緩衝材や樹脂ケースなど、モノを運ぶための多様な部材を生産 ICT本格活用で業務効率化と環境配慮に取り組む エムアイピー(群馬県)

目次

  1. 法人化を機に会社を継ぐ決意 現場の仕事から管理まで覚えて事業を承継 弟も入社しリフォーム事業に参入
  2. 2024年1月に本社工場を新設 品質と価格のバランスに強み 事業の8割が物流資材製造 100種を超える製造品目は日々変化
  3. 最適な加工方法を探求 品質・価格の両面で競争力を維持 物流資材を柱に事業拡大し将来はグループ化も
  4. 地球環境に影響ある多様な物流資材を扱うため、環境配慮を強く意識し企業の社会的責任根付く 業務プロセスを見直し、生産性改善と環境負荷低減に恒常的に取り組む
  5. ブログ作成ツールでSDGsをアピールし採用面接も 社内ネットワーク刷新し、UTM導入でセキュリティ対策も万全 図面管理も導入を検討
中小企業応援サイト 編集部
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緩衝材やプラスチック製梱包ケースは物流や保管に欠かせない重要な部材だが、半面、大量の廃棄物になりやすい。株式会社エムアイピーは常に製造工程の見直しや省エネ対策、環境保全に配慮しつつ、製造工程や業務の見直しに取り組む。2024年1月に本社工場を新設、ICTの本格活用で生産性改善と業務効率を加速させる意気込みだ。(TOP写真:顧客企業のニーズに応え、100種を超える多様な物流資材を製造している)

法人化を機に会社を継ぐ決意 現場の仕事から管理まで覚えて事業を承継 弟も入社しリフォーム事業に参入

緩衝材や樹脂ケースなど、モノを運ぶための多様な部材を生産 ICT本格活用で業務効率化と環境配慮に取り組む エムアイピー(群馬県)
松原智之社長は先代から「好きなようにやればいい」と言われ、時間を忘れて仕事に没頭した

エムアイピーの前身は、松原智之代表取締役社長の父親が1985年に創業した松原製作所だ。当初はエアコン内部の加工処理などを行っていたが、取引先からの勧めで包装材の製造に乗り出した。2004年に法人化し、「有限会社エムアイピー」に社名を変更。緩衝材や包装材、各種梱包ケースの製造事業に本格的参入した。

最初はアルバイトで家業を手伝っていた松原社長はモノづくりの仕事が面白くなり、法人化した時に「会社を継ぎたい」と思った。父親に気持ちを告げると「好きなようにやればいいから」と言われた。それからは現場の仕事から管理部門まで時間を忘れて仕事を覚えた。その後、建築事業に従事していた弟が入社、現在は副社長としてリフォーム事業部門を担当している。

商号が「株式会社エムアイピー」に変わった2020年、社長に就任した。社長になったからには「仕事を増やして売上高を伸ばしていきたい」という意欲は強かったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、スタートから事業環境は厳しかった。

しかし、梱包資材の多様なニーズに応じて製造品目は増えて、製造設備も増設、取扱材料も多様化してきた。主要な製造品目は、ビニールや紙などの各種緩衝材やプラスチックコンテナ、ダンプラケース(プラスチック製段ボール箱)、化成製品、樹脂パレット、発泡スチロール、段ボールなど。

さまざまな製造設備と加工技術で多様なニーズに応える梱包資材を作り出している。素材をそのまま熱で溶かして成型してコーナー8ヶ所を同時に溶着する熱溶着方式は、コスト削減と資源利用率の効果が高く一般的な加工方法だ。収納する製品の形状に合わせてサイズやケース内の凹凸も変形でき、プラスチック板による仕切りなど梱包製品に合わせた加工の自由度が高い。

2024年1月に本社工場を新設 品質と価格のバランスに強み 事業の8割が物流資材製造 100種を超える製造品目は日々変化

緩衝材や樹脂ケースなど、モノを運ぶための多様な部材を生産 ICT本格活用で業務効率化と環境配慮に取り組む エムアイピー(群馬県)
2024年1月に建て替えた本社

老朽化し手狭になってきた本社工場を2024年1月に建て替えた。真新しい新工場には、プレス加工機やバーチカルカット機、断裁機、ピンポイント熱溶着機、コーナー溶着機、超音波ウェルダー、スピードカッターなどの加工設備がゆとりのあるスペースに効率的に配置されて、素材が次々と加工される。

同社の事業内容は、7~8割を占める主力の物流資材事業と、2~3割の住宅・オフィスなど内装仕上げを中心としたリフォーム事業だ。

物流資材は車両用や電機関連部品用が中心で、顧客企業は関東全域に広がっている。常時100種以上製造しているが、「要望に応じて新しい仕様の資材を製造するなど毎日のように品目が変化する」(松原社長)ため、品目数は日替わりだという。松原社長が「うちの強みは品質と価格のバランスだ」と話すように、大量発注が当たり前の梱包資材は一定以上の品質が要求される一方、価格競争力が大きな武器となる。

ICTや業務管理を担当する松原来輝希(らいき)課長は、競争力のあるバランスについて、「安全で高品質な資材を低コストで製造するためには、生産性を向上し続けなければならない。機械の操作方法も常により良い方法を工夫し、材料に適した加工方法も常に考えている」と説明する。来輝希課長は2018年に入社。副社長の長男で、松原社長のおいに当たる。「子どもの時から仕事を見ていて、図画工作に近いモノづくりの仕事が好きになった」(来輝希課長)と話すように、現場の仕事にも汗を流す。松原社長の期待値も高い。

最適な加工方法を探求 品質・価格の両面で競争力を維持 物流資材を柱に事業拡大し将来はグループ化も

緩衝材や樹脂ケースなど、モノを運ぶための多様な部材を生産 ICT本格活用で業務効率化と環境配慮に取り組む エムアイピー(群馬県)
よりよい加工方法を日々、工夫しながら生産性を向上している

日々、きめ細かく設備機器と向き合い最適な加工方法を探求する姿勢が、県内に大手を含めて約10社ある競合メーカーに対して品質・価格の両面で競争力を維持し続けている秘訣といえそうだ。

「ゆくゆくは県内最大手とも戦えるくらいの力をつけたい。そのために、常に新しいことを考えていく」(松原社長)。新たな挑戦を担うのが来輝希課長だ。「物流資材を柱にしながらいろいろな事業を展開してグループ化していきたい」と将来構想を温める。リフォーム事業は物流資材の素材加工技術を生かして内装仕上げに生かすシナジー効果も出ている。

地球環境に影響ある多様な物流資材を扱うため、環境配慮を強く意識し企業の社会的責任根付く 業務プロセスを見直し、生産性改善と環境負荷低減に恒常的に取り組む

緩衝材や樹脂ケースなど、モノを運ぶための多様な部材を生産 ICT本格活用で業務効率化と環境配慮に取り組む エムアイピー(群馬県)
100種類を超える多様な物流資材を製造。環境配慮を強く意識している

同社が製造する多種多様な物流資材はビニールやプラスチックなど地球環境に大きくかかわる素材を使っているだけに、松原社長は環境配慮を強く意識し、SDGsにも積極的に取り組んできた。「培った技術力やノウハウを生かしたモノづくりで、SDGsに積極的に取り組むことで企業価値向上や持続可能な社会構築に貢献できる上、事業機会の創出・拡大や人材確保、取引先拡大にもつながると確信している」からだ。

梱包材製造で排出されるプラスチック端材は契約業者を通じてほぼ100%リサイクルされている。松原課長は「材料の歩留まりを向上させる工夫や努力は10年前から継続的に取り組んでいて、それにともない材料在庫は10年間で3分の1に減少した。在庫管理システムをうまく活用することで在庫減少によるコスト削減と環境負荷軽減につながっている」と成果を説明する。

同社の経営理念は「お客さまと時代のニーズに応え 新たな価値を創造し お客さまと時代と供に成長する」である。製品やサービスの品質・安全性の確保など事業の根幹には企業の社会的責任(CSR)が強く根付いている。業務プロセスを見直し、生産性改善と環境負荷低減に恒常的に取り組むのもその一環で、具体的には社内ICTインフラの強化を進める一方、ノウハウのデジタル化も視野に入れている。

ブログ作成ツールでSDGsをアピールし採用面接も 社内ネットワーク刷新し、UTM導入でセキュリティ対策も万全 図面管理も導入を検討

緩衝材や樹脂ケースなど、モノを運ぶための多様な部材を生産 ICT本格活用で業務効率化と環境配慮に取り組む エムアイピー(群馬県)
ICT導入は社長の甥の松原来輝希課長が担当している(写真奥)

これらの取り組みを外部にアピールすることも重要なテーマだ。来輝希課長は2022年からホームページ作成ツールを活用して、SDGsの取り組みを詳しく紹介したり、画面に動きをつけるなど、若い感性でホームページをリニューアル。「SDGsをわかりやすくアピールできたことで若い人の反応が良く信用度が高まった。採用面接につながるケースも多い」と効果を実感している。

本社社屋の新築を機に、業務用パソコンなどを置き換えて社内ネットワークを刷新したほか、会議用に大型の高機能電子黒板も設置。コンピューターウイルスやハッキングなど様々なサイバー攻撃を包括的に防ぐUTM(統合脅威管理)システムも導入した。

UTMはウイルス対策やファイアウォール、不正侵入検知・防御機能など様々なセキュリティ機能を備えており、コスト低減と管理者の負担軽減が可能。エムアイピーでも社内ネットワークの効率的な一括管理を実現した。今後は、日々増え続ける物流資材の設計図面を効率的に保存・再利用できる図面管理システムの導入も検討しているという。

企業概要

会社名株式会社エムアイピー
住所群馬県みどり市笠懸町久宮286-1
HPhttps://kk-mip.jp/
電話0277-46-9555
設立2004年11月(創業1985年9月)
従業員数25人
事業内容物流資材の加工・販売、内装仕上工事一式