目次
- 新生児・子ども向け衣料を中心に海外工場で大量生産する体制を構築 従業員の7割が女性
- リーズナブルな価格・品質・デザイン性を兼ね備えた商品を、短い納期で大量生産、納入するため生産体制を常に改善
- チャイナリスク回避にミャンマー、バングラデシュなどアジア全域に生産拠点を確保、中国工場は3年前には半数を占めていたが現在は25%に縮小
- デザイン部門の平均年齢は20代前半 若い人材の採用と育成に力を入れる
- 大容量のデータ保存や情報共有に役立つ企業向けのクラウド型ファイル共有サービスを活用
- 複数のメンバーが、離れた場所で仕事をする時も画面共有で作業が可能 業務効率が飛躍的に向上した
- 国内の営業所や海外の工場との打ち合わせに複数のWeb会議システムを活用
- アパレル業界のICT活用の新しい可能性を探る
日本で企画・デザインした衣料品を海外の工場で生産し、国内の取引先に一括納入している兵庫県姫路市のアパレルメーカー、株式会社ステップワンが、クラウドサービスを活用して膨大なデザインのデータ管理と共有を円滑にすることで業務効率化につなげている。生産拠点のグローバル展開とICT活用を両輪に、競争が激しいアパレル業界で持続的に成長する体制を整えている。(TOP写真:新生児向けの衣料をデザインするステップワンのデザイン部門の従業員)
新生児・子ども向け衣料を中心に海外工場で大量生産する体制を構築 従業員の7割が女性
縫製会社を前身とするステップワンは、兵庫県姫路市に拠点を置くアパレルメーカーだ。新生児・子ども向け用品を扱う大企業数社を主な取引先に、海外工場で大量生産し、各取引先に一括納入する体制を構築している。同市内の自然豊かな郊外に3階建ての本社を構え、1階では従業員だけでなく近隣の住民も活用できるスポーツジムを運営している。従業員の7割を女性が占め、営業企画、デザインなどの部署で活躍している。
衣料の企画・デザインは本社で、生産は99%を海外で行っている。衣料は取引先が希望するアイテム、ロット数、納期、コストに応じて生産し、ネット販売専用の商品や多品種少ロットの依頼にも対応している。
リーズナブルな価格・品質・デザイン性を兼ね備えた商品を、短い納期で大量生産、納入するため生産体制を常に改善
約30年にわたる中国などでの海外事業の実績を備え、現在の月間生産枚数は260万枚にのぼる。生産工程での検査は外部の検査機関に依頼し、製品ごとに厳しい基準を設定している。インナーが生産アイテムの90%を占め、そのうち70%を新生児・子ども向けが占めている。インナー以外ではパジャマ、Tシャツ、ルームウェアなども生産している。
取引先のアパレルを扱う大手企業は、消費者の好みやニーズをリアルタイムで把握し、タイムリーに商品を調達するために積極的にICTを活用している。
「リーズナブルな価格・品質・デザイン性を兼ね備えた商品を、短い納期で大量に生産して確実にお届けするために、生産体制や業務プロセスを常に改善しています。取引先の効率化したビジネスモデルに対応していく上で、デジタル技術の活用とグローバル戦略の推進は避けて通れないと考えています」。ステップワンの藤原龍司営業企画本部長は、競争が激しいアパレル業界で着実に業績を拡大していくために必要な取り組みについてこのように説明した。
チャイナリスク回避にミャンマー、バングラデシュなどアジア全域に生産拠点を確保、中国工場は3年前には半数を占めていたが現在は25%に縮小
世界の政治や経済の情勢を分析しながら、常に先手を打って対応している。海外での生産は2021年頃までは中国の工場が半分程度を占めていたが、現在は約25%に縮小しているという。中国での人件費の上昇、紡績産業の衰退、米国との対立激化といった様々なリスクの高まりを想定し、2018年頃から生産を分散する取り組みを進め、ミャンマー、バングラデシュなどのアジア全域に生産拠点を確保してきた。
「生産拠点の分散と資材の調達先の多様化は、チャイナリスクの回避とコスト低減を図る上で大きな効果を生み出しています。多拠点生産体制を通じてリードタイムや輸送時間の短縮につなげていきたいと考えています」と藤原本部長は話した。
デザイン部門の平均年齢は20代前半 若い人材の採用と育成に力を入れる
ステップワンでは、デザイン部門と営業企画本部などの従業員が連携して、取引先からの要望に沿った上でトレンドや消費者のニーズを反映した商品を開発している。デザイン部門の従業員は本社全体の3分の1を占める。若い人材の採用と育成に力を入れていることもあって同部門の平均年齢は20代前半と若く、デザイン制作に取り組むオフィスは活気に包まれている。
大容量のデータ保存や情報共有に役立つ企業向けのクラウド型ファイル共有サービスを活用
ステップワンは、グローバル戦略の推進とともに、生産性向上や販路拡大を図るため様々なデジタル技術を活用している。2018年から導入したのが、大容量のデータ保存や情報共有に役立つ企業向けのクラウド型ファイル共有サービスだ。
動物、乗り物、マークなどをあしらって制作する新生児向けインナーなどのデザインは、色違いも含めると毎月260種類近くになる。「デザインの画像データは容量が大きくすべて保存しているので、クラウド型ファイル共有サービスを活用するまでは、毎年のように社内サーバーの増設に追われていました。データを呼び出す時も今と比べると時間と手間がかかっていました」と営業企画の山根舞子さんは振り返った。
複数のメンバーが、離れた場所で仕事をする時も画面共有で作業が可能 業務効率が飛躍的に向上した
ステップワンが導入したクラウド型ファイル共有サービスは、ポータルサイト上で画像や文書を管理し、情報共有や共同作業を行うことができる。ストレージ容量はサービスを利用するためのライセンス1件ごとに1TB(テラバイト)以上あり、ライセンスの取得件数を増やすことで使用できる人数や端末を増やすことができる。2024年3月にはライセンス数を3倍に拡大し、これまで以上に大量のデータを部署の垣根を越えて保存、共有できるようにした。また同サービスは、複数の従業員がデータを共有することで発生しがちな、誰かが誤ってデータを上書きしてしまった時も、変更履歴を追跡することで変更前の状態に復元できる機能も備えている。
「外部で打ち合わせをする時も通信環境が整っていればパソコンから必要なデータをすぐに呼び出すことができるので、データをUSBメモリなどに移して持ち運びする必要がなくなりました。打ち合わせをしながらその場でデザインの修正もできるので本当に便利です。複数のメンバーが、互いに離れた場所で仕事をしなければならない時も画面を共有して、会社にいる時と同じように作業ができるので業務効率は飛躍的に向上しました」と山根さんはうれしそうに話した。
国内の営業所や海外の工場との打ち合わせに複数のWeb会議システムを活用
東京都墨田区、大阪府大阪市に設けている国内の営業所や取引先、海外の工場との打ち合わせには複数のWeb会議システムを活用している。本社と海外の工場とのデータの送受信はそれぞれの国で普及している身近なコミュニケーションアプリを使っている。現在は様々な情報共有システムを使い分けているが、将来は、クラウド型ファイル共有サービスと連動する形で国内外のシステムを統一していきたいという。
アパレル業界のICT活用の新しい可能性を探る
企業概要
会社名 | 株式会社ステップワン |
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本社 | 兵庫県姫路市夢前町菅生澗803 |
HP | https://step-1.info/recruit/ |
電話 | 079-335-2864 |
設立 | 1990年10月 |
従業員数 | 32人 |
事業内容 | キッズ・レディース・メンズインナー、新生児インナー・アウター、パジャマ、リラクシングウェアなど各種繊維製品の企画、製造および販売 |