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「エネルギーをもっと身近に、もっとクリーンに」。そんなキャッチコピーをホームページ冒頭に掲げた株式会社K LINEは、群馬県渋川市に本社を置いて、主に群馬県下の水力発電所や変電所の点検工事や、設備の据付・改造・修繕工事などを行っている建設工事会社だ。東京電力で発変電所の維持管理に携わってきた越田圭一代表取締役社長が2015年に独立して起業した。(TOP画像:K LINEのホームページ)
企業の成長を感じさせるホームページやインスタグラムで活動内容を紹介
「最初は、自分と両親、年下の従業員の4人だけで電気と土木関連の事業を始めました」(越田社長)。第3種電気主任技術者、1級電気施工管理技士や1級土木・1級建設機械施工管理技士といった資格を取得し、20代の若い人たちを誘って従業員を増やし、今では11人ほどが現場を回って、電力という生活に欠かせないインフラの整備に関わる仕事をしている。その活動内容は、インスタグラムにアップされた画像によって知ることができる。変電所を見上げる人、発電所にある配電盤を操作する人、ショベルカーを操縦する人、関わっている従業員の様子から、ランチで食べたラーメンのメニューまで様々な情報を発信して、会社への興味を誘っている。
「やはり若い人にはインスタグラムの方が見てもらえますから」(越田社長)。インスタグラムの画像はホームページからも見ることができる。ホームページ自体もスタイリッシュなデザインとなっていて、事業内容からSDGsに対する考え方、採用の方針まで広く知ってもらえるようにしている。若い会社ならではの情報発信に関する柔軟な考え方が、建設工事業といった重いイメージを持たれがちな業種にあって、フレッシュさを感じさせるインターネットやSNSの活用につながった。
電力会社という大企業が取引先となり、また電力というインフラに関わる仕事が中心となっているため、起業してから今まで安定して収益を確保できている。今後についても、「これから5年ほど先まで、水力発電所の改修計画があって仕事が見込めます。ただ、繁忙期と閑散期に分かれるため、そうしたギャップをどのようにやりくりしていくかを考える必要があります」(越田社長)。
太陽光発電の施工やメンテナンスに進出。太陽光発電設備の設定はパソコン接続で行うためセキュリティの強化が必要
そこで同社が取り組み始めたのが、太陽光発電の稼働に関わる仕事だ。2011年に東日本大震災が発生して、電力の危機が言われた中で自然エネルギーへの関心が高まった。政府も推進を後押ししたことで、全国各地に風力や太陽光による発電施設が増えていった。同社はこのうち太陽光発電の分野で、設置された発電設備が動くようにするためのシステムのセッティング作業を請け負っている。
ここで使われるのがパソコンだ。「太陽光発電設備の設定は接続したパソコンから行う必要があります。その際に、ネットに接続してデータを確認することもあります」(越田社長)。外部から本社にあるデータを確認する場合もあって、セキュリティの確保が常々気になっていた。当初はウイルス対策ソフトで対応していたが、より厳密に安全性を確保するためにUTM(統合脅威管理)の仕組みを取り入れて、従業員以外が会社のサーバにアクセスできないようにしたり、危険なウイルスが入り込まないようにした。
セキュリティを強化しウイルスの不安をなくす。事後対策ではなく事前対策を強化
「ウイルス付きのメールが来ても、開かないように厳命しておけば良いだけなのかもしれませんが、それでもやはり開けてしまうようなことが起こります」(越田社長)。そうしたヒューマンエラーが避けられないなら、それ自体が起こらないような状況を作っておけば良い。セキュリティの基本だと言える。ましてや同社は、電力という大切な社会インフラに関わっている会社だ。「こちらから送ったメールがウイルスに感染していたら、相手は大企業ですから被害が大きくならないとは限りません」(越田社長)。先手を打って不安を解消しておけば、信頼も確保されて受注の継続につながる。
図面上の数百本の配線の確認が必要なため紙を使用するが、管理は電子データで行う
日頃からパソコンやタブレットを活用しているだけに、工事や作業の現場で図面などを参照するのにも使えそうだが、そこは今も紙の図面を広げて使うことが多いという。「とにかくチェックする場所が多いんです。配電盤の制御線など何百本もあって、それらを1本1本チェックしていく必要があります。作業が済んだところからチェックをつけていくとなると、タブレットでは難しいところがあります」(越田社長)
その一方で、「データ自体はCADで作成したり、取引先から電子データで送られてきたりしているので、すべて電子化されています」(越田社長)。デジタルを活用してペーパーレス化する部分と、作業効率を考えてアナログを生かす部分をしっかりと使い分けることで、より効率的な業務の遂行につなげている。
クラウド会計ソフトを使い、数ヶ月にわたる工事中の資金管理をリアルタイムに可視化
業務管理に関しては、クラウド会計ソフトを導入して、リアルタイムに資金状況が確認できるようにした。「工事期間が2ヶ月、3ヶ月と長くなるところが多く、完了した時に初めて売上となって計上されますが、それまでは支払だけが先に出ていくため、どこかで資金を調達する必要が出てきます」(越田社長)。これまでは、状況を見ながらそろそろ資金調達が必要だろうといった勘を働かせていた。事業が拡大してきた状況で、より厳密な把握が必要となったこと、電子帳簿保存法の改正で電子帳票に対応する必要があったことなどから、ITに関する補助金を活用してクラウド会計ソフトに切り替えた。
電力関係が安定した収入源になっているものの、そこにばかり頼っていては発展がない。そこで同社では、今後も拡大ができる太陽光発電に関する事業を、引き続き強化していこうとしている。「今も岐阜で太陽光発電事業を営んでいる会社から今後の工事依頼の声をかけていただいています。千葉の方でも結構な数の建設予定があるようで、そちらからの引き合いも期待できます」(越田社長)
従来からある発電所のメンテナンスとは違って、こちらは全国が事業の舞台となる。派遣できる従業員にも限りがあるため、社外に信頼できるパートナーを得て、外注していくことも検討中だ。基本となる太陽光発電施設を稼働させる技術やノウハウについては、これまで蓄積してきたものが十分にある。それを活用することで、自分たちでは手の回らない地域にも展開ができる。
太陽光発電事業の強化や福祉事業への進出を検討
さらに、「新規事業への進出も検討していかなくてはいけないと思っています」(越田社長)。そのひとつとして挙げるのが「福祉関係です」(越田社長)。福祉といっても老人ホームの運営のような高齢者福祉を始め様々な事業分野があるが、同社が考えているのは「障がい者支援の分野」(越田社長)とのこと。場所も群馬県に限っておらず、ニーズのある地域へと出て行って事業を興す考えだ。
「福祉関係の事業を営んでおられる方と話す機会があって、そうした分野が非常に求められている。入所を希望する人がいても施設の絶対数が少ないと聞きました」(越田社長)。それなら自分たちでやってみようと考えた。これまでのつながりを生かせるとは限らず、地縁もない場所での起業は大変だが、高まるニーズに対応したいという気持ちと、事業を大きくしたいという意気込みをバネに進んでいく。
K LINEという社名は、越田社長の「圭一」という名前を表したもので、建設に関わる言葉は入っていない。当時から何でも展開していける可能性を持たせようとしていたとも言える。進取の気風は、普段の作業場所にも表れている。パソコンのモニターの上にはWebカメラが取り付けられていて、いつでもオンラインでの打ち合わせができるようになっている。
「Web会議の設備は、これまではお客様との打ち合わせや、税理士の先生やコンサルタント会社の話を聞いたりといったことに使ってきました」(越田社長)。渋川市という群馬県でもやや山側に奥まった地域に本社を置きながらも、都心部や他県にいる人たちと話せるメリットを生かして、事業や業務のスピーディーな判断につなげていると言えそうだ。
分社化して効率的に事業運営
創業から8年で、まだ43歳と若いこともあって、何にでもチャレンジしていく姿勢は強い。「福祉のような新しい事業に参入するだけでなく、いくつか子会社を作って、電気工事や土木工事といった部門を担当してもらうことも考えています」(越田社長)とビジョンを示す。「1社で10億円の売上をあげる会社にするのは大変でも、1社で1億円の売上の会社を10社作っていくことならできそうだと思っています」(越田社長)
これから伸びていきそうな事業にしっかりと目を向け、いち早く取り組むことによって技術やノウハウを吸収し、次の展開へとつなげていく。中小企業が変化していく時代の中で生き残っていく上で、何が必要かを教えてくれている。
企業概要
会社名 | 株式会社K LINE |
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所在地 | 群馬県渋川市金井174-2 |
HP | https://kk-kline.co.jp/ |
電話 | 0279-26-3882 |
設立 | 2015年8月 |
従業員数 | 13人 |
事業内容 | 土木一式工事/とび、土工工事/電気工事/石工事/鋼構造物工事/ほ装工事/しゅんせつ工事/水道設備工事/消防施設工事 |