【著者が語る】海外に送り出した社員の命をどう守る? 在るべき企業の海外危機管理

安全サポート

有坂 錬成 代表取締役

【PROFILE】住友海上火災保険(現三井住友海上)でドイツに駐在の後本社で送り出し業務を担当。1999年外務省に出向し「誘拐対策マニュアル」の編集、「海外安全ホームページ」の元となったサイトの立ち上げにも携わる。直近の主な活動は、企業に対する海外危機管理体制構築コンサルティング、講演、マニュアル作成、退避計画作成、重大事案発生時の対応アドバイスなど。

海外進出企業の人事の方から次のような相談を受ける機会が多くなりました。「このところ急激に地政学上のリスクが高まってきており、海外駐在員や海外出張者の安全対策を整えなければいけないと思っているが、何から手を付けたら良いのか分からない。また、そもそも人事部が主体になって取り組んでいくべき課題なのかどうかも分からない」

海外でのリスクが高いのは今に始まったことではありませんが、今は第二次大戦後、最も脅威が高まっていると言っても過言ではありません。しかし、大企業であっても海外に送り出した社員を守るための海外危機管理を組織として継続的に運用していくことは容易ではありません。

また、「どこの部門がイニシアチブをとっていくべきなのか」「現地の情報を持っている部門が担当した方が良いのではないか」「しかも安全を優先すれば業務の足かせとなり、関係部門の理解が得られないのではないか」など実際に対応しようとすると様々な課題があります。

極論すれば「社員の命か業績か」ということで、そこまでいけば分かり易いのですが、世界の情勢はそこまで明快ではなく、先が見えない中で判断し、対応して行かなければならないのが現実です。

担当者は常にこのようなジレンマを抱えていますが、これらは人事部を起点として経営層も含めた会社全体で受け止めて行くべき課題なのです。しかし長い間平和な時期が続いた日本において「危機管理」を言葉にして伝えることは難しく、経営層もその感度を上げておかなければ担当者が発した危険信号を受け止めることも難しくなってきます。

実は私自身も長年日本の損保会社で海外のリスクを扱ってきたあと、企業の海外危機管理の業務に20年以上関わっていますが、「危機管理」を短い言葉で説明することの難しさを痛感しています。

危機管理について書かれた本は沢山ありますが、理論に偏って難解なものが多いのが現状です。そこで、実務を行う方に向け、実際の経験に基づく読み易い本として本著を発刊しました。是非参考にして頂ければと思います。

【著者が語る】海外に送り出した社員の命をどう守る? 在るべき企業の海外危機管理
有坂錬成 著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
1,400円+税

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