目次
- ZEH基準(等級6)+パッシブ設計の高性能木造住宅を提供し、顧客との末永いつながりを大事にしている
- 「DXには少し前のめりくらいがちょうどよい」 従業員が楽しく機動性を持って働くことができる環境をデジタル技術で生み出す
- 組織のDXを進める上でトップの姿勢は何より重要
- リノベーションに活用する3Dモデルの自動作成ソフトを導入 スマートフォンを使って簡単に計測や図面作成ができる
- 自動作成ソフトは3D-CADシステムとの連携が可能 劇的な業務効率化が期待できる
- クラウド型施工管理システムを活用して、現場から直接クラウドへ写真などの情報共有を強化
- クラウド型の業務支援システムを使って社内業務に役立つ複数のソフトを作成 スマートフォンを使っていつでもどこでも日報の作成や資材在庫の確認ができるようになった
- デジタル技術の導入で壁にぶつかった時は、外部の人材を活用する
- 柔軟な発想でデジタル技術を活用し、「建て主と完成後のイメージを共有しながらの住まいづくり」を目指していく
地球温暖化の影響で、年々気候変動に翻弄され、住宅に高性能を求められる時代。1965年設立のハゼモト建設株式会社は、福岡県北九州市の地域密着型工務店として、他社に先駆けて2030年基準の高性能木造住宅を提供し、その実績が評価され数々の賞に輝いている。更に購入後のアフターフォロー充実もハゼモト建設の真摯な姿勢を示している。
デジタル化についても、櫨本健一代表取締役自らがDXの旗振り役となって、社内業務のデジタル化と顧客とのコミュニケーションに力を入れ、限られた人材を有効活用し、一人ひとりが楽しく効率的に働くことができる環境を作り上げている。(TOP写真:ハゼモト建設のホームページより)
ハゼモト建設の障がい者支援や地域コミュニティへの取り組みについては、ハゼモト建設-2を参照ください。
ZEH基準(等級6)+パッシブ設計の高性能木造住宅を提供し、顧客との末永いつながりを大事にしている
「住宅は完成した時がゴールではなく、むしろそこからがスタートと思っています。末永いお付き合いの中で、お客様が幸せで快適に暮らせるように寄り添ってサポートするため、地元最優先の事業展開を貫いています」。北九州市小倉北区内の幹線道路沿いに立地するハゼモト建設株式会社の本社。櫨本健一代表取締役は、事業に取り組む思いを歯切れよく語った。
ハゼモト建設の木造住宅は、高気密、高断熱、省エネ、創エネの機能に優れたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準の要件を2030年基準(等級6)に対応している。また、高気密・高断熱だけでなく、自然光の取り入れ、風通しを確保するなど自然の力を活かすパッシブ設計でデザインしている。
顧客に住宅を引き渡した後も定期的な無料点検に応じ、修理やメンテナンスを通じて住宅の長寿命化を実現している。「日々の暮らしに必要なランニングコスト、修理などにかかるメンテナンスコスト、健康を維持するためのメディカルコストを抑え、長く暮らすほどトータルで高いコストパフォーマンスを発揮する住宅をこれからも提供し続けていきます」と櫨本社長は話した。
「DXには少し前のめりくらいがちょうどよい」 従業員が楽しく機動性を持って働くことができる環境をデジタル技術で生み出す
櫨本社長は大学で建築を学び、ゼネコンでの勤務を経て父親が経営するハゼモト建設に入社し、父親の急逝を受けて1999年、34歳の時に社長に就任した。就任以来、環境への関心が高まることを見据えて、高品質の木造建築物への事業シフトを四半世紀にわたって進めてきた。近年、住宅だけでなく、クリニックやオフィスを木造でリノベーションする工事の依頼が増加するなど、木造建築物に対するニーズの高まりに大きな手応えを感じているという。
櫨本社長は、ビジネスモデル強化と人手不足をはじめとする課題に対応する手段として、ICTやデジタル機器の活用に力を入れている。「従業員が楽しく機動性を持って働くことができる環境を作る上でICTやデジタル機器は大きな効果を発揮してくれています。建設業界に限らず、日本の産業界は慢性的な人手不足に見舞われています。少子化の流れは止まらず今後、更に働き手が減少していくことは避けられないでしょう。この現状を乗り切るには、デジタル技術を通じて人材を有効活用する以外に道はないと思っています。建設業界のDXは待ったなしの状況です。挑戦したことのすべてが実を結ぶわけではありませんが、そのことを気にしていては何もできません。DXには少し前のめりに取り組むのがちょうどいいように思います」と櫨本社長。
組織のDXを進める上でトップの姿勢は何より重要
導入するICTやデジタル機器を選定する際は、従業員にとっての使いやすさを重視している。使いやすいかどうかを判断するために、櫨本社長は、実際に自分自身で使って機能を把握することを心掛けているという。「自分自身が使い勝手の良し悪しも含めて理解した上でないと、社内にデジタル技術を浸透させるのは難しいと思っています。デジタル技術に苦手意識を持っている人に使ってもらえるようにするには、自らを助けるツールであることを実感してもらうのが一番です。組織のDXを進める上でトップの姿勢は何より重要です」(櫨本社長)
リノベーションに活用する3Dモデルの自動作成ソフトを導入 スマートフォンを使って簡単に計測や図面作成ができる
自ら機能を確かめて活用を進めている技術の一つが、高精度の測定と3Dマッピング機能を備えた、スマートフォンなどの端末に組み込む間取り図や3Dモデルの自動作成ソフトだ。2024年1月に導入し、住宅やオフィスのリノベーションを行う際の現況調査に役立てている。
この自動作成ソフトは、部屋の内部の壁、床、天井、家具などに端末を向けてスキャンするだけで瞬時に対象を3Dデータ化する機能を備えている。3Dデータを基にした図面の作成や修正、補足も直感的に行うことができる。正確なデータを基にした設計や提案が可能になるので、顧客からの要望にも柔軟に対応できる。紙図面をスキャンしてそこから3Dモデルを作成することも可能だ。
「まるで紙に手描きしているような感覚で修正や描き加えをすることが可能です。以前は複数人で行っていた寸法測定器を使った計測、図面の作成、3Dモデルの作成といった1日以上かかる作業を、1人で、しかも短時間で済ませることが可能になりました」と櫨本社長は満足そうに話した。
自動作成ソフトは3D-CADシステムとの連携が可能 劇的な業務効率化が期待できる
自動作成ソフトは、20年以上前から導入している3D-CADシステムとクラウドストレージを通じて連携しているので、自動作成ソフトで作成したデータは、プレゼンテーション用パースの作成や積算、見積といった様々な業務にも役立てることができる。「3Dモデルのデータはクラウドストレージを使えば、簡単に共有することができますし、離れた場所にいる人ともスムーズにコミュニケーションを取ることができます。自動作成ソフトの活用の場を広げることで劇的な業務効率化が期待できそうです」と櫨本社長はうれしそうに話した。
クラウド型施工管理システムを活用して、現場から直接クラウドへ写真などの情報共有を強化
2024年から建設業界向けのクラウド型施工管理システムも導入している。以前は手頃なコミュニケーションソフトを活用して現場写真や図面などの情報共有を行っていたが、容量などの面で課題があり、大量の情報をよりスムーズに共有するため本格的なシステムを導入することにしたという。
この施工管理システムは、写真、図面、書類などの膨大な情報を現場ごとのフォルダで簡単に管理できる機能のほか、工程表作成、掲示板、チャット、工程チェック、報告書作成、施主との情報共有といった様々な機能を備えている。システムの導入前、現場の写真は本社に備えているサーバーで保存していたため、施工担当者は本社でなければ写真の保存作業ができなかった。現在は、スマートフォンで撮影した写真を現場からクラウドストレージに直接保存できるようになったので、時間をより効率的に活用できるようになったという。
クラウド型の業務支援システムを使って社内業務に役立つ複数のソフトを作成 スマートフォンを使っていつでもどこでも日報の作成や資材在庫の確認ができるようになった
プログラムの専門的な知識がなくても自社の業務内容に合わせたソフトをノーコードで作成できるクラウド型の業務支援システムも活用している。これまでに日報の作成、FAX文書のデジタル管理、資材の在庫管理で活用するソフトを自社で作成した。
日報は、以前は手書きで作成し、承認も印鑑で行っていたため、毎日、時間と手間を取られていたという。ソフトが完成したことによって従業員は、日報を作成する際、スマートフォンから本社の基幹システムにアクセスしてテンプレートに従って入力し、電子承認を待つだけで済むようになった。細かく日本語を記述する必要がなくなったので外国人従業員(インドネシア人1人、ベトナム人3人)からは特に喜ばれているという。
「従業員が日報作成のためだけにわざわざ会社に立ち寄ることもなくなり、承認待ちで待機していた時間も有効活用できるようになりました。日報作成に使う時間と手間は、感覚的に10分の1程度になったように思います」と櫨本社長。
複合機に届いたFAX文書の内容をスマートフォンから確認できるようにしたことで、顧客や取引先からの問い合わせにより迅速に対応できるようになった。また、以前は書類で管理していた在庫状況をデジタルで可視化できるようにしたことで適切なタイミングで発注ができるようになり、機会損失と無駄を減らすことにつながっているという。
デジタル技術の導入で壁にぶつかった時は、外部の人材を活用する
日報作成ソフトに蓄積されるデータは、クラウド型の原価管理システムに反映するようにしている。それまでの紙の資料からシステムに入力する作業が必要なくなり、経営状況をリアルタイムで把握する上でも役立っているという。
ソフトと原価管理システムのデータ連携を実現するにあたり、ハゼモト建設は公益財団法人北九州産業学術推進機構が運営する北九州市ロボット・DX推進センターから派遣された専門家のサポートを受けた。「デジタル技術の導入で壁にぶつかった時は、外部の専門機関や専門家に相談するようにしています。外部の人材を積極的に活用することで、自社のデジタル対応力不足を補うようにしています」と櫨本社長は話した。
柔軟な発想でデジタル技術を活用し、「建て主と完成後のイメージを共有しながらの住まいづくり」を目指していく
櫨本社長は、コンピューター上で設計段階の情報をもとに建物を3Dモデルとして再現し、一連の建築業務を効率化するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)にも関心を持っている。BIM対応型の3D-CADを活用することで建築物の設計と施工の統合を強化し、より正確で効率的な作業の実現を図りたいという。
BIMは、設計当初から設計者と施工者と施主が完成形を見ながら打ち合わせが可能になる。しかも建築基準法に適合しているかどうか、費用はどのくらいになるかも自動的に算出される。このことによって施主が最初から生活における使い勝手や空間の広がり、こだわりの反映を確認でき、予算的に可能かどうかもわかる。今までの手さぐり的なやり取りと比べると劇的な変化だ。
「未来を見据えた最先端の機能を備えた住宅を常にお客様に提供していけるように、DXを通じて社内の体制を強化していきたい。ICTやデジタル技術に苦手意識を持っている従業員でも戸惑わずに使いこなすことができる、アナログ力に優れたICTやデジタル機器をこれからも活用していきます」と櫨本社長は力強く話した。
現場での実用性を重んじながら柔軟な発想で、ICTやデジタル機器を活用して業務効率化とスピードアップにつなげているハゼモト建設。顧客にとっても、リフォームにおける現地撮影からのCAD自動作成や新築建築時のBIMによって、建て主が早い段階から新たな住まいをイメージできることでお互いの感動も生まれる。ハゼモト建設は、これからも様々なデジタル技術を活用することで地域を支える高付加価値型のビジネスモデルを進化させていくに違いない。
企業概要
会社名 | ハゼモト建設株式会社 |
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本社 | 福岡県北九州市小倉北区片野4-12-10 |
HP | https://hazemoto-k.co.jp |
電話 | 093-931-0521 |
設立 | 1965年12月 |
従業員数 | 22人 |
事業内容 | 木造住宅事業、木造非住宅事業、子ども食堂運営、ベーカリーショップ運営、就労支援事業 |