東京油問屋市場・島田豪理事長
(画像=東京油問屋市場・島田豪理事長)

東京油問屋市場は12月13日、都内で大納会を開催した。

新型コロナの感染症分類5類への移行もあり、懇親会はコロナ前と同様、酒類や料理を提供する立食形式で開催した。島田豪理事長(島商社長)は、今年の新語・流行語大賞となった阪神タイガースの岡田彰布監督の「アレ(A.R.E.)」について触れた上で、「油業界はアレではなく、少しでも多くのキーワードを発信してきたい」と語った。

大納会では、喜田正道情報委員長(富田産業社長)が令和5年総括を行った。「油業界では2021年から7回の値上げがあり、2022年の夏に上がり切った。年明けから多少下がり気味な状況が続いたが、年末にかけては一定のところで横ばいになっているように思う。オリーブ油やごま油の値上げ、来年には物流の問題も起きてくる。油業界としては非常に厳しい状況が続くが、製販が協力し、価値に見合った価格でお互い利益を取りながら販売に臨んでいきたい」とした。

続く懇親会で島田理事長は、「1年を振り返ると、年頭ではまだ穀物原料が非常に厳しい状態だったが、その後は安定した1年だった。2~3年は価格改定の話が多かったが、ようやく今年はお客に向き合って、新商品の提案などができた落ち着いた1年だった。その他の油脂では油断はできない状況だが、早く安定し、油の価値を落ち着いて伝える時期が来るように祈っている」と述べた。

「今年は野球で盛り上がった。38年ぶりに日本一となった阪神タイガースを率いていた岡田監督が発していたアレという言葉は今年の流行語大賞に選ばれた。優勝というストレートな言葉を使わずに、アレという言葉で少しやわらかくして気を落ち着け、プレッシャーを与えずにチームを盛り上げていったという話を聞いている。私も50歳を過ぎてくると、アレという言葉を言うことが多くなった。商談の時にも、オリーブ油はアレが豊富、ごま油やオリーブ油は抽出ではなくアレ、MCTはアレをうまく抽出して体に良い効能がある、こめ油はアレが原料になっていると言っている。岡田監督は少し和らげるためにアレという言葉を使っていたが、油業界はアレではいけない。オレイン酸、圧搾、中鎖脂肪酸、国産といった少しでも多くのキーワードを発信し、来年は油脂にまつわる言葉が流行語に選ばれることを願っている」と語った。

〈コストアップ要因は継続、新たな時代の変化踏まえた実効性のある製販一体化を実現〉
来ひんとして、日本植物油協会の山口龍也会長代理(昭和産業取締役常務執行役員)があいさつを行った。

「植物油業界ではコロナ禍の3年、業務用中心に販売が低迷する中、世界の油脂原料価格は歴史的に高いレベルで推移し、厳しい状況に直面した。エネルギー価格の上昇、円安などのコストアップ要因は、物流費の上昇を含め今後も継続すると見られる。昨今の油脂業界は非常に厳しい環境だが、卸の皆さんを含む植物油に関する業界が一致して植物油脂を安全、安心、安定的に供給するという強い使命感と責任感のもと、その役割を果たす決意を内外に示すことが重要だ。流通を担う皆さんと、新たな時代の変化を踏まえた実効性のある製販の一体化を実現していくことが私達に与えられた使命だ。難局を乗り越ええるために、本日参集の皆さんが製販一体となって団結し、今年活躍した日本スポーツ界が示してくれたチーム一丸となって繋ぐ力、絆をより一層深めていくことが必要になると改めて感じている」と述べた。

乾杯あいさつは全国油脂販売業者連合会の館野洋一郎会長が行った。「今年の漢字には『税』が選ばれたが、いろいろな意味で『暑』が感じられた。日本気象協会のお天気トレンド大賞は『記録的猛暑』をはじめ暑に関わることが多く、世界気象機関によると、産業革命以来の最も暑い夏ということで、気温や海面水位の部分でこれまでの記録を塗り替え、地球沸騰化と当たり前に言われる年になった。メーカーの皆さんにとって、油糧原料の調達や油脂の安定供給にも影響すると思う。来年も地球温暖化、沸騰化だけでなく、さまざまな変化がある中、製販一体という言葉がおまじないでなく、実になるように進めていきたい」と述べた。

懇親後、東京油問屋市場の宇田川公喜副理事長(宇田川商店社長)が油締めを行った。

〈大豆油糧日報2023年12月15日付〉