〈5年以上の長期肥育牛、ステーキハウスなどへ提案〉
食肉卸の(株)マルヨシ商事(千葉県浦安市、平井良承代表取締役)と(株)牛長(大阪市住之江区、荒山義雄代表取締役社長)は7月から、スペイン・ガリシア州産「ルビア・ガジェガ牛」(経産牛)の販売を開始した。月間200頭しかと畜されない希少な畜種で、5年以上の長期肥育とドライエイジングにより、独特の香りと深く濃厚なうま味を感じることができる“いままでの牛肉の常識を覆す”おいしさが特長。「世界一おいしいステーキ」ベスト10を決めるドキュメンタリー映画「ステーキ・レボリューション」(2014年製作)のなかで、「世界一のおいしさ」と評価された。長年の和牛の取扱いで培ってきた目利きを誇る両社が自信を持って、各地のステーキハウスなどに紹介していく。
2023年7月のスペイン産牛肉の月齢制限の撤廃を受けて輸入が可能となった。ルビア・ガジェガ牛はスペイン北西部のガリシア州固有の品種。「ルビア」は金髪を意味し、ブロンド色の被毛が特徴。生体は州内の牧草地で最低5年以上、長いものでは15年も放牧され(一部穀物飼料も給餌)、出荷時の生体重量は平均700kgになるという。
パッカーのノバフリグサ社(ガリシア州ルーゴ)では、施設内の熟成庫で骨付きの状態で40日から60日ほど長期ドライエイジングを施してから製品を出荷している。肥育年数が長いうえに、手間のかかる熟成をかけているため、ルビア・ガジェガ牛の生産量は月間200頭と非常に限定される。そのほとんどをスペイン国内や欧州域内で消費されるなか、日本向けに13頭分を確保できることになった。
日本で販売するのは、熟成期間約45日の「ドライエイジングロインセット」(骨付きリブロイン、骨付きストリップロイン、ボンレスサーロイン、冷凍・4cmカット)となる。
その品質について、牛長の吉田智取締役営業本部長は、「いままで味わったことのない味と香り、脂のおいしさ。骨付きが基本のため、大皿に盛り付けてシェアした方が良い」と評する。香りはナッツをスモークしたような香ばしさが特徴。肉の味わいも、肥育年数が長いため非常に濃厚で、本来うま味が強い肉質に熟成をかけることで、たんぱく質がアミノ酸に変化し、一層うま味が凝縮されているという。そして、一般的に肉質が硬い経産牛だが、適度なサシが入っていることとドライエイジングによって程よい噛み応えがあり、きめ細かな食感と風味を楽しむことができる。
販売についてマルヨシ商事の平井社長は、「肉の味わいが優れた高級商材のため、この魅力を引き出すためには、焼き方も工夫が必要となる。そのため、しっかりとグリラーが備えられたハイエンドクラスのステーキハウスなどに紹介していきたい」としている。そして、「和牛とは全く異なるうま味があるため、まずはお客様に『ルビア・ガジェガ牛』がどのような牛肉なのかを知ってもらうことが大切。映画で取り上げられたことなども踏まえながら、徐々に日本に根付かせていきたい」と期待を込める。
〈畜産日報2024年8月1日付〉