目次
- 1893年に創業 スポーツ器具、オリジナル遊具の設計から製造、施工まで手掛ける
- 創造、提案、貢献を方針に掲げる 「おもしろい」と感じる気持ちを大切に
- 福岡県北九州市内に設置した100人乗りのブランコがギネス世界記録に認定
- スケートボードやBMXの人気上昇に伴って需要が高まるスケートパークに注力
- 100近いスケートパークの施工に携わる 導入計画の作成サポートから納入後のメンテナンスまで幅広く対応
- スケートパーク事業に長期的視点で取り組む
- 地元香川県のアーバンスポーツの盛り上げにも貢献
- ホームページをスケートパークの情報やアーバンスポーツの魅力発信に活用
- 個人向けの販路を開拓するために「ツムラウェブショップ」を運営
- 費用削減や業務効率化にデジタル機器やICTを活用
- 2024夏のパリ・オリンピックを見据えて、アーバンスポーツ事業の次の一手を考える
スケートボードやBMX(競技用自転車)などを使って華麗な技を競い合うアーバンスポーツ。その競技場となるスケートパークの普及に大きな役割を果たしているのが、体育館施設や遊具の製作に携わる香川県の株式会社都村製作所だ。130年を超える歴史を通じて育んだ企画力と技術を生かして、全国で需要が高まるスケートパークの整備に力を注ぐ。その一方で、ホームページを通じてスケートパークの情報やアーバンスポーツの魅力を積極的に発信。デジタル技術を新規の需要開拓と新しいスポーツ文化の醸成に役立てている。(TOP写真:都村製作所が手掛けたスケートパークで開催されたスケートボードの大会の様子)
1893年に創業 スポーツ器具、オリジナル遊具の設計から製造、施工まで手掛ける
株式会社都村製作所は、明治26(1893)年に体育器械の製造業者として創業。130年以上の歴史の中で、学校などの体育館施設やスポーツ器具、オリジナル遊具の製造に取り組んできた。設計から製造、塗装、施工まで一気通貫で手掛ける体制を整えている。バスケットボール、バドミントン、バレーボール、テニス、卓球、体操など多種多様なスポーツの用具や器具の販売、移動式バスケットボール、スコアボード、LEDビジョンなどの設置も手掛けている。
都村製作所は本社を香川県仲多度郡琴平町の中心部に構えている。会社の敷地内には本社棟、スポーツ器具や遊具を製造する工場などが並ぶ。溶接設備などを備えた工場は2015年に拡張し、自動式のパイプ保管庫などの設備を新たに導入。2019年には従業員が休憩などで使う厚生棟を新設した。
創造、提案、貢献を方針に掲げる 「おもしろい」と感じる気持ちを大切に
「都村製作所は、創造、提案、貢献を方針に掲げ、体を動かす楽しさを多くの人に体験していただくことを目指して事業に取り組んでいます。楽しさを実感できる設備や製品を生み出すために、従業員には『おもしろい』と感じる気持ちを大事にしながら仕事に取り組んでほしいと思っています」。都村製作所の企業文化について、都村和史常務取締役は明るい表情でこのように話した。これまで築いてきた事業基盤を大事にした上で、新しい事業に積極的に挑戦しているという。
福岡県北九州市内に設置した100人乗りのブランコがギネス世界記録に認定
都村製作所は、話題性が高い設備の提案と納入を通じて全国各地の活性化にも貢献している。福岡県北九州市内の公園に設置されている2019年5月にギネス世界記録に認定された100人乗りのブランコは、「ブランコという一般的な遊具に世界最長というスパイスを振りかけることで、地域の財産となる設備にすることができました。新しい遊具を企画する時は、聞いた人が最初は笑い飛ばすくらいのユニークな発想を盛り込むことを大事にしています」と都村常務。
スケートボードやBMXの人気上昇に伴って需要が高まるスケートパークに注力
都村製作所が現在、新たな事業の柱として育てているのが、スケートボードやBMXといったアーバンスポーツを楽しむ拠点となるスケートパークだ。スケートボードとBMXフリースタイルは、2020年東京オリンピックで競技として採用されたこともあって近年、競技人口が急増。各地域が整備に力を入れ、国内の公共スケートパークは2023年5月時点で434施設(NPO法人日本スケートパーク協会調べ)を数え、2017年時と比較すると約4倍に増加している。
100近いスケートパークの施工に携わる 導入計画の作成サポートから納入後のメンテナンスまで幅広く対応
都村製作所は、スケートパークの使用目的に応じた導入計画の作成サポートから納入後のメンテナンスまで幅広く対応。プレイヤーの要望を反映し、安全かつ耐久性が高いオーダーメイドのスケートパークを全国の自治体や企業に提供している。最も重要な滑走面には世界標準の滑走性、耐久性、安全性を備えた素材を使用。プレイヤーが安心して競技に取り組めるように、素材の材質への配慮を徹底しているという。これまで100近いスケートパークの施工に携わるなど国内で圧倒的な実績を誇る。
スケートパーク事業に長期的視点で取り組む
スケートパークには長期的な視点で取り組んできた。新規事業の一環として携わり始めたのは20年ほど前にさかのぼる。最初は苦戦したが、徐々に受注が増え、スケートボードとBMXフリースタイルが、2020年東京オリンピックの追加競技に決まった2016年以降は更に勢いが増したという。「スケートパークには、当社が130年にわたって体育施設、遊具を企画、製造する中で育んできた技術を注ぎ込んでいます。競技者だけでなく仲間や観客たちも一体となって楽しむことができるアーバンスポーツは、都村製作所の企業文化と高い親和性があると思っています」と都村常務は話した。
都村製作所は、スケートパークを設置する場所の地形や周辺環境などの条件に合わせて、子どもや初心者向けのコースから本格的な競技者向けのコースまできめ細かく設計するノウハウを蓄積している。U字型のミニランプ、垂直の立ち上がり目を持つハーフパイプ、クォーターランプ、バンクトゥバンクといったセクション(構造物)を最適な形で組み合わせることで、都村製作所ならではの魅力的な競技空間を作ることができるという。「スケートパークは若者を中心に地域交流の場としても活用することができます。使われなくなったプールやテニスコートなどがあれば、若者が集まるスケートパークとして生まれ変わらせることが可能です」と都村常務。
地元香川県のアーバンスポーツの盛り上げにも貢献
2024年2月には香川県丸亀市の屋外スポーツ施設「東洋炭素アーバンスポーツパーク」内のスケートパークに多種多様なセクションを納入した。オープン後は多くの人が利用し、同年5月には中国・四国地方のアマチュアのスケートボード大会が開催されるなど、地元のアーバンスポーツの盛り上げにも一役買っている。
ホームページをスケートパークの情報やアーバンスポーツの魅力発信に活用
スケートパークの情報やアーバンスポーツの魅力を発信するために活用しているのが、ホームページだ。製品一覧、施工事例・納入実績、遊具・体育用品のカタログ、企業情報も発信している。東京支店に専門の担当者を置いて、アクセスについての情報を常に分析し、検索エンジンのランキングで上位表示を狙うSEO(検索エンジン最適化)対策を行いながら運営している。
トップページでは、スケートパークの施工作業、競技者によるスケートボードの練習、競技会のハイライトといった各場面を編集した約4分の動画を掲載するとともに、これまで施工したスケートパークの実例を写真と詳細な説明を添えて紹介している。それ以外でもスケートパーク専用のページを設けて、動画と文章で自治体や企業、競技者向けにその事業効果や魅力を伝えている。「更新頻度を上げるために、社内に呼び掛けてホームページに掲載する新しいトピックを積極的に提供してもらっています」と都村常務は話した。
個人向けの販路を開拓するために「ツムラウェブショップ」を運営
都村製作所の主要な取引先は企業や自治体だが、個人向けの販路を開拓するために10年以上前から電子商取引(EC)を行っている。「ツムラウェブショップ」の名称で運営し、室内用の子ども向けの鉄棒、体操マット、スケートボードのセクションやレール、跳び箱、スポーツ遊具などを販売している。個人のスポーツ愛好家が自宅での練習用に買い求めるケースのほか、子どもや孫のためのプレゼントとしての需要も生まれているという。室内用の子ども向けの鉄棒は、小学校向けに販売している鉄棒の2倍以上の数量が毎年売れるなど、当初想定していなかった人気商品も生まれている。
「ウェブショップは新しい販路を開拓する上で一定の役割を果たしてくれています。ホームページのアクセス数とウェブショップの業績は連動しているので、より多くの人をホームページに呼び込む仕組みを作っていきたい」と都村常務は意欲を見せた。
費用削減や業務効率化にデジタル機器やICTを活用
都村製作所は、デジタル機器やICTを活用して、バックオフィス業務で費用削減や業務効率化に取り組んでいる。
従業員が、パスワード設定をした個人の私書箱を通じて、必要な文書だけを印刷できる複合機の機能を2019年から活用している。印刷は、パソコンから指示を出した後、複合機のモニターで再度確認してから行う仕組みになっているので、無駄な印刷や他人の印刷物と混じり合ってしまうといったリスクが減少した。長期的に考えると紙代やインク代の大きな削減につながっているという。オーダーメイドの基幹システムを通じて東京都と宮城県の支社との情報共有体制を確立し、Web会議システムも積極的に活用している。今後、注文を受けた設備の製造状況をリアルタイムで可視化するために工程管理システムも導入する予定だ。
2024夏のパリ・オリンピックを見据えて、アーバンスポーツ事業の次の一手を考える
2024年夏にフランス・パリで開催されるオリンピックでも、スケートボードとBMXフリースタイルは正式競技として採用されている。アーバンスポーツへの新たな注目が期待される中、都村製作所も次の一手を考えている。 「スポーツの世界は変化が激しく、選手だけでなく、携わっている企業も以前から取り組んでいることを踏襲するだけでは生き残っていけません。アンテナを張り巡らせて、ICTやデジタル機器を活用しながら時代の変化に機敏に対応していきたいと考えています。スポーツ遊具、公園空間のプロフェッショナルメーカーとして、これからも世の中を明るく健康にすることに貢献していきます」と都村常務は力強く語った。
企業概要
会社名 | 株式会社都村製作所 |
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本社 | 香川県仲多度郡琴平町榎井590 |
HP | https://www.tsumura-f.co.jp |
電話 | 0877-73-2251 |
設立 | 1939年7月(創業1893年2月) |
従業員数 | 88人 |
事業内容 | 公園施設設計・施工、遊器具製造、健康器具製造、緑化造園工事、体育館内部施設設計・施工、球技機器・体操器械・トランポリン用・陸上競技用・トレーニング用の各器具製造、内装仕上工事設計・施工、電気工事設計・施工 |