠に興味を持ってもらい、自身の状態を知ってもらう。そして正しい対処方法を理解する。そのレベルまで私たちが伴走していけたらと思い描いています。

人事全体の課題や今後目指していることがあれば教えてください

加茂 テクノロジーを駆使して、従業員の困り事や悩み事に即時に対応できる窓口を作りたいです。特にAIでの回答には可能性を感じています。もちろん、プライバシーに配慮した上で展開しなければいけません。そういった技術とともに、私たちもレベルアップしていきたいと思っています。
(2025年4月9日インタビュー)

LINEヤフー株式会社

代表者:代表取締役会長 川邊 健太郎
    代表取締役社長 CEO 出澤 剛
設立:1996年1月31日
資本金:2494億8300万円(2024年12月末時点)
本社:東京都千代田区紀尾井町1-3 東京ガーデンテラス紀尾井町 紀尾井タワー

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