矢野経済研究所
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2035年の世界新車販売台数に占めるBEV比率を25.3%と予測(Aggressive予測)

~足元ではHEV・PHEVを含めた電動化とCN燃料の活用が進展する見込みも、2030年代にはBEV導入目標・排ガス規制の厳格化を予測~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、脱炭素化の影響を受ける世界の自動車産業を調査し、主要市場の概況、主要参入メーカーの脱炭素化戦略を明らかにした。
ここでは、2035年までの世界新車販売台数におけるBEV(電気自動車)、FFV(Flexible-Fuel Vehicle:フレックス燃料車)の構成比率予測について、公表する。

世界新車販売台数におけるBEV比率予測

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世界新車販売台数におけるFFV比率予測

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1.市場概況

 コロナ禍において世界各国は経済の立て直しと温暖化対策を絡めた「グリーン・リカバリー」政策によって脱炭素化を強力に推進してきたが、エネルギー価格の高騰などからの物価上昇を経た今、状況は一変している。2023年のCOP28では、先進国が目指した石炭火力の「段階的廃止(phase out)」は「段階的削減(phase down)」に後退し、長期の化石燃料需要予測を上方修正し、大規模な投資を継続する方向へ舵を切る燃料メーカーも出てくるなど、脱炭素化への道筋には不透明感が漂う。
自動車業界においては、これまで目標を掲げてBEV推進を図ってきたが、BEV需要の低迷によりOEM(自動車メーカー)各社は電動化戦略の修正を迫られている。また、環境負荷の高いリチウムイオン電池(LiB)製造・リサイクルや電源構成に占める再生可能エネルギー率の低迷を背景に、「BEVは本当に脱炭素に資するか」というジレンマも生まれている。

2.注目トピック

2023年におけるBEV比率、FFV比率

 国際自動車工業連合会(OICA)によると2023年の世界新車販売台数は9,272万台、BEV比率は11.9%(1,101万台)、FFV比率は2.5%(231万台)と推計した。

 脱炭素化に向けて変革を迫られる自動車産業は、これまでBEV推進を図ってきた。BEVの最大市場である中国は世界販売台数の約6割を占め、圧倒的なコスト競争力を持つ中国製のBEVは欧州や新興国の市場に流入を開始している。但し、中国市場においてもBEVを優遇した補助金制度が終了して以降、PHEVの需要が高まっている。
一方、欧米市場においては、経済性や実用面での課題が浮き彫りになったことでBEVの成長は減速し、消費者の関心がHEV(ハイブリッド車)へと移りつつある。米国では2023年にHEVのシェアがBEVを逆転、ドイツでは購入補助金の打ち切りがきっかけとなりBEV販売が減速するなど、各地域で潮流の変化がみられる。
こうした動きを受けて、MercedesとVolvoは2030年までのBEV化100%目標を撤回しており、またトヨタやGM、Fordなどの日米メーカーもBEV戦略を修正し、HEV・PHEV(プラグインハイブリッド車)を含めた電動化を推進して収益性の向上を図っている。
足元ではBEV一辺倒から、HEV・PHEVを含めた電動化が進展しており、当面、OEM各社はBEVと比較して利益率の高いPHEVの開発・販売を推進する見通しである。

 もう1つの脱炭素手段としてのCN(カーボンニュートラル)燃料は、長期的な視点では合成燃料が有望視されるが、短期的にはバイオ燃料が現実的であり、フランスや米国のカリフォルニア州ではガソリン価格の高騰などを背景にE85(エタノール85%にガソリンを混合した燃料)需要が増加している。また、農業資源が豊富な新興国では、貿易赤字の改善やエネルギー安全保障の観点からバイオ燃料、FFV(E0からE85まで対応可能な自動車)が有望視されている。

3.将来展望

 自動車産業は脱炭素化に向けて変革を迫られており、そうした状況を考慮した中で、2035年までのBEV比率、FFV比率を予測する。

 BEVに関して、欧米では政府が掲げる過大なBEV導入目標や厳格な排ガス規制に対する批判により、目標・基準の緩和が相次いでいる。そのため、2027年のBEV比率はAggressive予測でも17.9%にとどまると予測する。
一方、中長期的にみると様々な課題は残るものの、2030年代にはBEV導入目標や排ガス規制の厳格化が予定されており、電動化の潮流は不可逆であると考えられる。Aggressive予測でのBEV比率は2030年に20.6%、2035年には25.3%まで拡大すると予測する。

 FFVに関しては、新興国を中心とした電動FFV(フレックス燃料ハイブリッド車)の導入拡大やWell-to-Wheelベースの排ガス規制導入などにより、Aggressive予測でのFFV比率は2027年に4.3%、2035年には6.2%になると予測する。
一方、Conservative予測では、急速なBEV導入拡大や、周辺環境への影響による第1世代バイオ燃料に対する規制強化、ドロップインCN燃料(既存車両で使用可能なカーボンニュートラル燃料)の導入拡大などによりFFVの新車販売が伸び悩み、FFV比率は2027年に3.0%、2035年でも3.8%にとどまると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2024年7月~10月
2.調査対象: 自動車メーカー、自動車部品サプライヤー、エネルギー企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話取材、ならびに文献調査併用
<BEV比率およびFFV比率予測について>
本調査では、脱炭素化に向けて変革を迫られる自動車産業(自動車メーカー、自動車部品サプライヤー)やエネルギー企業の動向を調査した。

本調査におけるBEV比率およびFFV比率は、乗用車および商用車(バス、トラック等を含む)の世界新車販売台数(2022~2023年は国際自動車工業連合会公表値から引用、2024年以降は当社推計値)を分母として、BEVおよびFFVの世界新車販売台数(当社推計値)を分子として、算出した。
なお、BEVにはPHEV、HEVなどを含まず、FFVは「E0(ガソリン)からE85(エタノール85%にガソリンを混合した燃料)まで対応可能な自動車」とし、コンバージョンFFV(ガソリン車をFFVに改造した車両)は含まない。

BEVのAggressive予測は、各地域のBEV導入目標・排ガス規制の厳格化、その実現可能性を加味したケースを想定している。
BEVのConservative予測は、気候変動対策の推進力低下、BEV導入目標・排ガス規制の大幅な緩和、e-feulをはじめとしたCN(カーボンニュートラル)燃料の導入拡大などのケースを想定している。

また、FFVのAggressive予測では、新興国を中心とした電動FFV(フレックス燃料ハイブリッド車)の導入拡大、主要地域におけるWell-to-Wheelベースの排ガス規制導入などのケースを想定している。
FFVのConservative予測は、急速なBEV導入拡大や、周辺環境への影響による第1世代バイオ燃料に対する規制強化、ドロップインCN燃料(既存車両で使用可能なカーボンニュートラル燃料)の導入拡大などのケースを想定している。
<市場に含まれる商品・サービス>
BEV(電気自動車)、コネクタ式EV充電インフラ、リサイクルバッテリー、FFV(フレックス燃料車)、電動FFV(フレックス燃料ハイブリッド車)、合成燃料、バイオ燃料、e-fuel

出典資料について

資料名2024年版 脱炭素化が変える自動車産業
発刊日2024年10月31日
体裁A4 257ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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