全日本マーガリン協会の食用加工油脂技術研究会はこのほど、大阪市内で第128回研究会を開き、3つの演題で講演が行われた。
開催に先立ち、同協会の早野敏業務執行理事は「当研究会は1972年に発足し、コロナ禍で2年間休んだが、今回で128回になる。タイムリーなテーマを選んで実施してきた。講演者は累計で約300人、聴講者は7,000人強に達する。今回も興味深いテーマを選択した。有意義な講演会にしてほしい」とあいさつした。
講演一では、約5年前から食用昆虫の油脂の可能性を研究している北里大学獣医学部動物資源科学科准教授の落合優氏が「代替『油脂』としての食用昆虫の可能性と応用に向けての課題」をテーマに講演した。
落合氏は、世界人口の急増に伴って生じる食糧供給問題の解決策として食用昆虫の利用が提案されており、現在のところ「食用昆虫≒代替たん白質資源」との見方が国内外で強いと説明した。その上で、機能性油脂や食物繊維も含有されるため、脂質代謝を改善できる代替『油脂』としても期待できるとした。機能性油脂資源としての食用昆虫(トノサマバッタ)の可能性を示す研究例を紹介し、昆虫油脂を食糧利用するために解決すべき課題を提案した。
その中で、日本国内で昆虫食を普及させるための課題にも触れ、「昆虫を食にすることに対する嫌悪感」、「安全性(アレルギー成分を含む)の確証」、「新規食としての認証・法整備」、「機能性成分の同定と安定性」、「昆虫食に関する教育」、「持続可能な昆虫の生産と昆虫食開発」などを挙げた。
演題2では、アルガルバイオ取締役CSOの竹下毅氏が「微細藻類による有用物質生産の可能性について」、演題3では、カゴメ健康事業部シニアスペシャリストの菅沼大行氏が「カロテノイド研究のモノおよびコトビジネスへの応用」をテーマに講演した。
〈大豆油糧日報2023年11月24日付〉