矢野経済研究所
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米中貿易摩擦や世界的なコロナ禍による景気後退の影響によって、需要変動も激しさを増す特殊紙市場

~在庫調整も終息の兆しで半導体需要の復調に期待、2024年度の産業機能紙市場は前年度比103.7%の12万830tの見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の特殊紙市場を調査し、各品種別の市場動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、産業・工業用途の特殊紙である産業機能紙市場について公表する。

産業機能紙の市場規模推移・予測

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1.市場概況

 特殊紙はその付加価値性によって固定ユーザー向けに安定した需要があり、用途も情報媒体用途から包装用途、生活機能紙、産業・工業用途と幅広く、需要の変動に対してもその用途の広さからある程度変動への対応が可能な底堅い市場であった。
 しかし、紙パルプ業界の需要構造が大きく変動する中で、特殊紙市場においても、情報媒体用途の特殊紙についてはデジタル化の影響や企業におけるコスト削減のターゲットとなり、大幅に減少している。
 また、産業・工業用途である産業機能紙についても、国内産業の海外移転による空洞化や進出先・輸出先での海外メーカーとの競争などの市場環境の厳しさが増した中で、米中貿易摩擦や世界的な新型コロナウイルス感染症による景気後退の影響によって、需要変動も激しさを増している。

 2023年度の産業機能紙市場規模(国内メーカー出荷数量ベース)は、前年度比94.5%の11万6,500tと推計した。デジタル機器等の巣ごもり需要が一巡する中で、2022年秋口から半導体・電子部品の需要が急激に失速し、半導体不足の対応策として機器メーカー各社が部品在庫を積み増ししていたこともあり、在庫調整が長期化した。そのため、産業機能紙の需要は終始低調に推移した。また、物価高を背景とした個人消費の低迷や企業のコスト削減意識の高まりも、産業機能紙の需要に大きな影響を与える結果となった。

2.注目トピック

今後は環境・エネルギー関連における特殊紙需要の拡大に期待

 今後、伸長が期待できる特殊紙の需要分野の1つとしては、環境エネルギー分野、特に再生可能エネルギー関連が挙げられる。
 脱炭素社会に向け、世界各国のエネルギー政策が石油・石炭一辺倒から脱却し、一部を再生可能エネルギー(太陽光や風力発電など)にシフトさせることによるバランスの取れたエネルギーミックスを目指す方向にある。
 そのような状況において、中長期的には、太陽光発電設備、風力発電設備の設置増加によるバッテリーセパレータ需要の拡大で特殊紙の需要が期待できる。バッテリーセパレータについては、グローバル規模でのエアコンや白物家電の省エネ化需要の取り込みも期待できる。

 一方、日本国内においては、ロシアによるウクライナ侵攻を契機に世界規模でエネルギー危機が深刻化する中で、政府が原子力政策の方向性を大きく転換したことで原子力発電所の新設計画が再開された。これにより変圧器の新規需要が創出されており、変圧器向けの絶縁材料であるプレスボードの需要が急速に拡大している。
 日本政府は今後も原子力発電所の再稼働を進めることで、エネルギーの安定供給や火力発電に偏らないエネルギーミックス、カーボンニュートラルの実現を目指す方針を打ち出していることから、プレスボードの国内需要は今後数年は拡大していく見込みである。

3.将来展望

 産業機能紙の主要な需要分野である半導体・電子部品は、ここ数年非常に需要の上下動が激しかったものの、各半導体メーカーは大規模な増産計画を進めていることから、潜在需要は高水準にある。半導体・電子部品市場は、生成AI関連投資等による通信設備関連の需要拡大、自動化・省力化や環境対策を目的とした設備投資等の活性化、カーエレクトロニクス関連の技術進展などによって、回復推移が見込まれている。
 2024年度に入り、長期化した半導体・電子部品の在庫調整も終息の兆しが見られることから、2024年度の産業機能紙市場規模は前年度比103.7%の12万830t、2025年度は同101.7%の12万2,860tと今後再び拡大局面に入るものと予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2024年5月~8月
2.調査対象: 特殊紙メーカー、総合製紙メーカー、紙代理店・商社及びその他関連企業
3.調査方法: 当社専門研究員による面接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、郵送アンケート調査、ならびに文献調査併用
<特殊紙市場とは>
特殊紙の定義は必ずしも明確なものがあるわけではなく、一般紙に相対するものというより、その付加価値性、市場価値から特殊紙を捉えている。
本調査における特殊紙市場とは、情報用紙や衛生用紙、偽造防止用紙、低発塵・無塵紙、耐油紙、滅菌紙、色上質紙、ファンシーペーパー、色クラフト・ケント紙、インディアペーパー、合成紙、ステンレス合紙、電気絶縁紙、コンデンサペーパー・フィルム、ガラスペーパー、キャリアテープ原紙、フィルター濾紙、ラベル用粘着紙、剥離紙、カップ原紙他約30品種の特殊紙を対象とした。

<産業機能紙市場とは>
本調査における産業機能紙市場とは、産業・工業用途の特殊紙である、低発塵・無塵紙、合成紙、ステンレス合紙、電気絶縁紙(コイル絶縁紙・プレスボード・バルカナイズドファイバー)、コンデンサーペーパー・フィルム、ガラスペーパー、キャリアテープ原紙を対象として、国内メーカー出荷数量ベースで算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
情報用紙や衛生用紙、偽造防止用紙、低発塵・無塵紙、耐油紙、滅菌紙、色上質紙、ファンシーペーパー、色クラフト・ケント紙、インディアペーパー、合成紙、ステンレス合紙、電気絶縁紙、コンデンサペーパー・フィルム、ガラスペーパー、キャリアテープ原紙、フィルター濾紙、ラベル用粘着紙、剥離紙、カップ原紙他

出典資料について

資料名2024年版 特殊紙市場の展望と戦略
発刊日2024年08月28日
体裁A4 486ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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