株式譲渡を行うにあたっての注意点・デメリット

株式譲渡において注意すべき点、デメリットについてご紹介します。

全株式の取得が困難なケースもある

譲渡側(売り手)の株主が分散しており、M&Aに反対する株主や、所在が分からず連絡の取れない株主が存在する場合は、株式を100%取得することは困難になります。

このような場合、スクイーズアウトという強制的に少数株主を排除する手法もありますが、弁護士主導となり手続きが煩雑、対価の支払いも必要になるため、友好的M&Aには不向きなケースが多いです。

不採算事業が理由で譲渡価額が下がる場合がある

前述の通り、株式譲渡は一部の事業だけを切り離すことができません。そのため会社内に不採算事業があれば、その分マイナス評価をされて譲渡価額が減る可能性があります。

希望条件で譲渡を行いたい場合は、あらかじめ事業譲渡や会社分割で不採算事業を切り離し、マイナス要素を減らして譲渡を行うという選択肢もあります。

買収資金が多額になる場合がある

株式譲渡の場合、譲渡対象企業の資産・負債をすべて引き受けることになります。そのため譲渡対象企業に現預金や売上債権などが多額にあり、純資産が多額であればあるほど、財務的には優良である一方で、株価、即ち譲受側(買い手)サイドの投資額は増えることになります。そのため、実務上は役員退職金を活用して投資額を減額させるケースも多いです。

簿外債務を引き継ぐリスクがある

簿外債務とは、バランスシート(貸借対照表)上に記載がない債務のことで、未払い残業代や退職給付引当金などが該当します。中小企業においては、簿外債務は決して珍しいものではありません。株式譲渡では、売り手企業の簿外負債も引き継ぐことになります。契約前にしっかり調査しなかったために、譲渡後になって簿外債務に気づいたというケースも少なくありません。バランスシート上は問題がなくとも、経営陣へのヒアリングやデューデリジェンスを通して、簿外債務の有無を確認しておく必要があります。

株式譲渡制限に注意する

株式譲渡制限とは、自社の株式を自由に売買できないように制限をかけることです。自社の株式に譲渡制限をかけている会社を株式譲渡制限会社、または非公開会社と呼びます。 望まない第三者が株式を取得したことで、会社に不利益やトラブルが起こることを避けるために多くの中小企業は、自社株式の譲渡に制限をかけています。譲渡制限がかけられた株式を譲渡する場合は、株主総会や取締役会などで会社の承認を得る必要があります。