【著者が語る】基礎から学ぶ 人事制度の現状分析

アルチザンアンドカンパニー
喜島 忠典 組織・人材コンサルタント

【PROFILE】大手コンサルティングファーム、商社の事業企画等を経て現職。組織と人材の戦略実行力強化をテーマに、数多くのプロジェクトに従事している。主に組織・人材戦略やタレントマネジメント戦略の構築、組織・人材力を強化するための各種施策のデザイン~実行、人事制度改革等まで幅広く手掛けている。寄稿・セミナー多数。主な著書に『現場リーダーのための「部下が育つ組織をつくる技術」』(労務行政)がある。

「人事制度はどの本で勉強すると良いですか」と“人事制度初心者”の方から質問されることがよくあります。そんなとき何を紹介するかはとても悩ましいテーマです。もちろん人事制度に関する良書は数多くあるので、その方のニーズに合うであろう本を何冊か紹介はするのですが、いつも私を悩ませる二つのモヤモヤがありました。

モヤモヤの一つ目は、人事制度を設計する人向けの解説書が多く、初学者向きの人事制度の見方や考え方を俯瞰的に解説したものが少ないことです。

私が20年以上若手のコンサルタントに人事制度設計を指導してきた経験を踏まえると、効率的な学習には遠回りのようでもまず「事業における人事制度の意味」「人事制度の有機的な繋がり」「個々の制度の目的(=経営的な意味合い)」を押さえることが重要だと考えています。それが人事初心者でも読めるようライトに解説されている本が欲しいと思っていました。

モヤモヤの二つ目は〇〇主義、〇〇型といったように、まるで究極の答えのように「この考え方がベスト」と喧伝する書籍が多いことでした。

しかしこれだけ多様化する環境においては「会社の事業戦略にとってベストフィットならどんな制度でもOK」というくらいの柔軟性が必要だと考えます。そうしないと人事制度に対する捉え方も硬直的になり、実際に人事制度を設計する段になっても「セオリーどおりだが、成果に結びつかない/運用ができない」制度設計をしてしまいがちです。

残念ながら本書で上記の全てが解消できたとはとても言いきれません。紙幅の制約もある中、見開きで各テーマを解説するスタイルはなかなかのチャレンジでした。

ただ人事制度をこれから勉強したいという方を対象に基礎的な内容を厳選して取り上げ、できるだけ人事制度の全体像を理解できるように工夫しています。

もちろん人事制度を設計するにはもう一段高いレベルの視座・技術が必要なのですが、まずは本書が人事制度を見る際の注目ポイントや論点を理解し、その良し悪しを議論する基礎力を身に付ける一助になるなら幸いです。

【著者が語る】基礎から学ぶ 人事制度の現状分析
喜島忠典 著
労務行政
3,500円+税

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