7割の企業では、直近1年間に残業削減対策を取っていることが、総合人材サービス会社のパーソルキャリア(東京・千代田、瀬野尾裕社長)がまとめた「残業」に関する調査で明らかとなった。

7割の企業が残業削減対策を実施、20・30代の6割は残業の多さをきっかけに転職を検討

企業に対し、直近1年間に取った残業削減対策の有無を尋ねると、「取っている」と回答した企業は全体で70.2%に上った。業種別でみると「運輸・物流」が最も高い割合(78.8%)を示す結果となった。

さらに、「今後残業削減のための対策をとる予定がある及び検討している」と回答した企業も78.0%となり、対策内容は上位から「労働時間の可視化(63.4%)」「業務効率化のためのツール導入(50.7%)」「人員の確保(49.3%)」と続いた。

【残業削減のための対策内容トップ5】
労働時間の可視化 63.4%
業務効率化のためのツール導入 50.7%
人員の確保    49.3%
事前申請制の導入 43.7%
ノー残業デーの導入 43.7%

次に個人を対象に、時間外労働の割増賃金率の引き上げが始まった2023年4月を起点に、4月以前と以後(12月まで)の残業時間(月平均)を比較し、どのように変化したかを尋ねた。

結果からは、「変わらないと思う」の回答が最も多く68.6%となり、「減ったと思う」の回答は18.7%にとどまった。

具体的な残業時間では、2023年4月以前の平均は「14.8時間」、4月以降が「14.5時間」と差分は0.3時間減となった。

個人に対し残業をおこなう理由を聞くと、「業務が終わらないため(75.3%)」が2位を大きく引き離し最上位となった。20代~60代のどの年代においても7割以上が同様の回答をしている。

この結果についてパーソルキャリアでは「最新のdoda転職求人倍率レポートからも人材不足が読み取れる。そのため、一人あたりの業務負担が大きくなることで、残業が発生する構造がみてとれる」としており、「7割の企業が残業削減の対策を取っているにもかかわらず、残業時間にほぼ変化が見られない要因の一つ」と指摘する。

【残業をおこなう理由トップ5】
業務が終わらないため 75.3%
残業代を得るため   33.4%
より多くの成果を残すため 28.2%
部下のフォローのため 27.2%
上司からの指示があるため 26.4%

年代別に回答をみると、20代の「残業代を得るため」の回答割合は約半数(47.8%)となり、全体平均より約15ポイント高い結果となった。その他、残業する理由には年代によって変化がみられた

併せて、出勤前や退勤後、または休日など、申告をおこなっていない、または申告よりも長く働く「隠れ残業」の実態を確認した。

「隠れ残業」を行ったことがある個人は26.3%で、実施する理由は残業理由と近しい「労働時間と業務量があっていないため」が41.4%で最多だった。

また、年代ごとに確認すると、20代は「隠れ残業が職場の文化として習慣化しているため」、30代は「評価する風潮があるため」、40代は「残業の申請が面倒なため」といった理由が、全体平均より10ポイント以上高い結果を示した。

最後に、残業時間の多さをきっかけに転職を考えるか聞くと、55.5%が「考える(考える18.9%、やや考える36.6%)」と回答した。特に、20、30代で顕著となっており、20代(62.0%)、30代(計65.0%)と60%を超える結果が見られた。

【残業時間の多さをきっかけに転職を考えるか】
転職を考える 18.9%
やや転職を考える 36.6%
あまり転職を考えない 31.2%
転職を考えない 13.3%

転職を考える残業時間は、「40~60時間未満(12.9%」が一番多く、次いで「10~20時間未満(11.5%)」が並んだ。「10~20時間未満」は、平均残業時間「14.5時間」が含まれる回答分類となっている。

調査は、2023年12月28日~2024年1月5日、全国の従業員規模10人以上の企業ではたらく20~60歳代男女、会社員(正社員・契約社員)と全国の従業員規模10人以上の企業ではたらく20~60歳代の人事担当者を対象にインターネットで実施し、個人対象者1000人、企業の人事担当者500人を集計した。

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