
2023年度の国内パン市場規模は2019年度の水準を超え、再成長の局面に
~価格や利便性・簡便性を志向する、食卓パンや菓子パン、惣菜パンなどの需要に応える多様な商品展開が市場成長の鍵に~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のパン市場を調査し、パン商品別や小売チャネル別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
国内パン市場規模推移・予測

1.市場概況
本調査では、食パンや食卓パン、菓子パン、惣菜パン、デニッシュ、フランスパン、調理パンの7種のパンを対象として市場規模を算出している。2023年度の国内パン市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比104.8%の1兆6,629億円であった。
パン市場は新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少で、一時的な市場縮小が見られたものの、回復基調の局面にあり、パン需要は再成長している。
商品別に市場をみると外出機会の増加により、手軽に購入・喫食可能な菓子パンや惣菜パンの需要が活性化している。また、継続する物価上昇を背景に、価格に敏感な消費者層ではコストパフォーマンス重視の傾向が強まっており、袋入りでお得感のある食卓パンが支持されている。
一方で、コロナ禍の在宅時間の増加や高級食パンブームによって一時的に拡大した食パン市場は、高級食パンブームの終焉に伴い成長が鈍化した。
小売チャネル別にみると、社会活動の正常化に伴う人流の回復を背景に、外食チェーン等の飲食店向けのパン需要が持ち直しており、訪日外国人客数や旅行消費額などインバウンド需要の回復もあって、ホテル向け需要も堅調に推移している。これらは、コロナ禍を経た後のパン消費の構造変化を示しており、今後のパン業界においても、「価格志向」と「利便性・簡便性」を軸に、消費者ニーズへの対応力が市場成長の鍵を握ると考えられる。
2.注目トピック
おにぎりの値上げとコメ不足で注目集める惣菜パン
カレーパンや焼きそばパン、ツナマヨパンなど多様な商品が展開されている惣菜パンは、ボリューム感や食欲をそそる見た目が特徴である。具材を挟んだり、包んだりした個包装の携帯タイプが常温販売され、市場競争は激しい。
ベーカリー(パン製造小売事業者)では、ホールセールメーカー(工場で製造工程の大部分を機械化して大量生産を可能とする製パンメーカー)の惣菜パンとの差別化を図り、焼きたて感や少量多品種への対応力で惣菜パンを強化している。ベーカリー店舗では具材に工夫を凝らし、フレッシュ感のある商品づくりが図られている。
2024年以降、コメの供給不足や価格高騰を受けて、コンビニエンスストアや量販店で販売されるおにぎりの価格値上げが相次いでいる。これを受けて、おにぎりの代替需要獲得を目指し、惣菜パンを強化するベーカリーやホールセールメーカーが見られる。
3.将来展望
少子高齢化が進行する日本では、パン市場は今後も引き続き低成長を予測する。また、新興国での需要拡大や世界的な天候不順の影響により、小麦粉や油脂類などの原材料は供給不足や価格高騰が懸念される。
一方で、高品質かつ高単価な付加価値商品の投入や、ヒット商品の登場、さらにフランスパンやバラエティブレッドといった食パンや食卓パンなど食事用途のパン需要拡大等、市場成長を後押しする要因も複数存在する。
こうした要素を勘案し、国内パン市場規模は今後も微増傾向で推移する見通しである。2028年度の国内パン市場規模は、2023年度比113.7%の1兆8,903億円になると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2025年1月~3月 2.調査対象: パン・調理パンの製造メーカー・卸事業者、主要リテールベーカリー(パン製造小売事業者)等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話等によるヒアリング、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用 |
<パン市場とは> 本調査におけるパン市場は、以下の小売チャネルで販売される7種のパン、及びそれらのパンの製造過程で利用される冷凍パン生地を対象とし、メーカー出荷金額ベースで算出した。市場規模は7種のパンの合算値となり、冷凍パン生地は内数となる。 ・ベーカリー・・・店舗内でパンを焼成し販売している小売店、小売チェーンの店舗を指す。食品スーパーなど量販店に出店し、同一店舗内で焼成したパンを販売するインストアベーカリーを含む。 ・コンビニエンスストア ・量販店・・・総合スーパー、食品スーパー、生活協同組合、ディスカウントストアを含み、製パンメーカー各社のパンを仕入れて販売している店舗を指す。 ・ドラッグストア・・・主に医薬品、トイレタリー用品、化粧品を、併せて食品、雑貨品等を販売する店舗を指す。 ・一般店・・・製パンメーカー各社のパンを仕入れて販売している小売店(特約店)を指す ・学給パン・・・学校給食用のパンを指す。 ・その他のチャネルには、カフェ、レストラン・ホテル・結婚式場・外食チェーン等の飲食店や宿泊施設、事業所や病院等の給食、インターネット通販等を含む。 |
<市場に含まれる商品・サービス> ①食パン[形状は角食と山食(レギュラーサイズ、小型サイズ)/ホワイトブレッド、レーズンブレッド、くるみブレッド、胚芽ブレッド等] ②食卓パン(バターロール、レーズンロール、胚芽ロール、ハンバーガーバンズ等)③菓子パン(あんぱん等の包餡もの、メロンパン、ピーナッツクリームサンド等)④惣菜パン(カレーパン、ウインナーロール、コーンパン等) ⑤デニッシュ(デニッシュペストリー生地を使用/クロワッサン、チョコデニッシュ、アップルパイ等) ⑥フランスパン(バゲット、バタール、ブール、ベーコンエピ等)⑦調理パン(焼成後の食パンやロールパンに食材をサンドしたもの(チルド、常温)/三角サンド、ボックスサンド、焼きそばロール、ハンバーガー等) ※冷凍パン生地[業務用(内部消化用途、ベーカリーやホテル用途)/生地玉、成型後冷凍、ホイロ後冷凍、半焼成冷凍等] |
出典資料について
資料名 | 2025年版 パン市場の展望と戦略 |
発刊日 | 2025年03月26日 |
体裁 | A4 482ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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