プロ向けの市場「TOKYO PRO Market」
ここまで一般市場におけるIPOについてご紹介してきましたが、最後に2009年に設立された、東京証券取引所が運営する株式市場の1つをご紹介します。
プライムやスタンダードなどの一般市場に比べ、多様性を認めた株式市場として多くの企業の新たな選択肢として現在注目されているのが「TOKYO PRO Market(東京プロマーケット、以下TPM)」です。TPMの主な特徴は次の4つです。
プロ投資家向け市場である
他の一般市場と異なる一番の特徴は、TPMで株式を購入できるのは株式投資の知識や経験が豊富な”プロの投資家(特定投資家)“のみである点です。(※売却は一般投資家も可能) プロの投資家とは金融機関などの適格機関投資家、国、日本銀行、もしくは上場企業、資本金5億円以上の株式会社などを指します。
より柔軟な上場基準である
上述のようにプロの投資家しか参加できないため、多くの人々が参加する一般市場に比べて柔軟な上場基準(制度設計)となっており、その結果として、スピーディーかつコスト負担を軽減した上場、オーナーシップを維持したままでの上場が可能となります。
TPM | 一般市場 | |
---|---|---|
上場基準 | 【形式基準】なし 【実質基準】あり |
【形式基準】あり※ (※株主数、流通株式等) 【実質基準】あり |
審査実施主体 | J-Adviser | 主幹事証券会社+東証 |
監査証明 | 最近1年間 | 最近2年間 |
内部統制報告書 | 任意 | 必須 |
四半期開示 | 任意 | 必須 |
※東京証券取引所ホームページをもとに作成
TPMには、売上や利益の額、株主数、流通時価総額といった形式基準(数値基準)はありません。そのため、株価や業況に左右されずに上場することができます。「本当に上場に相応しい会社か?」という実質基準(=上場適格性要件)を満たしていれば上場できるのです。この実質基準は「市場の評価を害さないか」「公正かつ忠実な事業か」「コーポレート・ガバナンス体制は整っているか」「企業情報や適切な情報開示ができているか」「反社会的勢力はきちんと排除されているか」といった5つの要素で構成されていますが、これらは多少の程度の違いはあるものの、基本的には一般市場への上場に求められるものと何ら変わるものではありません。なお、TPMでは後述する「J-Adviser」がこの実質基準を満たしているどうかを審査します。
一般市場と変わらない上場効果が期待できる
上場すると多くの人の目に触れる機会が増え、会社の知名度や認知度が高まります。監査法人の監査や上場基準をクリアしているため信用力も高まります。その他にも、資金調達、組織力の強化や従業員の士気の向上など、一般市場と同様の上場の効果(メリット)を得ることができる、それがTPMの大きな魅力になっています。
独自のアドバイザー制度を設けている
TPMは「J-Adviser制度」を設けていることも特徴の一つです。J-Adviserとは、東京証券取引所が「企業の経営支援の経験や上場に関わる深い知見を有する」と認めた企業に対して付与する資格です。
上場前には上場適格性の調査や確認を、上場後にはモニタリングや開示サポートまで、J-Adviserが継続的に助言や指導のサポートを行います。J-Adviserと上場準備会社がしっかり連携がとることで、スムーズに上場準備が進み、スピーディーかつコスト負担を軽減した上場を実現できます。
現在J-Adviserは、全国で16社認定されており、日本M&Aセンターもそのうちの1社に含まれます(2023年11月現在)。TPMに上場するためには、J-Adviserを選定して契約することが求められるため、自社に最適なJ-Adviserを選ぶことが重要です。
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TOKYO PRO Market担当者に聞くTPMの魅力とは
TPMの概要について解説動画も合わせてご覧ください。