食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈ムネは需要期のピーク過ぎるも一定の引合い、相場は横ばい推移〉
9月に入っても気温が下がらず、モモの荷動きは弱かったものの、中旬以降、量販店の棚替えが進んだこともあり、徐々に荷動きが出始めている。

相場展開をみると、例年であれば夏場を底値に需要期に向けて上昇に転じる時期となるが、2023年の9月は日経加重平均653円でスタートして以降、ジリ下げ傾向が続くという異例の展開となった。

当初は月後半から上げ相場に転じるものとみられていたが、最終週に入っても大きな変動はなく、630~640円台での推移となった。一方、ムネは需要期のピークを過ぎ、下げ基調となったものの、それでも月間を通して概ね370円台と、前月から小幅な下げにとどまった。

この結果、9月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが644円(前月673円)、ムネが373円(前月383円)とともに前月から値を下げ、正肉合計で1,017円(前月1,056円)となった。

前年比ではモモが24円安、ムネで9円高となり、2023年に入ってから前年を上回る価格で推移していたものの、ここにきてモモは前年を下回った。一方、輸入品は8月に5.6万tの大量輸入があったものの、9月以降はブラジルの輸入量減少に伴い、大きく減少することが予想される。ただ、各社在庫が多めにあることから、混乱はなく冷静な対応が取られているようだ。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、10月の生体処理羽数は前年同月比0.7%増、処理重量が0.1%増と概ね前年並みを維持する見通しだ。産地別にみると、北海道・東北地区は羽数2.1%増、重量1.3%増と増加を見込む半面、南九州地区は猛暑続きだったこともあり、羽数0.7%減、重量1.2%減と産地によって増減はまちまちとなりそうだ。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測では、10月の鶏肉輸入量は19.0%減の4万3,700tと予測している。ブラジルのサンタカタリーナ州での鳥インフルエンザ発生の影響で、同国からの輸入量が大きく減少することが予想され、日本食肉輸出入協会の予測では2万9,500tにとどまるとしている。ただ、既に輸入停止措置が解除されていることを踏まえると、今後、輸入量は回復に向かうものとみられる。

〈需要見通し〉
10月に入り、気温もやっと秋らしくなってきたことで、今後のモモの荷動きに期待がかかるところ。これまで不振が続いていたモモだったが、量販店の棚替えが進んだこともあり、徐々に回復傾向となっている。

ただ、9月は生産面が順調だったようで、「荷動きに対して余剰感がみられる」(関東の荷受筋)との声も聞かれ、需給バランスに懸念も。一方、ムネは例年、夏場をピークに需要は落ち着いてくるものの、依然として荷動きは堅調に推移している。消費者の生活防衛意識が高まるなかで、価格優位性から一定の引合いが続いているようだ。

輸入品については、外食需要が回復傾向にあるなか、輸入鶏肉を使ったメニューも多くみられ、堅調な荷動きが続いている。

〈価格見通し〉
10月2日の相場は日経加重平均でモモ636円、ムネ363円、3日にはモモ640円、ムネ364円とわずかに上げた。ただ、業界内では当初の想定よりも上げきっていないようで、10月もこのままの流れだと緩やかな上昇にとどまるとの見方が強い。

気温低下による季節の変わり目がポイントになることは間違いないが、いまの需要環境を勘案すると、月間平均では、日経加重平均でモモ650~660円(農水省市況660~670円)と小幅な上昇にとどまり、ムネは370円前後(380円前後)と予想する。ただし、今シーズンも国内における鳥インフルエンザがいつ発生してもおかしくはない状況にある。今後の発生状況によっては相場にも影響を及ぼすことから、動向を注視していく必要がありそうだ。

〈畜産日報2023年10月6日付〉