労務行政研究所が東証プライム上場企業を対象に実施した「2024年度 新入社員の初任給調査」によると、2024年度の初任給を前年度から「全学歴引き上げ」た企業は86.8%と過去10年で最多となっていることが明らかとなった。(文:日本人材ニュース編集部

初任給を「全学歴引き上げ」た企業は8割超、過去10年で最多

2024年度の初任給を前年度から「全学歴引き上げ」た企業は86.8%と、23年度速報集計時の70.7%から16.1ポイント上昇した。一方、「全学歴据え置き」した企業の割合は9.2%と、同速報集計時の26.1%から16.9ポイント低下した。

産業別に見ると、製造業は91.3%と9割以上の企業が全学歴引き上げたのに対し、非製造業は80.0%と8割であった。

【初任給の改定状況】
全学歴引き上げ 86.8%
一部引き上げ(一部据え置き) 3.9%
全学歴据え置き 9.2%

過去10年間における、初任給を「全学歴引き上げ」た企業の割合(初任給の引き上げ率)の推移を見ると、15年度は、輸出産業を中心とする企業業績の回復やデフレ脱却に向けた賃上げの政労使合意などを背景として賃上げ基調が顕著となった14年度に引き続いて、引き上げを実施する企業が増加し、14年度の23.2%から16.7ポイント上昇の39.9%となった。

16年度と17年度は引き上げ率が30%前後で推移したが、18年度は再び上昇し39.7%となった。19年度、20年度は下降基調ながら 30%台で推移したが、21年度はコロナ禍による業績不振の影響などを受け17.1%と大幅に低下。しかし、22年度は一転して40%台、23年度は70%台と、2年連続で大幅な上昇となった。

24年度はさらに上昇して86.8%となり、過去10年で最多となっている。

ちなみに、初任給を「全学歴据え置き」とした企業は、20年度の58.5%から21年度には74.3%と上昇したものの、22年度は49.7%、23年度は26.1%と大幅に低下し、24年度は1割に満たない9.2%となっている。

【初任給を「全学歴引き上げ」た企業の割合】
2015年 39.9%
2016年 33.9%
2017年 29.4%
2018年 39.7%
2019年 35.7%
2020年 32.9%
2021年 17.1%
2022年 41.8%
2023年 70.7%
2024年 86.8%

全産業で見た学歴別の初任給水準は、大学卒(初任給に差を設けず、一律設定の場合。以下、一律)23万9078円、大学院卒修士25万9228円、短大卒20万5887円、高校卒(一律)19万3427円となった。

【学歴別 初任給水準、上昇率】
大学院卒修士  25万9228円(上昇率5.9%)
大学卒(一律) 23万9078円(上昇率5.4%)
短大卒     20万5887円(上昇率6.2%)
高校卒(一律) 19万3427円(上昇率6.5%)

大学卒(一律)では、引き上げた場合の上昇額は「1万~1万2000円未満」と「1万4000~1万 6000円未満」がいずれも14.4%で最も多い。引き上げた場合の平均上昇額は1万3746円となった。

調査は、東証プライム上場企業のうち1604社を対象に、3月下旬に調査票を発送、併せて電話による取材も行い、4月10日までに回答のあった152社を集計した。

※初任給は原則として時間外手当と通勤手当を除く、諸手当込みの所定内賃金。
※21年度以前は「東証1部上場企業」、22年度以降は「東証プライム上場企業」の割合。

その他の人材採用や人事関連の記事はこちら