「姿勢を正すことが人生を変える」ピラティスで得られる心身のバランス

ピラティスワールドへようこそ!ピラティス・トレーナーの青柳輝美(あおやぎてるみ)です。ピラティスで学べることは、単なるトレーニングを超えた「生きる知恵」です。正しい姿勢をとることで、内側から輝く自己実現へとつながります。本コラムをきっかけとして、身体のバランス、心との調和を得られるピラティスの世界に足を踏み入れてみませんか。

良い姿勢とはどんなもの?

「姿勢を正すことが人生を変える」ピラティスで得られる心身のバランス

「成功している人とはどんな人ですか?」

私は成功している人にこそこの質問をしてみます。ワクセルの編集長さんもそのお一人です。即座にお答えが返って来ました。実践している人の言葉ですので説得力があります。

・常に学び続けている
・謙虚に人の言葉に耳を傾ける

人は何かがうまくいくとそこで終わるか、さらなる学びを受け入れ挑戦を続けます。これはピラティスや腹筋をする人と同じです。”本気で取り組んでみる、続ける” これなくしては成りたちません。

「簡単〇〇ダイエット!」
「これさえすればうまく行く」

そういう広告があとを絶ちませんが、成功者は手を出しません。今の世の中「無理をしない」という考えがあり、両者の差をつくっているような気がします。

うちに来るエリートHさんは「山だ!と思ったら、腰が重くならないうちにとっとと駆け上がるのよ!」と言います。私がなぜこういう人たちに関心があるかというと、彼らこそがピラティス脳の見本だからです。

私はクライアントには「最高のイメージを持ってなりきれ!」と言います。大統領や女王様など世界の頂点に立つ人たちは、良い姿勢をしているからです。

では良い姿勢とはどんなものでしょう。

「耳、肩、腰、膝、くるぶしを一直線に保つこと」ですが、これを自己評価するのは難しいです。

鏡を見ずに感覚でつかんでみましょう。肩を針金のハンガーのように横に広げ、フックの位置に頭を置きます。頭の頂点と肛門まで身体の中に管を通すようにして地面に垂直に立てます。

座るときも同じようにします。すると顎は引き締まり首の後ろ側は、上に伸び上がる感覚になります。姿勢が崩れると、顎が出て背面が横に広がります。

私はピラティスを学び始めたとき、伸び上がる感覚を大事にしていませんでした。体の中心から動かすと教えられ、前屈をするときは思いきり背中を広げて腕を前に伸ばしました。

しかしそれは背中の皮膚を横に引っ張っているにすぎず、態勢は美しくないと.気付いたのです。伸ばしたくなる部位こそ縮めるべきで、良い姿勢でいるときは背中が縦方向に伸び上がるのです。

それからは「凝った部分はストレッチをするな!」と言うようになりました。これを実行した人は皆腰痛や肩こりがなくなり「マッサージに行かなくなった」と言います。

ピラティスは心身の“エコ”

「姿勢を正すことが人生を変える」ピラティスで得られる心身のバランス

ヨガでは、身体の中を流れるエネルギーの関所を“チャクラ”と呼びますが、ピラティスでも同じ場所を意識するのをご存じでしょうか。このポイントをピラティスでは“ボタン”と言います。

一番下のボタンがはまると、身体の土台が安定するのが感じられます。足や背中のバランスが整い神経が正常に働きます。食欲・性欲など本能的な感覚も安定し、地に足をつけた安定感が得られます。

ボタンごとに役目が異なりますがこの学びから得られるものは感慨深いものがあります。チャクラが整っていないと体型は崩れ、臓器の故障や腰痛、坐骨神経などの痛みをつくります。

私は首と腰に重度のヘルニアを持ち坐骨神経痛を患っていましたが、病院はもちろん、整体に通い続けて何十万円も使い、その結果治りませんでした。誤解のないように言いますが、整体師さん達はそれぞれの領域で助けてくれました。彼ら無くしては今の私にたどり着けませんでしたので心から感謝しています。

身体は全身がつながっています。一カ所整えても悪い方に戻ってしまいます。骨を整えても筋肉がねじれていたら戻り、筋肉を整えても骨がねじれていれば戻ります。温めてマッサージで筋肉を緩めてもねじれはなかなかとれません。

自転車のチェーンは正しく整列した歯車にしか噛み合わないのです。油を挿したところでまた不具合が生じるのです。

ピラティス氏はそういった身体の原理原則を研究し、鍵となるチャクラポイントを独学で習得しました。このポイントを踏まえたピラティスで、何度も筋肉と骨の正しい使い方を体にインプットしていきます。

エクササイズに組み込まれた脳神経学的な働きで、やがて心身の正しい状況を脳が把握できるようになります。身体が整うと精神も安定します。心身両方の癖を外すので、ピラティスは詰まるところ心身の”エコ”なのだと気づきます。

私はハワイ大学で解剖学を学び、整体技術を習得して本当に良かったと思っています。出会った事柄は皆つながっている、と実感しています。

私の行うボディメンテナンスは筋肉と骨の向きをそろえることが焦点となり、整列した両者どう動かしたら良いのか、どう動くとマズいのかをクライアントに感覚でつかめるようエクササイズで伝えていくのが私の使命でもあり、生きがいとなりました。

痛みは脳がつくる

「姿勢を正すことが人生を変える」ピラティスで得られる心身のバランス

「痛みは脳がつくる」という話を聞いたことがあるでしょうか。身体は不調や危険への警告で痛みを起こします。一旦痛みを学習すると、こうすると痛い、といった条件反応が生まれますが、常習的な痛みは、心理学的な要素により引き起こされることもあると証明されています。

「本当はない痛みを感じる」というのです。そうは言っても痛いものは痛いですよね。私もヘルニアの痛みに長い間耐え続けてきたのでピンと来ませんでしたが、それをセッション中に目の当たりにしました。

クライアントのRさんには肩の痛みがあり腕が上がりません。ボディメンテナンスの度に多忙な彼は眠ってしまいました。上がらないはずの腕が上がり、起きた途端にまた上がらなくなる状況が続いたので、ある日私はその様子を撮影しても良いかと尋ねました。了承を得たので画像を撮って見せました。

Rさんはその映像を見てとても驚きました。私が彼の腕を高く持ち上げて「こうすると痛いかな?」と聞くと夢うつつに「痛くないです」と答えているのです。しかし彼はまったく記憶がなかったのです。

私はこう説明しました。

「痛みは苦しみです。辛さ、悲しさと同じ側にあります。我慢や忍耐、不安、頑張り、重圧や怒り、恥や嫉妬などの感情も同じです。そういう感情が脳の警報装置を駆動させて慢性的な痛みを誘発させることがあるのです」

すると彼は「思い当たる節がある」と言いました。

「僕は時々ものすごく怒る。異常なくらい妻に怒ってしまいます。ほんとうに、妻には申し訳なく思っている」

私はRさんの表情が曇る様子を一度も見たことがありません。もちろんトレーナーとクライアントという関係性では普段の様子は見ることはありませんが、寛容でおおらかなうえ、よく冗談を言って私を笑わせます。

それどころかしょっちゅう奥様の話をします。出会った頃の思い出話から2人で出かけた話、素晴らしいプレゼントの話など、愛情に溢れています。彼女に出会えてラッキーだったと常に言い、愚痴は言いません。

彼は会社を経営していくうえで、他人に出せない苦しみや重圧感を、奥様に吐き出したのです。本心は奥様への不満ではなかったのです。

経験は消えませんが、怒ってしまった自分を「そのときはそうだったんだ」と許してあげるよう勧めました。驚くべきことに、それからはRさんの肩の痛みは完全に消えました。私も古い経験から来る感情を手放すことができ、痛みから解放されたのです。

“問題”と“感情”を区別する

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ピラティス脳のちょっと変わった問題解決法をご紹介します。うちに来るMさんは仕事で成功をしている人ですが、へこんだときは思い切り落ち込んで“おく”と言います。“おく”というMさんの表現が私は好きです。

「落ち込んでしばらくすると、私は何をやっているのだろう!とハッとして、立ち上がれるのです」と彼女は言います。

私もやってみました(笑) 途方もなく難解な案件がやってきたとき、「困ったな」という気持ちに浸ってみました。やるとわかるのですが、ひとつのフィーリング(feeling)に集中するのは疲れます。私は少し横になることにしました。

するとです…これはちょっと神がかったことなので話を半分に聞いていただきたいのですが、寝入り端にその案件に関わる人が枕元に出てきたのです。その人は優しい顔で私に説明をしました。「これをあなたにしてほしい、という私の意思です。心配しないでそれに取り掛ってください」

私はベッドから飛び起きました。何十年も前に亡くなって忘れていた人が出てきだからです。ひとまず落ち着こうと顔を洗いお茶を飲むことにしました。不思議なことにお茶を飲む頃には、もしその人に言われたらやれるだろうと思えたのです。おかげでその後迷うことなくその案件に取り組むことができました。

冷静に問題を解決するには、感情が邪魔をするとうまくいきません。起きた”問題”と”感情”(気持ち・心の状態)を区別することが大事です。ピラティスから脱線した話のようですがこれを区別する訓練ができます。

たとえばピラティスで、床から起き上がれなかったとします。がっかりした”感情”は横に置いておいて、起き上がるにはどうすれば良いか”問題”だけを考えれば良いのですが、起き上がることに執着すると「首の力を抜いて呼吸を止めない」というアドバイスが耳に入らなくなります。

その結果、息を止めて無理やり起きあがろうとします。おまけに「難しいな」「自分にはハードルが高いぞ」という感情の重いアクセサリーをたくさんつけてしまいます。虹を無心に見上げるようにただ集中することは、余計な考えを取り外す訓練にもなり、精神の再構築を可能にさせるのです。

ピラティス氏が言う「マインド・スピリット・ボディ」が整うと、人は本当の健康をつかむ、というのもうなずけます。

マインドとスピリット、この2点が健康の領域の2/3を担うのですが、体力がなければ健康な考えは出てきませんね。この3つは常に向き合いバランスをとっています。健全な心と体をつくって幸せの女神を呼び込みましょう!