荷主企業での物流統括管理者の選任により、物流事業者単体では取り組むことができなかった様々な施策が実施され、物流の効率化が進む見通し
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、荷主企業において設置が義務付けられる物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)について、欧米諸国との違いや先行事例を調査し、物流業界の現状や業界を取り巻く市場環境、物流効率化を支える物流テックについてとりまとめた。
1.調査結果概要
社会インフラである物流の持続的成長に向けて、2024年5月に「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和6年法律第23号)が公布された。同時に、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」という名称は「物資の流通の効率化に関する法律」に変更された。
「物資の流通の効率化に関する法律」では、一定規模以上の事業者(荷主企業や物流事業者)を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付けるほか、特定事業者のうち荷主企業には物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任を義務付けることが定められた。これにより、特定事業者に該当する荷主企業では、これまで以上に自社製品の物流を主体的に考え、コントロールすることが求められている。
物流統括管理者が設置されることで、物流事業者単体では取り組むことができなかった様々な施策が実施され、物流の効率化が進むことが期待される。物流統括管理者においては、自社(荷主企業)の持続可能な物流を構築すべく、物流事業者と対話をしながら、自社と物流事業者の双方にメリットがある取り組みを進めることが重要である。
2.注目トピック
日本と米国における物流統括管理者(CLO)の違い
日本と米国において、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)を設置する背景には違いがある。
米国では、自社の商品やサービスの価値向上あるいは企業の競争力強化のための方策として、サプライチェーンの強化を掲げている企業が多々みられる。具体的には、多様で安定したサプライヤーの確保、CO2排出量の削減、中国をはじめとした対外政策などであるが、これらを確実に実行するために、CLOやCSCO(Chief Supply Chain Officer)が重要な役割を担っているのである。
一方、日本においては、社会インフラである物流の持続的な成長を目的として、物流の効率化と商慣行の見直しが求められている。具体的には、荷待ち・荷役等時間の削減や積載率の向上などが挙げられており、これらを確実に実行するために、特定事業者の荷主企業において物流統括管理者の設置が義務付けられることとなった。
米国企業が置かれている状況と日本企業が置かれている状況は異なり、また国土の広さや商習慣などの違いから物流ニーズも異なる。
仮に、米国企業におけるCLOやCSCOの役割を参考にするならば、物流統括管理者は自社製品の価値を高めるためのサプライチェーン戦略の一環として設置することが望ましい。そして、物流の効率化やサプライチェーンの見直しを進めるにあたり、自社の事業戦略とサプライチェーンを合致させることが不可欠であり、それは日本企業の物流統括管理者の重要な職務の一つになると考える。
調査要綱
1.調査期間: 2024年7月~9月 2.調査対象: 国内の物流に関わる有力事業者 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<市場に含まれる商品・サービス> 物流統括管理者(CLO) |
出典資料について
資料名 | 国内外の事例研究からみるCLO(物流統括責任者)戦略 |
発刊日 | 2024年09月30日 |
体裁 | A4 178ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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