25年卒学生の内定率は2024年4月時点で60%を超え、優秀な学生はすでに複数社の内定を獲得している。また近年は内定辞退も多く、企業にとってかなりの痛手となっている。
では、内定辞退を減らすにはどうすればよいのだろうか。
この記事では、2024年度における新卒学生の内定状況と、学生が内定を承諾する企業・辞退する企業の違いを見ていく。そのうえで、効果的な内定者フォローの方法とポイントを日本人材ニュース編集部が解説する。(文:日本人材ニュース編集部)
目次
25年卒学生の内定状況と初任給引き上げの実態
近年の新卒採用市場では、早い段階でインターンシップなどを実施して学生を囲い込み、いち早く内定を出す早期選考が常態化している。
政府の指針では広報活動のスタートが3月、選考開始が6月となっているが、これらのスケジュールはもはや有名無実化した状態だ。現在採用活動が行われている25年卒の内定率は、今年の4月1日時点で62.8%に達している。
こうしたなか、優秀な人材を獲得する目的で実施されているのが、初任給の引き上げだ。初任給を引き上げる企業は2022年頃から徐々に増え、今では25万円が初任給の相場になりつつある。
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学生が内定承諾する企業と辞退する企業の違い
新卒採用を行う企業の立場は、「選ぶ側」から「選ばれる側」へと変わっている。
優秀な学生の場合、応募の段階ですでに数社の内定を保持していることも珍しくない。そのため、採用担当者の頑張りでせっかく良い学生が採用できたと思っても、入社前に内定辞退を告げられるケースが多くなっているのが現状だ。
では、就活生が「内定承諾する企業」と「内定辞退する企業」の違いは何だろうか。
1つ目のポイントは、「選考中の面接」だ。
パーソル総合研究所 シンクタンク本部の「新卒者の内定辞退に関する定量調査 調査結果」によると、内定承諾企業が「第一適性検査・筆記試験」までは半数以下であるが、それが「一次面接」では半数を超え、「二次面接」になると約6割に達したことがわかっている。
この結果から、パーソル総合研究所では、面接が志望度の上昇に影響を与えているとしている。
また、この調査結果では、就活生から企業への面接評価にプラスの影響を与える要素は、面接官の印象がすべてであることもわかっている。
具体的には「熱意がある」「誠実だ」「頼りになりそう」「親しみやすい」などのポジティブな印象が生じたときに、就活生の面接評価が高まる。面接評価がプラスの場合、入社意欲にもプラスの影響があった。
これらの調査結果から、就活生が面接官に対して信頼性をともなう熱意や親しみを感じることは面接評価にプラスの影響を与え、面接評価の高さは入社意欲にプラスの影響をもたらすことが見えてくる。
なお、内定承諾企業では、面接後に面接内容への感想やアドバイスを就活生に与えた社員割合が高くなっており、面接「後」のフィードバックが内定承諾に良い影響を与えている可能性があるとしている。
参考:パーソル総合研究所 シンクタンク本部「新卒者の内定辞退に関する定量調査 調査結果」
内定承諾企業における内定者フォローの実態
企業の新卒採用は、就活生を内定承諾につなげて終わりではない。近年の就活生は、複数社に内定承諾をすることが当たり前になっている。
こうしたなかで、自社に合う学生に入社してもらうためには、内定承諾から入社までの期間で内定者をどのようにフォローすればよいのだろうか。また、内定承諾企業の多くは、どのようなフォローを実施しているのだろうか。
就活生が「内定承諾する企業」と「内定辞退する企業」の違いの2つ目のポイントは「交流系の施策」だ。
新卒採用支援を行うYouthPlanetの堀田氏は、このように語る。
「近年の学生は複数社への内定承諾は当たり前になっています。それでも、ほとんどの人事担当者は『内定承諾者をなんとか入社までキープしたい』と思っているはずです。といっても、内定者を上手く入社までキープできている企業は多くはなく、本当に難しい時代になって来たというのが、私たちの結論です」
「もっと言えば、内定者キープに神経をすり減らし、必要以上に工数を掛けるべきなのかという疑問すらあります。もはや、労力と見合わなくなっているからです」
「それにも関わらず、内定者に多くの課題を出したり、内定者が集まる機会を増やすなどして、あの手この手で他社への乗り換えを考える時間を奪っていく手法が目立ってきています。なかには、強引な引き留め施策もあったりします。行き過ぎてしまうと悪い口コミにつながるリスクがあることを理解しておかないといけません」
「『内定者同士のつながりを深めるというのはどうでしょう』という質問も、人事担当者から良くいただきます。これも、一概に良いとは言い切れません。なぜなら、悪い方向にもっていこうとする内定者がいたりするからです」
「そのため、過度な内定者同士の集まりはやらないようにしている会社も珍しくありません。もし、内定者のコミュニティーを作るのであれば、学生だけに運営を任せるのではなく、人事担当者も入り込みしっかりとコントロールしていく必要があるでしょう」
「効果があるのは、先輩社員やリクルーターなどが内定承諾者と主体的に接点を持つことです。良きお兄さん、お姉さん的な存在で入社までを伴走してあげると内定承諾者に心強さを感じてもらえるはずです」
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なお、先述のパーソル総合研究所の調査では、「社員との個人面談」や「社長・役員との懇親会」といった交流系の施策や、「社内イベントへの参加」「社内・施設見学会」などの開催は、内定者の入社意欲を高めるとしている。ただし実のところ、内定承諾企業におけるこれらの施策の実施率は、それほど高くないようだ。
参考:パーソル総合研究所 シンクタンク本部「新卒者の内定辞退に関する定量調査 調査結果」
効果的な内定者フォローと採用業務の効率化
最後に就活生が「内定承諾する企業」と「内定辞退する企業」の違いの3つ目のポイントは「多忙な採用担当者を手助けするサービス」だ。
内定者フォローシステム「エアリーフレッシャーズクラウド」を提供するEDGEの佐原資寛代表は、近年における採用現場の実情を以下のように説明する。
「内定辞退が増加し、内定承諾者数を充足ができない企業が増えています。そのため採用担当者はさらに内定を出すための活動に注力せざるを得ず、内定者フォローが不十分になってしまいます。その結果、内定辞退がまた出てしまうという悪循環に陥ります」
採用担当者が採用活動で多忙を極めるなかで、効果的な内定者フォローも同時に行っていくためには、採用業務の効率化が必要だ。方法としては、先述の「エアリーフレッシャーズクラウド」のようなサービスを活用するのも一つとなる。
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内定辞退による悪循環は内定者フォローで防ぐ
優秀な就活生の多くは、大学4年生の4月時点ですでに何社かの内定を獲得している。また、就活生が複数企業の内定を獲得する状況は、それだけ多くの企業で内定辞退が生じることを意味する。
採用企業の視点で考えれば、せっかく出した内定の辞退が増える状況は、できるだけ避けたいものだ。内定辞退が増加すれば、採用活動の長期化から担当者の負担や採用コストがさらに増加する悪循環に陥りやすくなる。
内定辞退を防ぐ目的で内定者の入社意欲を高めていくためには、交流系の施策や社内・施設見学会などを開催することも一つとなる。
また、新卒採用の早期化・通年化・複雑化が進むなかで、採用担当者の負担を減らし内定者フォローに力を入れるためには、便利なサービスの導入で業務効率化を行うことも必要だろう。