伊藤ハム米久ホールディングスグループのIHミートパッカー(本社:青森県十和田市、乘池秀隆社長)は3月13日、青森県十和田市で十和田ビーフプラント竣工式を行った。
IHミートパッカーは、東日本で同グループ内最大の食肉加工会社。徹底した生産管理のもと、生体と畜・カット・成形・検査・出荷までを行っている。十和田、宮城、東京(埼玉)、名古屋の4カ所に工場拠点を持つ。
今回、十和田工場に隣接する土地に最新鋭の十和田ビーフプラントを建設した。現在、試験稼働を行い、4月1日から本格稼働する予定。フル稼働すれば、大動物と畜で1日60頭、大動物部分肉処理で同じく1日60頭を処理する。本格稼働後は、対米・対EU輸出認定施設として申請し、2024年中の北海道・東北産牛肉の世界への輸出を目指す。
竣工式には、IHミートパッカーの乘池社長、伊藤ハム米久ホールディングスの宮下功代表取締役社長、農水省畜産局の猪口隼人食肉鶏卵課長、青森県上北地域県民局の雪森正三局長、七戸町の小又勉町長、全国畜産農業協同組合連合会の加藤義康代表理事会長らが出席した。
乘池社長は、「この十和田の地から、安全、高品質でおいしい牛肉を日本全国、そして世界へ届けたい。次は輸出認定施設に向け、全社一丸となって取り組みたい」とあいさつした。
十和田ビーフプラントは、「牛に優しく、人に優しく、環境に優しく、牛も人もストレスフリーに。」をコンセプトに、安全で高品質な製品を供給することとしている。「牛に優しく」では、アニマルウェルフェアを向上させ、屋内係留で過ごしやすい環境を整え、と畜前のストレスを軽減する。
具体的には、
〈1〉夏場の暑さ対策・生体の清潔維持のためのシャワー設置、吸排気設備による冷気の取り込み
〈2〉牛の転倒防止のため、防滑用の床仕上げを採用
〈3〉水欠乏防止のため、常時飲水可能な設備を設置
〈4〉1頭当たりのスペースを従来の2.5平方メートルから3.8平方メートルと1.5倍の広さを確保
〈5〉確実なスタニングができるように自動頭固定を採用し、苦痛を最小限にとどめる
――などを行っている。
「人に優しく」では、従業員のモチベーションを高める環境づくりとして、 〈1〉食肉処理業という閉鎖的なイメージを払しょくする吹き抜け空間のある玄関ホール 〈2〉休憩室などの共用部は安らぎと快適性を感じられる空間設計 ――とした。
また、生産者が利用しやすい施設設計として
〈1〉生体搬入口は冬期夜間搬入でも安全な融雪設備設置
〈2〉天候に左右されない屋根付き洗車場設置
〈3〉生体搬入車両出入口には防疫対策として車両消毒装置の設置
――などを行っている。
「環境に優しく」では、地球環境を守る取り組みとして、
〈1〉LPガスの採用でCO2排出量削減
〈2〉部分肉加工室の天井を下げ室容積を減らすことで空調の負荷を低減、省エネ効果を得る(枝肉に合わせた5.5mから一部を3.5mとし約36%の容積減)
〈3〉屋外機を屋根上や外部周辺の適する位置に設置し無駄な配管経路を短縮し、空調効率を最適化
〈4〉融雪設備で利用する安定した地熱を夏季には空調へ活用し省エネ冷房
――を行う。
竣工式の後、乘池社長、伊藤ハム米久ホールディングス食肉事業本部食肉生産本部国内生産部の山崎征二部長、IHミートパッカー管理部の中平崇部長が記者会見した。
山崎部長は、十和田ビーフプラントの意義について、「当社は中期経営計画で収益基盤の強化を掲げている。人口が多いのは東名阪、牛が多いのは北海道・東北・九州だが、当社は九州にはサンキョーミートがあり、バリューチェーンができている。しかし、東日本はバリューチェーンが完結しておらず、そこで十和田ビーフプラントを建設することとした。同時に日本国内のみならず海外へ輸出するため、最新鋭の工場を作り輸出対応を行うことにした。トレサビ、サステナブル、アニマルウェルフェアなどハードルが上がるなかで、牛に、人に、環境にやさしいを頭に置き、新しい工場を作った」と説明した。
EU、米国などへの輸出認可については「工場が本格稼働して早い時期に申請を行う。相手があることで時期は不透明だが、早ければ半年以内、遅くても年内に認可が下りればありがたい。新しい施設はできたが、その運用との両輪が必要。ハードルが高いことは覚悟している」とした。
〈畜産日報2024年3月15日付〉