相続サポートセンター
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相続の手続きはみな法律で定められています。

そして、その多くは期限が定められています。

大切な家族を失い、心を痛めているにもかかわらず、たくさんの手続きが、しかも期限付きで残されたご家族を待受けているのです。

ここでは時間の流れを追って、相続に関わる諸手続きを説明してまいります。

1. 相続開始後できるだけ速やかにしなければならないこと

ご家族を亡くし、まずしなければならないことは死亡届の提出です
葬儀屋さんが死亡届の提出から埋葬許可書の取得まで代行してくれる場合が多いようですが、ご自身でなさる場合は亡くなったことを知った日から7日以内に死亡診断書と共に市区町村役場に提出します。

このときに死体火葬(埋葬)許可申請書の提出も行います。

火葬許可証を入手したら葬儀ができるようになります。

他に役所関係の手続きとして、亡くなった方が年金を受給していた場合、受給の差止をしなくてはなりません
何もせずに放っておくと不正受給ということにもなりかねません。

早めに手続きを済ませましょう。

ちなみに国民年金の場合は亡くなってから14日以内、厚生年金の場合は10日以内に手続きを済ませなければなりません
国民健康保険に加入していた場合、このときに保険証の返却もしておくとよいでしょう。

葬儀を行っていた場合、葬儀費が支給されます。

加えて、亡くなった人が世帯主だった場合、世帯主の変更の届出もしておきましょう。

本来、世帯主の変更は14日以内に届出なければなりません。
遺族年金が支給されることもありますので市区町村に確認してみましょう。

それ以外に金融機関にも連絡をする必要があります。

亡くなった人の銀行口座は相続財産を構成します。

相続についての話し合い(遺産分割協議)が終わるまではそのままにしておく必要があります。

そのため銀行に連絡をして凍結をしておかなければなりません。

後々、口座を相続する人が決まったら書類を整えて銀行窓口で相続の手続きをしましょう。

それ以外にも引出す手段はありますが、ここでは割愛いたします。

また、亡くなった人が生命保険に加入していた場合、加入保険会社に連絡をして死亡保険金の請求をします。

生命保険金は相続財産にはなりませんが、相続税の計算上、受取人一人当たり500万円まで控除できるので把握しておく必要がありますし、相続税が発生した場合の納税資金に充てることができます。

そのため相続税申告、納税期限までには請求しておくことをおすすめします。

生命保険の請求は受取人がします。

保険会社から請求に必要な書類の案内が送付されてきますのでそれに従ったものを用意し返送します。

生命保険の請求権は死亡日の翌日から3年で時効消滅してしまいます

2. 遺言書に関わる手続

相続放棄といって相続財産を受け取るか拒否するか決めることができます
ところが、この相続放棄という手続きは3か月以内にしなければなりません

そのため、どんな財産がどのくらいあるか知っておくことが必要です。

後で相続財産についての調査もすることになりますが、まずは亡くなった人が遺言書をのこしているかどうか調べてみましょう。

遺言書には財産の内容や、それらの財産を誰に相続させるか書いてあります。

公正証書遺言の場合、公証役場で作成しているのでそちらにも保管されています。

また、最寄りの公証役場で作成していない場合でも、検索システムで日本全国どこの公証役場に保管されているか確認することができます。

自筆証書遺言の場合、家族や友人のだれか、あるいは弁護士など士業の人に何か言ってあるか渡してあるかもしれません。

心当たりのある人にきいてみましょう。

また、遺品の整理をしているときに見つかることもあります。

見つけたら封がしてあったら開けたりせず(勝手に開封すると5万円以下の過料が科されることがあります)、家庭裁判所に申立てをして、検認という手続きをしてもらいます。

破ったり捨てたりするのは法律違反になりますし、故人の遺志に反しますから絶対にしないでください。

検認とは遺言書が有効なものであるか否かを確認するとともに、その現状を保全し、捏造や毀損を防ぐことでもあります。

検認を申し立てると各相続人に検認の期日の連絡がいきます。

当日家庭裁判所で出席した相続人の目前で遺言書の開封と内容の確認がなされます。

この作業が問題なく終了すると検認済証明書が発行されます。

検認済証明書は遺言書とセットで各種相続手続きにおいて使用するので大切に保管しましょう。

検認の手続きには期限はありませんが、申立てをしてから検認が終わるまで1、2か月かかります。

そのため、相続放棄や納税の申告など、他に期限のある手続きに影響を及ぼす可能性もありますので、やはり早めに手続きすることをお勧めします。

ここで、遺留分減殺請求について説明いたします。

遺留分減殺請求とは本来法定相続人であり、相続財産を取得する権利があるのに、遺言書によって不当に少ない、あるいはまったく相続財産がない場合に主張する権利です。

この権利を主張することで、法定相続分よりは少なくなりますが最低限の相続財産を確保することができます。

この遺留分減殺請求権は遺贈があったことを知った日から1年、相続があった時から10年が経過すると時効により消滅してしまいます
遺言書などでご自身の権利が侵害されているときは早めに請求することをお勧めします。

この遺留分減殺請求権は定められた手続きはありませんが、内容証明により相手方に意思表示をすることが一般的なようです。

3. 相続人、相続財産の調査

相続の手続きを始めるとき、まず誰が相続人となるか、また、相続財産はどんなものがあるか調査していきます。

これは遺言書がなかった場合はもちろん、あった場合にも相続財産にもれがないか確認するため、あるいは本来相続できる人の権利を保護するために必要なことです。

これらの調査は相続放棄などの手続きに3か月の期限が付されているため、相続人の考慮期間をふまえてなるべく早めに行っておくことをお勧めします。

相続人の調査は亡くなった人の出生から死亡するまでの戸籍謄本を入手して判断します。

そして、誰が相続人で誰がそうでないか判断していくことになりますが、相続人の範囲についてはここでは割愛いたします。

相続人が再婚している場合は注意が必要です。

前妻との間に子供がいる場合や認知している子がいる場合はそれらの人たちも相続人になるからです。

また、死後に子供のほうから認知請求をすることも可能ですので認知されていなかった子供が突然現れ、認知請求してくることあります。

相続人の調査をしていく中で、相続人が存在していることがわかっても、行方が分からなかったり連絡が取れなかったりする場合があります。

こんなときは家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることでしかるべき人物を選出してもらうことができます。

また、身内がいない場合や相続人全員が相続放棄をした場合、家庭裁判所から相続財産管理人が選出されます。

相続財産管理人は亡くなった人の財産を管理や相続人の捜索をします。

相続財産管理人が一定期間捜索をしたにもかかわらず相続人が見つからなかった場合、相続人の不存在が確定します。

このような場合、亡くなった人と生計を共にしていたり、療養看護に努めていたりする特別縁故者が相続財産の分与を請求できます
この分与の請求は相続人不存在の確定後、3か月以内に申し立てなければなりません

分与ののち、財産が残った場合は国庫に帰属します。

相続財産の調査は大きく不動産の調査とそれ以外の金融財産や動産の調査に分けられます。

不動産の調査は法務局で登記簿謄本を収集し、市区町村役場で名寄台帳を閲覧、固定資産評価照明を入手して調べていきます。

なかには固定資産税がかかっていない不動産もあるので注意が必要です。

金融財産は亡くなった人の通帳を入手し、預金の金額を確定します。

また、負債もマイナスの相続財産を構成するため定期的な引き落とし(返済)がないか調べていきます。

何かしらの返済がみとめられる場合、家の中に借用書や返済予定表などがないか確認します。

他に株式やゴルフ会員権などの金融資産の有無を確認していきます。

特に亡くなった人が株式会社を経営していた場合、ご自身の会社の株式も相続財産を構成するので注意が必要です。

4. 相続放棄と限定承認

先にも少し述べましたが、相続財産は不動産や金融資産、動産などプラスの財産ばかりではありません。

例えば家や車のローン等借入金もマイナスの相続財産を構成します。

このマイナスの財産がプラスの財産を大きく上回っていて相続人に負担がかかる場合、相続放棄という手続きを選ぶことができます。

ただし、この相続放棄という手続きは相続があったことを知ってから3か月以内にしなければなりません。

相続放棄申述書と亡くなった人や相続人の戸籍謄本、住民票などを持って家庭裁判所に申立てます。

限定承認とはプラスの財産の範囲だけマイナスの財産を相続する、ということです
例えば不動産評価額1億円、負債3億円の相続財産があったとしたら不動産と1億円の負債を相続する、ということです。

先祖伝来の不動産を手放したくない、といったときにはこういった選択肢もあると思われます。

ただし、この限定承認をするには相続人全員の同意が必要なうえ手続きが非常に複雑になります。

期限は相続放棄と同様、相続があったことを知った日から3か月以内です
この3か月間のことを熟慮期間といいますが、遺産の内容が複雑だったり、相続人が外国に住んでいて遺産内容の調査が困難だったりするなど、理由がある場合には伸長の申立てにより伸ばしてもらうことができる場合もあります。

以上2つの場合以外は単純承認といい、プラスマイナスに関わらず、すべての財産を無条件で相続することになります。

5. 被相続人の準確定申告

毎年2月中旬から3月中旬にかけて確定申告の手続きがあります。

これは前年の1月1日から12月31日までの個人の収入や支出の状況を税務署に報告し、必要があれば納税するものです。

ところが大概の人はいつ亡くなるかわかりません。

12月31日ぴったりでなくなる人は、いるかもしれませんが、多くの場合それ以外の日であろうと思われます。

そこで、亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの分の確定申告をする必要があります。

これを準確定申告といいます。

この準確定申告は相続を知った日から4か月以内に行わなくてはなりません
ただし、亡くなった人の収入が給与所得だけだった場合は、勤務先が年末調整をしてくれるので、する必要はありません。

6. 遺産分割協議書について

不動産登記や相続税の申告だけでなく、銀行口座の名義変更にも必要となるのが遺産分割協議書です。

書式は自由なのですが、相続人の誰がどの財産を相続するか、また相続するにあたり、皆が納得していることを記載した書面であり、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。

相続人間で、民法で定められた法定相続分どおりに遺産を分割しない場合や、遺言書が見つからなかった場合、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)により遺産の相続分を決めていきます。

こうして決めた内容を後々問題が生じないように書面を作成し、残しておくのです。

この遺産分割協議も相続放棄や限定承認の前提となるので早めにおこなっておくことをお勧めいたします。

協議がまとまらない場合は家庭裁判所に申立てをし、調停、審判してもらうこともできます。

調停では家庭裁判所の調停委員が間に入って話し合いを進めてくれます。

これにより遺産分割についての合意ができれば遺産分割協議は成立し、調停調書が作成されます。

調停でも話がまとまらない場合は裁判官が各人の主張や証拠資料などから、妥当な遺産分割方法を決定し、各相続人に審判書を送付します。

遺産分割において争いの一つとなるのが特別受益と寄与分です。

特別受益とは亡くなった人から生前受け取った特別な利益のことをいい、生前贈与や遺言による遺贈が該当します。

特別な利益にはいろいろなものが含まれ、学費や住むための建物や土地の贈与、またはそれらを購入するための資金の贈与、生活費の援助も該当する場合があります。

寄与分とは、相続財産の増加や維持に尽力した相続人に対し、その貢献度によって与えられる取り分のことです。

例えば生前、事業を手伝っていたとか、療養介護をしてきたことなどです。

7. 相続税の申告と納税

遺産分割協議書ができ、各相続人の相続分が確定したら相続税の計算ができるようになります。

相続財産の評価額を算定、合計し、基礎控除を差し引いてもプラス分がある場合、相続税がかかることになります。

基礎控除とは法定相続人の人数によって異なり、次のように計算します。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の人数
相続税がかかる場合、その申告と納税は、相続の開始を知ってから10か月以内にしなくてはなりません
また、先に述べた遺産分割協議で話がまとまらない場合でも、未分割での納税をすることになります。

その場合、相続人の各人が一旦、法定相続分に従った相続税を納税することになります。

相続税の納税が遅れるとペナルティが課されます。

10か月の申告期限から二週間が経過してしまうと税金総額の15%、納税金額が50万円を超える部分に対しては20%の無申告加算税を支払うことになります。

それと同時に延滞税もかかります。

延滞が2か月以内の場合は2.9%、それ以降は年9.2%かかりますのでご注意ください。

8. 相続財産についての手続き

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遺産分割協議書ができたら相続財産の名義変更をしていきます。

ここではまず、不動産から説明していきます。

亡くなった人名義のままになっている土地や不動産を相続した人の名義に変更することを相続登記といいます。

この相続登記は法律で期限が定められていません。

何年後でも何十年後でもかまいませんが、今後は法改正により期限が付されることも予想されます。

それに遅くなることで不利益や不便を被ることがありますのでなるべく早めに手続きをすることをお勧めします。

どんな不利益が起きるかといいますと、例えばその不動産が亡くなった人名義のままでは売却することはできません。

その土地を担保にしてお金を借りることもできなくなります。

最悪の場合、誰かが機に乗じて自分のものにしてしまうかもしれません。

相続登記はそれほど難しくないのでご自身でもできると思いますが、書類の収集に手間がかかるし、時間もかかるので通常は司法書士に依頼します。

ご自身でなさる場合は、申請書や戸籍当方などの必要書類をそろえて法務局で手続きします。

また、郵送でもインターネットでも可能です。

登記とは少し異なる話題になりますが、農家の場合、農地を相続することがあると思います。

この場合、市区町村の農業委員会に相続開始を知った日から10か月以内に届出をしなければなりません

次に銀行口座や投資信託など金融資産の名義変更について説明します。

遺言書があれば遺言書、なければ遺産分割協議書と亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票の除票、相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの書類を持って金融機関の窓口に行きます。

そろえる書類は金融機関によって異なることがありますので事前に電話するなどして確認しておくことをお勧めします。

預金の引出しは本来10年で消滅時効にかかってしまいます
金融機関が融通をきかせてくれるので10年を過ぎても引き出せる場合が多いですが、やはり早めに手続きされることをおすすめします。

動産のうち名義変更が必要になるのは自動車です。

この手続きは陸運局の運輸支局で行います。

遺言書があれば遺言書、なければ遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書、亡くなった人と相続人全員の戸籍謄本、車検証、車庫証明(亡くなった人と相続人が同居であった場合は不要)の書類をそろえて運輸支局におもむきます。

自動車の名義変更は義務ではなく、期限も決められていませんが、しておかないと売却や廃車ができなくなります。

その際に、自賠責保険や任意保険の名義変更もしたほうがよいかもしれません。

亡くなった人が会社経営者であった場合、役員が変わることになるので定款の変更や役員変更の登記をする必要があります。

役員変更の登記は会社の登記事項に変更が生じてから2週間以内にしなければなりません
長い間そのままにしておくとペナルティが課されることがあるようです。

9. 各種相続手続きの期限一覧

ここで今までお話ししてきた相続手続きについて表にまとめます。

7日以内 死亡届の提出
10日以内 厚生年金受給の差止
14日以内 国民年金受給の差止、会社役員の変更登記、世帯主変更の届出
3か月以内 相続放棄、限定承認の申立て、相続財産の分与の請求
4か月以内 被相続人の準確定申告
10か月以内 相続税の申告と納税、農地委員会への届出
1年以内 遺留分減殺請求権
3年以内 生命保険金の請求
10年以内 銀行口座の相続手続き、遺留分減殺請求権

10. まとめ

ひとえに相続といっても亡くなった人の財産状況や社会的地位などによってさまざまな手続きが必要になってきますし、それぞれの手続きに期限が付されていることが多いことがご理解いただけたと思います。

一度にいろいろやろうとするよりは上記の表などを利用していきながら順を追って手続きを進めていただけたらよろしいかと思います。
(提供:相続サポートセンター