ペットの家族化に寄り添う株式会社PETOKOTOが描く、未来のペット業界とは

今回は、フレッシュペットフードや保護犬猫マッチングサービスなどを展開する株式会社PETOKOTOの代表取締役 大久保 泰介さんにインタビューさせて頂きました。

本記事では、3つのサービスリリースに至った経緯、日本のペットや保護犬猫市場の現状と今後、そして株式会社PETOKOTOとしての展望について迫ってまいります!

ペットの家族化に寄り添う株式会社PETOKOTOが描く、未来のペット業界とは

大久保 泰介さんプロフィール

同志社大学経済学部卒。大学在学中にイギリスでサッカーをする傍らで
UNIQLO U.K.のマーケティング業務を担当。
日本の「良さ」を世界に発信し、展開することに魅力を感じ、2012年グリー株式会社に入社。
グローバル採用マーケティング、採用戦略設計、財務管理会計に従事。
肌で感じたITの可能性を通して、ペットライフを豊かにしたいと2015年3月PETOKOTOを起業。

―本日はよろしくお願いいたします!
お願いいたします!

サービスについて

―まずはじめにPETOKOTOさんが主に展開されている3つのサービスに関して簡単に教えてください。

私たちは、ミッションの「ペットを家族として愛せる世界へ」を軸に、フレッシュペットフードの「ぺトコトフーズ」、ペットについて正しい知識、情報を提供するペットライフメディアの「ペトコト メディア」、そして審査制の保護犬猫マッチングサイトの「OMUSUBI」を提供しています。

PETOKOTOホームページ:https://corp.petokoto.com/

―保護犬猫との出会いから食事まで幅広い事業で展開されていらっしゃるんですね!PETOKOTO設立までの経緯や、この3つの事業を立ち上げた背景はどういったものだったのでしょうか?

実は私は起業する3年前ぐらいまで犬猫がずっと苦手でした。
しかし、大学時代に留学先のロンドンで、イギリスと日本における犬猫との関係性に違いを感じました。
イギリスにももちろん当時の私と同じく動物が苦手な方がいる中、犬が人間と同じようにバスに一緒に乗っている光景が広がっていました。そういった状況が生まれているのは、イギリスに犬を命の1つとして受け入れられる土壌があるからなのだと感じました。子供やLGBTQ+の方々の多様性が認められている中にペットがいる環境が僕の中で新鮮だったんですね。

そこから日本に帰国後、当時お付き合いしていた彼女がトイプードルを飼っていたことがきっかけで徐々に犬を大好きになって、日本の犬猫殺処分の問題に注目するようになりました。大学卒業後はIT会社に就職したので、そこでデジタル化の可能性を感じました。
このふたつのきっかけから、ペット産業のデジタル化の改善と殺処分問題を解決するために起業を決意しました。

―元々犬猫に苦手意識があった中で、ペット産業に参入された経歴はすごく興味深いですね! サービス展開はどのように開始されましたか?

2015年に起業した当時は、ペットと家族間の思い出アプリ「HONEY」というサービスを展開していました。ただこちらは1年程でクローズして、まずはPETOKOTOと飼い主さんの接点を作りたいという思いで「ペトコト メディア」を2016年の5月にリリースしました。

そして、2016年11月に犬猫の殺処分を解決する一つの手段として、審査制のマッチングサイトの「OMUSUBI」を展開していきました。おかげさまで2020年頃までに両事業は国内有数の集客できるメディアやサイトに育ち、次のステップとして、収益化とペットのクオリティ・オブ・ライフのさらなる進化を目指して2020年からフレッシュペットフードの「ペトコトフーズ」の開発と販売を開始したという流れですね。

―ペトコト メディアが基盤となって色々と展開されてきたんですね。ペットライフメディア「ペトコト メディア」の特徴について詳しく教えていただけますか?

飼い主さんへ信頼できる情報を提供している点が特徴ですね。ペトコト メディアをリリースした当時はキュレーションメディアが非常に台頭していたので記事の信頼性、品質性に疑義が唱えられた時代でした。 特に犬猫の情報に関しては、正しい情報でないと飼い主さんが間違った健康管理をしてしまって、結果的に犬猫の幸せを阻害してしまうというリスクがあるんですね。
なので僕たちは信頼できる専門家と、信頼できる情報を届けるというところを信念に、獣医師やトリマーが記事を執筆して提供するというメディアを作ってきました。

―間違った情報で大切なペットの健康を阻害してしまうのは怖いですよね。よく読まれている記事はどういったジャンルが多いですか?

人気記事は、ペットと一緒に泊まれる宿特集や食材系ですね。特に、飼い主さんがペットが何か食べてしまった時に心配して検索し、犬猫のNG食材に関しての記事を読んでくださることが多い印象です。他にも、人間と同品質のごはんをあげたいという思いで検索される方も非常に多いので、そういった記事からペトコトフーズにたどり着くような方もたくさんいらっしゃいます。

参考記事:犬が食べていいものまとめ|野菜・果物・穀物・肉など効果や注意点を栄養管理士が解説【獣医師監修】 | ペトコト(PETOKOTO)

―ペット記事の先にペトコトフーズがあることで自然に購買にも繋がるのですね!ペトコトフーズは、普通のペットフードとは何が違うのでしょうか?

1番の特徴は、世界トップクラス獣医栄養学の専門医にレシピ開発を監修してもらっている点ですね。ペトコトフーズを作るとなった時に、弊社取締役兼獣医師の佐藤貴紀に相談したのですが、実は獣医師は学校や臨床でも動物の栄養学について専門的に学ぶ機会が少ないことを知りました。私が一緒に暮らしている愛犬コルクにも安心して食べさせたいという思いもあり、信頼できる先生を探そうということで、世界で90人ほどしかいない米国獣医栄養学専門医であるニック・ケイブ先生(ニュージーランド)にお願いすることになりました。

ペットの家族化に寄り添う株式会社PETOKOTOが描く、未来のペット業界とは
引用:PETOKOTO FOODS(https://foods.petokoto.com/)

―ご自身の愛犬への想いもあり、専門医と開発した安心安全なペットフードなのですね!続いて、OMUSUBIはどのようなマッチングサービスですか?

OMUSUBIは、様々な環境や事情から犬猫を保護していらっしゃる保護団体と、保護犬猫を家族として迎えたい方を結ぶマッチングサイトになっています。保護団体に関しては、方針や活動などを明確化するために、独自の審査を設けています。

特に犬の場合、日本ではペットショップから迎えるのがまだまだ主流なのですが、実はここ10年で保護団体から犬猫を迎える方が非常に増えてきています。
ただ犬猫は約300種類もいるので、私たちが犬猫の未来のご家族に向けて
「迎える前から、それぞれの犬猫の生い立ちや性格、相性、かかる費用などを理解してもらいたい」
と伝えても、やはり300種類もいればかなり難しいというのが現実だと思っています。

そこで犬猫の種類や、飼い主さん自身のライフスタイルの質問に答えると、犬猫との相性度を教えてくれるマッチングアルゴリズムをトレーナーと一緒に開発しました。

例えば、当初は猫を迎えたいと思っていた方が、週末にキャンプに行くのが趣味というケースでは活発で運動能力が高い特性を持つジャックラッセルテリアをマッチングしたりします。蓄積されたデータを通して犬猫との出会いを繋げているというのが、OMUSUBIの特徴になっていますね。

ペットの家族化に寄り添う株式会社PETOKOTOが描く、未来のペット業界とは
引用:OMUSUBI(https://omusubi-pet.com/)

また、売上の一部をきちんと還元していくことも私たちの理念ですので、ペトコトフーズの売上の数%をOMUSUBIに登録されている保護団体に寄付しています。ペトコトフーズを購入していただくことで、結果的に保護犬猫にも良質なごはんを届けられて、さらにOMUSUBIを通して新しい家族との出会いに繋がっていくような循環が生まれています。

市場やトレンドについて

―保護犬猫を救うだけでなく、多くの保護団体さんも支援する面でもOMUSUBIが役立っているんですね!コロナ禍ではペットを飼う方が増えた印象がありますが、サービスの需要にどういった影響がありましたか?

コロナ禍で孤独を感じた方が心の癒しとして犬猫を迎えたり、リモートワーク等によって犬猫を迎える環境が整った方が非常に増えて、その期間はOMUSUBIへのアクセス数や応募数も約2〜3倍ほどになっていました。ただとても残念ですが、手放す方もとても多く、犬猫が保護された数も非常に多かったと記憶しています。迎えられ助かる命が増える一方、放棄されてしまう命も増えてしまったのはとても不健全で、課題が現れた期間だったと思っています。

OMUSUBI以外ですと、ペトコトフーズの売上が急成長していったので、やはりコロナはペット市場としても大きな出来事でしたね。

―サービスへの需要が伸びた部分もありながら、犬猫の放棄数にも変化があったんですね…コロナが落ち着いてきている今、大久保さんはペットテック市場がどう変化していくとお考えですか?PETOKOTOさんの強みについても教えてください。

ペット市場の状況をもう少しお伝えすると、コロナ後のペットの飼育頭数自体は減少停滞トレンドなんですが、年間のペット関連支出額は非常に増えているんですね。
これは10年前からのペットを飼育する環境の変化が関係していて、室内飼いの方が40%だったのが、現在は90〜95%まで増えているので、ペットがより家族として認識されてきています。

アメリカのような先進国では、同じようにペットの家族化のトレンドが起きていて、これが進むことによってペット市場が拡大しています。人間と同じようにペットに対する健康意識が高まって、質の良いごはんをあげたり、予防で健康診断に連れていく方、そしてペットと常に一緒にいたいので、旅行の時はペットホテルに預けるのではなくペット宿泊可の宿を選択するなど。こういった需要からペットの宿・公共交通機関などのサービスはすごく拡大しています。

ですのでペットによって生まれる家族化市場は非常に大きくて、住宅・葬儀・リフォーム・旅行などの様々な人間の生活空間でペットという存在が多くなってきている状況です。ここが僕らが取りに行きたい市場になりますね。

ペットテックの盛り上がりに関しても、やはりテクノロジーの活用で、より家族である犬猫のことを理解したい方が非常に増えている傾向があると思います。

僕らの今後の独自性は、ペットを迎えてから食事含め最期まですべてに寄り添うという事業戦略を持っていますので、蓄積されたデータを通してパーソナライズに情報や商品を届けていきたいと考えています。
そして、OMUSUBIのような営利性があまりないサービスをやっているのも特徴なので、本当にペットの未来・ペットライフを作るという点が1番のブランドの差別化になっているんじゃないかなと思っています。

ペットの家族化に寄り添う株式会社PETOKOTOが描く、未来のペット業界とは

業務資本提携と今後の展望

―様々な場面でPETOKOTOさんのサービスを使うことで、今後パーソナライズされたサービスにアップデートされていくんですね。2023年の3月にJR東日本スタートアップと業務資本提携をされましたが、これから旅行分野にも進出していきたいとお考えなんでしょうか?

そうですね。実際に、昨年の春にJR東日本スタートアップ社と一緒に日本で初めてペット専用新幹線の実証実験をしました。上野から軽井沢まで、ペットをケージの中ではなく膝の上に抱っこして新幹線で移動をして、ペットと泊まれる宿に行けるパッケージを提案しました。通常料金よりも高くはなったのですが、かなり需要があったので、事業的にも今後も可能性があるのではないかと考えています。
大企業であるJR社と組むことによって、駅や街そのものを、ペットを家族として一緒に暮らせるような空間に作り上げることができ、社会的変革をもたらすことができると思っています。

―ペットと一緒に旅行するような、人間と同じ体験に対しての需要はこれからも伸びていきそうですね。ペットと泊まれる宿泊施設やツーリズムに関して海外と比べると日本の立ち位置はまだまだなのでしょうか?

宿泊施設に関しては、日本も拡大してきていますね。コロナ禍でインバウンドの停滞もあり、今まで通常はペットNGとしていた施設がペットも泊まれる環境に変化したケースも多かったですね。
ただ、宿泊施設に比べると小売店などの店舗に気軽にペットを連れて行けるかというと、まだ課題はありますね。そういったところでペットと暮らしやすい空間を作っていくことをコンサルのような形で、サポートできればいいなと考えています。

実際、今年の9月には兵庫・芦屋と東京・六本木で展開されている「グランドフードホール」でのペトコトフーズの販売開始にあわせて、店内へのペット同伴入店の提案をさせていただきました。様々な知見を共有させていただく中で、私たちが大事にしていることの1つである「輪の外を想像しよう」を常に意識しました。私自身がもともと犬猫に対して苦手意識があったからこそ、動物が苦手な方の気持ちに寄り添えると思っています。 なので、ペットを家族として愛せる世界を作るために、苦手な方やアレルギーをお持ちの方の気持ちにも配慮された空間設計や情報設計を心がけています。

―動物が苦手な方々のことも同時に考えることで、共存できる環境が拡大していくのだと思いました。資金調達では今年の5月にシリーズB1stクローズを実施後、累計調達額が15億円を突破されましたが、今後挑戦していきたいことがあれば教えてください。

今回投資してくださったT&Dイノベーション投資事業有限責任組合の傘下には太陽生命社があるので、保険分野でペットとの暮らしを豊かにしていきたいなと考えています。直接的なペット保険や、最近だと高齢の飼い主さんが先に亡くなってしまった場合に、ペットの後見人に信託という形でペットの世話代や飼育施設を遺すといったこともあるんですよね。そういった保険や金融商品などペット関連の未知数な市場がたくさんあるので、積極的にパートナーシップを組んで、長いスパンで挑戦していきたいと思っています。

一方で、僕たちはペットのヘルスケアという領域で拡大していきたいので、まずはそのフェーズゼロとしてフレッシュペットフードに集中してきましたが、今後は予防医療や薬なども展開してしていきたいですね。

―未知数のペット市場がどう発展していくのか注目ですね。では最後に、大久保さんが将来叶えたい構想があれば伺いたいです。

今はまだ保護犬猫に出会う場が充分でないということにも課題を感じています。僕が好きなハワイには「Hawaiian Humane Society」という保護施設があって、犬猫に会いたい老若男女が集まるんです。いろんな方がそこに集まってくるので、犬猫を介して人と人のコミュニティが生まれていて、そこが僕の理想郷になっています。動物園に命を見に行くのではなく、そういったところに見に行くような形を僕は日本でも実現したいなと思っています。リソースや時間がかかることだとしても、将来的にPETOKOTOでチャレンジしていくのが今後の構想です。

―取材を通して大久保さんの動物に対する優しさと熱い気持ちが伝わってきました。日本の保護犬猫への関わり方や、ペットとの関係性がPETOKOTOさんのサービスを通じてこれから変わっていくのが楽しみです!本日はありがとうございました! 

[会社概要]
【会社名】株式会社PETOKOTO
【URL】https://corp.petokoto.com/ 
【設立年月】2015年3月
【代表者】代表取締役社長 大久保 泰介
【所在地】〒160-0003 東京都新宿区四谷本塩町2-8 WEEK四谷 4SE/4