矢野経済研究所
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2019年度のものづくり向け非破壊検査機器世界市場は前年度比104.1%の6,411億円の見込、そのうち日本市場は637億円を見込む

〜ものづくり向け非破壊検査機器は製品検査から品質管理へ、付加価値を生む全体最適にステップアップの見通し〜

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、2019年度のものづくり向け非破壊検査機器世界市場を調査し、産業分野別動向、検査種類別動向、将来展望を明らかにした。

ものづくり向け非破壊検査機器市場推移・予測(世界・日本市場)

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1.市場概況

2019年度のものづくり向け非破壊検査機器世界市場(メーカー出荷金額ベース)を、前年度比104.1%の6,411億円と見込む。これを検査種類別に見ると、放射線透過検査(RT)装置が2,814億円(構成比43.9%)と一番大きく、これに次ぐのが超音波探傷検査(UT)装置で1,385億円(同21.6%)と、RTと比較し構成比率で20ポイント以上の差が有る。以降は磁粉探傷検査(MT)装置が628億円、浸透探傷検査(PT)装置が449億円、渦流探傷検査(ET)装置が391億円とそれぞれ6~10%の構成比となっている。

ものづくり向けの非破壊検査機器において重要なことは、組み込まれている製造ラインにおける全体設計を妨げないことである。スピードや品質だけでなく、大きさや放射線等厳しい管理基準等の問題を全てクリアすることで、はじめて非破壊検査機器が採用される。
また、製品メーカーの設備のほとんどはあくまで製造するための設備であるため、検査機構は後回しになりがちな傾向にある。そうした状況下において、さらにタクトタイム(製品一つを製造する時間)の重要性がある。製造において生産工程の均一なタイミングでの進捗は必要不可欠な観点であり、検査機器が大量生産の支障となってはいけない。

非破壊検査機器メーカーにとって、機器導入につながるポジティブな要素として、以下の事柄が挙げられる。
① 技術進歩によるもの
・新規ソフトウェア・システムの開発により、従来では出来ないことが出来るようになること
・今まで(スピードが)遅い/(精度が)粗い/(機能に対し)高価過ぎるものが、速い/細かい/安価といった現場ニーズに応えられるようになること
・コンピュータの処理スピード向上による現場運用スピードへの対応
・材料や構造等の工夫による画像解像度向上
・機器普及による材料や部品のボリュームディスカウントが進む(一部他用途含む)
・低価格化による費用対効果の向上
② 組織/現場の認識の変化によるもの
・用途の変化や顧客が求める品質レベル厳格化
・コンプライアンス遵守による検査記録の信頼性向上
・人件費ではなく固定費(機器)へのリソースシフト
・人手不足による機械化
・働き方改革による機械化
③ 規制によるもの
・社会問題等の影響による導入

2.注目トピック

AIやIoT活用が市場活性化のカギ、高まる全数検査ニーズ

最近は、コンピュータによる検査判定補助が行われており、AIを活用する動きもそこかしこで見られている。AIに判定させるためには、基本的に画像データでの検査結果の取得が前提であり、それを活用したものとして今後進んでいくと見られる。非破壊検査の原理別にみると、RTではAIによる判定が難しいため、未だ進みそうにないという状況である。それだけX線画像の判断は人間にとっても難しいということになる。MTやPT、ETは画像データでのデータ管理が難しいためAI判定の対象にない状況にあるとされる。

なお、非破壊検査は破壊検査と比較して、製品としての価値が損なわれているか否かが異なる。いわゆる検査というものは、ものづくりにおいては様々なタイミングで発生しており、原材料の受け入れ時や製造工程と製造工程の間、顧客への出荷直前等に品質を担保するために実施されている。製品検査は全数検査だけでなく、ロット単位での検査や、時間経過タイミングでの検査、完全なランダムタイミングによる抜き取り検査等が存在しており、製品や品質基準に応じて設定されている。
但し、非破壊検査はどれだけ性能が優れていても不良品を良品に変えることはできない。そのため、検査による不良品を見つけたタイミングから、前工程にアクションして良品の割合を可能な限り増加させることがひとつの目標となる。検査については、抜き取り検査も一定数あるが、全体の傾向としては全数検査へのニーズが高まっていることが検査トレンドとして挙げられている。

検査基準・標準化については、基準の有無があるが、一概に基準があれば良いということではない。多くの非破壊検査の原理は過去より継続して使用されているものに限っており、新規の方法はほぼ無く、基準や標準が作成されたタイミングから一定期間が経過していることが多い。しかしながら、検査対象であるものの中に新規の材料も出てきている中で、検査基準が変わらないことは、ときには過剰品質になることもしばしばあるとされている。もちろん、新規材料含め発展途上であったり、品質にばらつきが発生している状況もあるが、少なからず検査の必要性がない状況にも関わらず、(特にインフラ系では)検査をしなければいけない状況も発生している模様である。
この状況の打開のためには、基準/標準の更新/緩和が想定されるが、変わりつつある状況の中で絶対安全な検査基準を緩和させることは非常に難しく、その後の開発や市場の状況によっては再度早急に基準/標準の更新が必要となるケースも想定される。そのため、業界団体含め丁度良いタイミングを見つけ、そのタイミングで十分な議論のもとに基準/標準を最新のものに更新することが望ましいとされている。

3.将来展望

2026年度のものづくり向け非破壊検査機器世界市場規模(メーカー出荷金額べース)を7,919億円と予測する。産業別では自動車分野が高シェアをキープし、検査種類別ではRT装置が継続して最も採用される見通しである。
今後は、製造業における機械化のトレンドやIoT、AI等ものづくりにおける新技術の利活用が進むこととなる。その際、ものづくり向け非破壊検査機器は単純な良/不良の判断だけでなく、品質管理においても重要な役割を担う可能性を持っている。また、ユーザーフレンドリーな機器開発も焦点とされており、単純な性能だけでなく使い勝手の向上についても大きく改善・改良が進む見込みである。