今回のゲストは、親鳥専門の焼肉居酒屋『ばかたれ』を経営している禹在賢(ウ・ザイケン)さんです。禹さんは地元愛知県で親しまれている親鳥をより広めていこうと活動されており、海外進出も計画中とのこと。ワクセル総合プロデューサーの住谷が、詳しくお話しを伺いました。
10人中8人が絶賛した看板メニューの親鳥
住谷:本日のゲストは、株式会社ばかたれの代表取締役・禹在賢(ウ・ザイケン)さんです。2016年に鶏専門の焼肉居酒屋を五反田にオープンし、現在は五反田に2店舗、 箱根に1店舗、親鳥専門店を展開しています。
禹在賢:親鳥のおいしさに衝撃を受け、親鳥専門を経営しています。親鳥は通常は流通していないのでご存知ない方も多いかもしれません。親鳥は卵を産むために育てられた採卵鶏という鶏のことを言い、他の鶏とは飼育期間が大きく違っています。
通常売られているのは若鶏と言われるもので、卵から孵化してから約40日で出荷されます。お店に並ぶのは、このピンク色の若鶏です。一方の親鳥は卵を産ませるために2年間飼育され、卵をあまり産まなくなったときに出荷されるもの。なので、通常はお店では手に入れることができないものなんです。
住谷:なぜ親鳥専門店を開こうと思ったのでしょうか?
禹在賢:私は愛知県出身の韓国人なんですが、実は幼い頃から親鳥を食べていたので、慣れ親しんだ味でした。年に2度、法事をする際に必ずお供えとして丸鶏を出すのですが、それが親鳥だったんですよね。法事の後は家族でおいしくいただきますが、スーパーに売っているから揚げにするような若鶏とは味が全然違います。
最初は、若鶏も親鳥も両方メニューに出していたところ、お客さまの10人中8人くらいは親鳥のほうがおいしいとおっしゃるんです。五反田は飲食店も多いので、看板となる商品が必要だと思っていたので、皆さんがおいしいと言ってくれるものを出していこうと思い、親鳥専門店にしました。
親鳥は屠殺されてから3日以内に食べなければ、身が固くしまり、においもきつくなってしまいます。結果、市場に出回ることなく、安価で加工品の食材に使われるという用途しかなかったんですよね。でも、それはもったいないし、親鳥の本当の美味しさを日本中の人々に伝えたいという思いがあります。
名古屋での失敗を経て、再起をかけ東京に出店
住谷:お店を立ち上げるときの苦労などはありましたか?
禹在賢:本当にかっこつけているわけではないですが、私は苦労を苦労とは思わないんです。イヤなことも基本忘れますし、繁盛させたい一心で集中していたので、苦労というよりも楽しかったです。開店してから8年目ですが、あっという間に8年という感じです。
そういう私も実は、一度愛知県でお店をたたんだ経験があります。もともとは10年間営業職の仕事をしていて、そのころに飲食経営者の姿に感銘を受け、私自身もその道を目指そうと思い、3店舗で修行を積みました。
2013年に独立第一号店の『バースデーチキン』を名古屋で開業したものの、想定していたほどの結果が得られなかったので2年で閉業しました。それから結婚を機に移り住んだ東京都で再起を誓い、2016年に五反田に出店したという経緯です。
おかげ様で今では有名人の方も多く来店していただけるようになりました。オープンして4か月くらいのときにいらしたのが、ケンドーコバヤシさんでした。今、振り返ると、オープン仕立てで試行錯誤の時期ですから、本当においしい料理を出せていたかは記憶にないくらいですけど、その後もリピートしてくださっています。それからお知り合いの芸能人の方も一緒に来られるようになりました。
住谷:それはすごいですね。では、親鳥の味の特徴を教えていただけますか?
禹在賢:食感と旨味が違いますね。親鳥は肉が硬いと思われがちですが、当店が使う親鳥のこだわりは柔らかさです。おすすめの部位は全体の1割しかないといわれる親鳥の首皮で、脂がありとてもジューシーです。若鶏は40日しか飼育しないので皮に脂がつかないんですが、親鳥は2年間飼育することによって、皮にしっかり脂がのるんですよね。他の焼肉でいうと、牛肉のシマチョウの味に似ていると思います。
一番のおすすめは『幻の鶏ホルモン』です。親鳥の胸の皮なんですが、首の皮よりももっと柔らかく弾力があって、脂自体に旨味がのっているんです。
親鳥の味を日本中、そして世界に向けて発信
住谷:では、これからのビジョンを教えていただけますか?
禹在賢:2022年9月に箱根湯本駅前にばかたれをオープンしました。箱根に出した理由は、インバウンドで来た海外の方に親鳥を知ってもらうためです。海外の方に広く親鳥の味を宣伝して、ゆくゆくは海外にも出店したいと考えています。
世界を見ると、宗教や生活習慣的に豚や牛を食べられないところはありますが、鶏を食べられない民族や国籍、宗教は聞いたことがないですよね。どんな国の方にも受け入れられるチャンスがあるんじゃないかと思っています。愛知伝統の親鳥の味を日本中に広め、さらに世界に発信していきたいと考えています。