白井聡子さんは、編集プロダクションや出版社での勤務を経て、2016年に一般社団法人10000日記念日を設立し、代表理事を務めています。彼女が開催した10000日記念イベントは、テレビや新聞などのメディアで紹介され、その活動は草の根的に広がっています。新たな記念日の普及、定着を目指す白井さんに、10000日記念日に込められた思いを伺いました。 |
「10000日記念日」は人生の節目に相応しい
私たちの一生は、普段何気なく過ごす日々の積み重ねです。『RENT』という有名なミュージカルのテーマ曲『Seasons Of Love』に、「人生をどう数えるか」という歌詞があります。コーヒーを何杯飲んだのか、朝焼けを何回見たか、一生を秒数で数えると何秒だというような内容の歌詞です。現在の日本の平均寿命で考えると、人生は約30000日と言えます。
そんな中で、私は人生の新たな節目として「10000日記念日」を提案したいと思います。10000日目というのは、27歳4.5カ月に当たります。この頃は、社会人5年目で仕事に責任が増え、結婚や出産を経験する人も出てくる時期です。また、親の高齢化に気づき、頼られる立場になることもあるでしょう。
現在の成人式は18歳で迎えますが、多くの人にとって大人になったという実感はまだ乏しいかもしれません。そこで、10000日目という節目が、本当の大人への一歩を踏み出すタイミングとして相応しいのではないでしょうか。
実際に、X(旧Twitter)上では以前から「生まれてから10000日だよ」と発信している人がいて、喜びを持ってこの日を迎えている様子が伺えました。まだ浸透していないため、お祝いされても気づいていない人が多いようですが、祝福されることを嬉しく感じる人が多いのも事実です。
10000日目という節目が、自分の人生を見つめ直し、大人としての自覚を促す記念日になればと考えています。そして、その思いを行動に移すため、『一般社団法人10000日記念日』を設立しました。この団体を通じて、生誕10000日をお祝いする新しい文化を作っていきたいと思っています。
地道な啓蒙活動で広がる10000日記念日の輪
一般社団法人10000日記念日では、生誕10000日を迎える有名人・著名人の方々にX(旧Twitter)を通じてお祝いメッセージを送っています。当社のホームページには、自身の生年月日を入力すると10000日記念日がわかり、証明書のダウンロードができる機能があります。さらに、20000日、30000日、40000日の証明書もダウンロード可能です。
お祝いメッセージを送ると、時には無視されることもありますが、「こんなの知らなかった、ありがとう!」と喜ばれることもあります。そのお祝いメッセージをファンの方が見つけると、「おめでとう」のコメントが連投されることも。誕生日とは違い、10000日記念日のグッズがなかったため、当法人ではメガネ、カチューシャ、バルーン、専用ポチ袋、ケーキキャンドルなどを製作・販売しています。
学生時代からいろんなことにチャレンジした記事を、ブログに上げているフリーライターのツマミ具依さんという方がいます。ある時、「10000日をお祝いして10000本のキャンドルを消してみたい」という彼女の発信を見つけました。そこから直接コンタクトをとって、コラボレートが実現しました。
ローソクやキャンドルを取り扱う『カメヤマローソク』さんの協力を得て、ツマミ具依さんの誕生日に、三重県の工場で10000本のキャンドルを並べ、3時間半かけて吹き消すイベントを決行。休日返上で出勤した社員の方々の助けもあり、無事に挑戦を達成しました。10000本のキャンドルとさらりと言っていますが、これがすごい量なんですよ(笑)
このイベントはテレビや新聞などのメディアで紹介され、大きな反響を呼びました。こんなに大規模なイベントでなくても自分の好きな人や、身近な人の10000日記念日を祝いたいと思う人は多いはずです。「10000日記念日」が、人生の節目を祝う新しい文化として定着することを願っています。
10000日記念日が自分を見つめ直すきっかけになる
若い世代では、「年を重ねること」にネガティブな印象を持方が多いですが、私は大人になっていく楽しみを見つけてもらいたいと考えています。そこで、世の中からお祝いされる仕組みを作るべく、『人生ログインボーナス』というサービスを構想しました。
ゲームでは、ログインすると一定日数ごとにアイテムがもらえますが、それを人生に当てはめたら面白いのではないでしょうか。たとえば、10000日記念日や7777日のようなゾロ目の日を迎えたら、豪華な食事券やファストフードショップのポテトがもらえたりすると楽しいですよね。世の中全体でさまざまな記念日をお祝いできるプラットホームができれば、生きているだけで喜びが増えるはずです。
クーポンを発行する側は集客と売上アップにつながり、クーポンをもらう側はお得なサービスが受けられて、次にもらえるまでの楽しみができるわけです。さらに、記念日ごとに写真や動画でお祝いの様子を残せるサービスも実現したいと思っています。
最近では、10000日記念日に休みを取って旅行に行ったり、ケーキを食べてパーティーをしたりする人も増えてきました。10000日を過ぎると、次は54歳で訪れる20000日。セカンドキャリアを考え始めるタイミングでもあります。
そのときまでに達成したい目標を立てるのも良いかもしれません。10000日記念日が、自分の人生を見つめるきっかけのひとつになってくれたら嬉しいです。ただのお祭り騒ぎではなく、何かを始めたり、感謝したり、意味を持たせる日になればと願っています。私一人の力では実現できないので、皆さんのお力を借りながら、10000日記念日を広げていきたいです。