3月25日、日産自動車は2023年度を最終年度とする「Nissan NEXT」と長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」との “架け橋” となる経営計画「The Arc」を発表した。地域ごとの販売台数、EV化率、新車投入、コスト削減等について数値目標を示したうえで、2026年度までに今年度比100万台の販売増、営業利益率6%以上、株主還元率30%以上を達成し、2030年度を目途にモビリティサービス等の新規事業で2.5兆円規模の市場創出を目指す。
「The Arc」で強調されたのは価格競争力の向上とパワートレイン×車種構成の最適化による販売増である。2026年度末までに16車種のEVを含む30車種を新型車に置き換え、2030年度内にEVコストを3割削減する。販売計画と車種構成は各地域市場ごとに提示されている。しかし、資料を見る限り、やや独りよがりの感は否めない。それぞれの市場における「勝ち方」が見えてこないし、「2025年から開始し、10万台を目指す」とする中国からの輸出も「一体、どこへ?」との疑問が残る。
もちろん、市場ごとに別途きめ細かな施策が準備されているはずであろうが、「量より価値」、「選択と集中」を謳っているわりには総花的で、あえて言えばつとめてこれまで通りの “ニッサン” らしいバランス重視のアプローチである。「The Ark」の発表に先立って日産自動車は本田技研工業と電動化と知能化領域における提携を発表した。とは言え、具体化はこれからだ。会見で日産自動車の内田社長は「戦う相手は自動車メーカーだけでない」と危機感を語ったが、であればパートナーは自動車メーカーでよかったのか。
そのホンダは2040年までにエンジン車から撤退、EVとFCVに特化すると宣言済だ。昨年10月にはソニーとの共同出資会社「ソニー・ホンダモビリティ(株)」が新型EV「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプを発表、2026年春の北米でのデリバリーを目指す。グローバル通信プラットフォームのパートナーはKDDIだ。ホンダ本体からはプラグイン機能を搭載し、水素無しでも走行できる新型FCVの市場投入も決定している。もちろん、ホンダはホンダだ。しかしながら、現状の延長線上に描き出された「最適化」に筆者は緩やかな後退を感じざるを得ない。“架け橋” ではなく、2030年のその先の未来を先取りする! そんなニッサンに期待したい。
今週の“ひらめき”視点 3.24 – 3.28
代表取締役社長 水越 孝