Coursera、AIを活用し4400以上のオンライン講座を日本語に翻訳、日本の学習者に向けた新しいAI機能も提供
左から:Coursera グローバルコミュニケーション担当バイスプレジデントのアルナブ・シンハ氏、東京大学 大学総合教育研究センター副センター長 兼 高等教育推進部門長の栗田佳代子氏、コーセラ CEOのジェフ・マッジョカルダ氏

オンライン学習プラットフォームのリーダーであるCoursera(以下、コーセラ)は、質の高い教育へのアクセスを向上させ、日本の学習者や教育機関の需要に応える新しい取り組みを3月14日に発表した。AIを活用し4400以上の講座を日本語に翻訳するとともに、日本の学習者に向けた新しいAI機能を提供する。同日に行われた記者発表会では、日本市場での事業展開を本格化する背景や具体的な取り組み内容について説明した。

「ChatGPT-4の登場は、あらゆる教育レベルの仕事に影響を及ぼしており、低技能職だけでなく、高技能職も自動化のリスクにさらされている。生成AIは、ほぼすべての職業に劇的な変化をもたらすことが予想され、新たな学び直し(リスキリング)の必要性を突きつけている。その中でも、教育者の職務に最も大きな影響を与える可能性がある」と、コーセラ CEOのジェフ・マッジョカルダ氏が挨拶。「当社は、2012年にスタンフォード大学のコンピュータサイエンス教授であるアンドリュー・ン氏とダフニー・コラー氏によって、世界クラスの学習への普遍的なアクセスを提供することを目的に立ち上げられた。現在では、325以上の教育者パートナーと連携し、全世界で1億4000万人以上の登録学習者、および企業・大学・官公庁など7000以上の機関に向けて幅広い講座を提供している」と、グローバルにおけるオンライン学習エコシステムを紹介した。

Coursera、AIを活用し4400以上のオンライン講座を日本語に翻訳、日本の学習者に向けた新しいAI機能も提供
コーセラ CEOのジェフ・マッジョカルダ氏

「日本では、特にコロナ禍以降、当社の講座を利用する学習者が急増し、昨年の登録学習者は77万2000人と、2019年の2.5倍となり、のべ登録者数は170万人に達した。現在もオンライン学習に対する高いニーズは継続しており、日本語対応の講座をさらに増やす必要があると考えていた。しかし、従来の人間による翻訳では、コストの問題もあり対応が難しかった。そこで今回、AIを活用した機械学習によって、4400以上の講座を低コストかつ高品質に日本語へ翻訳し、提供を開始する」と、日本市場に本格展開する背景について説明。「今までは英語のみで提供されていた講義ビデオの字幕やコースの本文、小テスト、課題の指示、ディスカッションの内容などを日本語翻訳することで、海外の一流の講座を、日本語で受講することが可能になる。今後は、機械学習の活用をさらに進化させ、講義ビデオの日本語吹替にも対応していく」と今後の展開にも言及していた。

さらに今回、AIを活用した翻訳によって、日本初のパートナーである東京大学が提供する「ビッグバンからダークエネルギーまで(From the Big Bang to Dark Energy)」、「ゲーム理論へようこそ(Welcome to Game Theory)」、「インタラクティブ・コンピュータグラフィックス(Interactive Computer Graphics)」、「日本の大学で学ぶ(Studying at Japanese Universities)」など6つの講座が21言語に翻訳され、質の高い日本のコンテンツを世界中の学習者が利用できるようになったという。

Coursera、AIを活用し4400以上のオンライン講座を日本語に翻訳、日本の学習者に向けた新しいAI機能も提供
東京大学 大学総合教育研究センター副センター長 兼 高等教育推進部門長の栗田佳代子氏

東京大学 大学総合教育研究センター副センター長 兼 高等教育推進部門長の栗田佳代子氏は、「東京大学では、2013年からコーセラのオンライン学習プラットフォームに2講座を提供開始し、現在は9講座を提供している。日本国内では、東京大学が唯一の提供大学であり、今年5月にはさらに2講座を開講する予定となっている。東京大学の公開オンライン講座は、当大学の教育研究活動を世界に発信することを目的としており、海外の学習者が94%を占めている。今回、コーセラに提供している6つの講座がAIの活用で21言語に翻訳されたことを受け、今後も当大学ならではの講座を社会貢献の一環として提供し、コーセラとの連携を進めていきたい」との考えを示した。

また、コーセラでは、日本語翻訳への対応と共に、日本の学習者に向けた新しいAI機能として「Coursera コーチ」「生成AIアカデミー」「Coursera コースビルダー」を提供することも発表した。「Coursera コーチ」は、Coursera Plus加入者、Coursera for Business、およびCoursera for Governmentの学習者向けの生成AIを搭載したバーチャル学習アシスタント。学習者ごとにパーソナライズされたフィードバックを提供し、質問に答え、ビデオ講義やリソースを要約する。学習者の現地語での対話もサポートする。

「生成AIアカデミー」では、マイクロソフトやスタンフォード・オンライン、ヴァンダービルト大学、DeepLearning.AI、Google Cloud、AWSを含む、一流の大学や企業の基礎リテラシーとエグゼクティブ教育プログラムを用意している。再定義された仕事に向け、現在必要な新しいスキルを従業員に提供する。

「Coursera コースビルダー」は、AIが支援する学習支援ツールで、企業、政府機関、大学であれば誰でも、簡単かつ迅速にカスタム講座を作成することができる。作成者は、コーセラに参加している世界トップクラスの企業や大学パートナーからのモジュールと、自分の組織の専門家からのコンテンツをシームレスに融合することができる。コースビルダーは、作成者からの指示に基づき、講座の構成、説明内容、課題、用語集などのコンテンツを自動生成するという。

Coursera、AIを活用し4400以上のオンライン講座を日本語に翻訳、日本の学習者に向けた新しいAI機能も提供
仙台市 市長の郡和子氏によるビデオメッセージ

最後に、将来の即戦力となる人材を育成するために、野村総合研究所、SATOグループ、仙台市を含む主要企業や政府機関に向けて、企業向けオンライン学習サービスを提供していることも紹介した。仙台市 市長の郡和子氏は、「仙台市では今年度、新たに『仙台グローバルスタートアップ・キャンパス』という人材育成プログラムをスタートした。その中で、日本の行政機関としては初めてコーセラとMOU(基本合意書)を締結し、世界最先端のアントレプレナーシップ教育を仙台および東北の学生にオンラインで提供することが可能となった。『仙台グローバルスタートアップ・キャンパス』の重要な学習パートの一つとして、現在110名が、のべ500以上の講座を受講している。コーセラとの連携を通じて、将来の地域経済の持続的な成長をけん引する若者たちが、世界に挑戦できる環境を確立していきたい」と、ビデオメッセージで意欲を語っていた。

Coursera=https://www.coursera.org/