台湾で25年間整体に取り組んできた治療家が語る「集客するうえで大事なポイント」

大学卒業後に台湾に渡り中医学、鍼灸、推拿、気功を学び『美楽健康中心』を立ち上げた難波鉄也さん。久しぶりに日本に帰国した際に目の当たりにした台湾ブームに驚いたそうです。第3弾となる今回のコラムでは、ビジネスをするうえで、また個人として成長や発展をするうえで、場所や環境の選択がいかに大事かを語っています。

集客するうえで最も重要な要素

台湾で25年間整体に取り組んできた治療家が語る「集客するうえで大事なポイント」

私は台湾で長年にわたって整体とマッサージの店を経営してきました。また日本で施術活動やセミナーもたくさん展開してきました。店の経営や施術、セミナーはどれも集客で成り立つものですが、私は集客で困ったことがありません。

それは私が店の経営術に長けていたからでも、天才的な施術技術を持っていたからでもありません。店の経営方法や、施術家向けの集客やマーケティング術を教えるセミナーがありますが、私は参加したことも勉強したこともありません。それでも店も私も集客に困らなかったのは、一にも二にも場所が良かったからなのです。

経営について、私は本当に何も知らず、興味もありませんでした。「店はお客さんがたくさん来てくれたら潰れることはないだろう」程度にしか考えておらず、店の売上も受付スタッフや会計事務所に任せきりで私自身は把握していないくらいいいかげんでした。

もともとの出発点は、「施術家として社会の役に立ちたい!」ということだったので、店が潰れたら自分一人で施術すれば良いのだから、「店は正直どうなってもいいや」とさえ思っていたのです。

施術技術に関しては、今では少しはマシになったと思いますが、20代半ばで施術活動をスタートした当時は恐ろしいほど未熟でした。それでも始めるとすぐに予約がずっと先まで埋まっていったのです。

台北のマッサージ激戦区で黒字経営を続けられた理由

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もう少し具体的に、店部分と個人部分に分けて書きましょう。

私は台北の中心地で整体&マッサージの店を25年にわたって経営していました。整体は私が担当、マッサージは台湾人スタッフが担当していました。

最初は無謀にもマッサージスタッフ8人、受付2人を雇ってしまい、オープンしてみると私指名のお客さんばかりだったので店としては赤字でしたが、2年目以降は台湾にSARSが蔓延した2003 年に半年間店を閉めた時を除いてずっと黒字でした。

どんな店だったかというと、日本であればどこにでもあるような普通の店です。メニューは私がする整体以外は、全身マッサージと足裏マッサージだけで、料金も25年ずっと同じでした。

店があった場所は、台北でもマッサージ店の最大激戦区とよばれていた地域です。周囲では多くの同業者が、次々に流行や多彩なメニューを取り入れた店を出しては集客がままならず撤退していきましたが、なんの工夫もない私の店はずっと安泰でした。

どうしてかと言うと、日本人が経営している店は私の店だけだったからです。信用は大事にしていましたが、それだけを守っていれば、日本人経営店というだけで、小さな店なのにガイドブックやホテルが紹介してくれるし、クレジットカード会社や航空会社も提携オファーしてきてくれるので、広告も必要ありませんでした。

私個人は、お客さんに対して期待に応えるべく施術研究はずっと続けてきましたが、そんなことは大多数の同業者もやっている当たり前のことです。私が他の人と違ったのは、私はその場所で常に唯一の存在だったことでしょう。

それを狙ってやってきたわけではないのですが、周りに同じような人がいませんでした。台湾で中医学や気功の勉強をしている時は、台湾にそんなに日本人はいなかったので、業界のトップやお偉いさんと親しくなる機会に恵まれました。また、鍼灸や民族療法の国際的な大会があれば、日本語通訳や日本人対応ができるのは私しかいなかったので、その対応を任され、日本の業界の有名な方々とも面識を得ることができました。

台北で整体施術を始めると、日本人ということで、台湾在住の日本人からは言葉が通じる安心感から、台湾人からは物珍しさから、すぐにお客さんがついてくれました。たまに日本に行って、施術会や技術セミナーを開催すれば、私が台湾で事業をしている肩書に興味を持たれたのか、やはりお客さんが来てくれました。

技術の高さと集客は比例しない

台湾で25年間整体に取り組んできた治療家が語る「集客するうえで大事なポイント」

こういった希少性によってうまくいく例は私だけではありません。ブラジルのサンパウロでやっていた人が技術セミナーにいらしたことがあります。失礼ながら技術は低かったのですが、聞けばお客さんはいつもいっぱいだったといいます。

同じくセミナー参加者だったある奥さんは、旦那さんの仕事でケニアのナイロビに住んでいたのですが、ちょっと習ったことがある指圧で、1時間100ドルでナイロビ在住の欧米人に圧倒的な人気を誇ったそうです。

私自身、20年前にハワイの人気店でマッサージを受けたことがありますが、お話にならないくらい下手で驚いたものです。

場所が海外だったり、昔話だけではありません。日本でも今、北海道のニセコで富裕層外国人向けにかなりの高価格で繁盛しているマッサージ師がいますし、台湾で1週間足裏マッサージを習っただけで、佐賀県の某市で繁盛している足裏マッサージ師もいるのです。

一方、整体師や鍼灸師、セラピストで、その技術の高さや専門知識に対する深い造詣などで私が施術家として尊敬していながら、集客はうまくいっていない方は少なくありません。技術の高さと集客はまったく比例関係になく、実際のところ集客に困っている人のほうが圧倒的に多いのです。十分に実力があるのに集客がままならない人が多いのは本当に残念です。

足りないものや欠点が多々あっても場所や環境がはまればうまくいくし、素晴らしい才能や実力があっても、間違った場所でやるといくら努力してもうまくいきません。

集客がうまくいっていない人は、実力不足ではなくて場所を間違っているのかもしれません。あなたが住んでいたり慣れ親しんでいる地域と、あなたを必要としたり実力を発揮できる地域は違うかもしれないのです。このような視点から他の地域を調べたり、試したりしてみてはいかがでしょうか。

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