新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)

目次

  1. 環境への配慮を徹底した施設と周辺へ配慮した外観で、産廃処理のイメージを払拭。建物内はごみ一つない徹底した管理体制
  2. ドライバーが持つスマートフォンに搭載されたマニフェスト管理ソフトへの入力で、1日250枚の入力作業から解放。請求作業まで自動化可能
  3. ドライバーも手作業で発生していた記入ミスが激減。今では「新マニフェスト管理ソフトがないと仕事にならない」と
  4. 新マニフェスト管理ソフトで顧客の利便性が向上し、値引き合戦回避
  5. 効率化によって生まれた人手を営業事務に振り向け、営業の活発化
  6. 社内の様子をカメラで記録。まじめに働く人が評価される会社にする
  7. 次代に向けた人材確保と「ビジネスパーソンとして何が大切か」に重点を置いた人材教育に力を入れる
  8. 環境分野の分析・測定業務で選択と集中進める
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

長野自動車道が奈良井川に差しかかる道路脇に、株式会社エコロジカル・サポートの本社が建っている。敷地内には焼却プラントもあって、長野県内から集められた産業廃棄物を焼却処理しているが、近くまで寄らないと、そこに産廃施設があるとはわからない。「見学に来た排出事業者の方からも、ここまできれいな産廃施設は見たことがないと言っていただきました」と、村井連峰代表取締役は清掃など環境整備の徹底ぶりをアピールする。(TOP写真:エコロジカル・サポートの村井社長)

環境への配慮を徹底した施設と周辺へ配慮した外観で、産廃処理のイメージを払拭。建物内はごみ一つない徹底した管理体制

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
右がエコロジカル・サポート本社。本社の左が処理工場

「産業廃棄物というと、やはりゴミやホコリといったイメージを持たれがちです。当社ではそうしたイメージを払拭するように取り組んでいます」(村井社長)。言葉どおりに敷地内にゴミのようなものは見当たらない。本社屋も一部ガラス張りのモダンな建物を木々が取り巻いていて、街中にある一般企業と変わらないたたずまいだ。

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
エコロジカル・サポートの新しい焼却プラント

敷地の奥にある焼却プラントでは、搬入された廃棄物を投入用重機を用いて焼却炉へと送り込んでいる。2年前に建て替えた新しい焼却プラントで、処理能力は24時間稼働で1日31.2トンと、以前の倍近くになったという。それでいて稼働率は85%から90%と高く、エコロジカル・サポートが長野県で欠かせない施設になっていることがうかがえる。

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
焼却プラントへの廃棄物投入口

こうした本社や工場の美観を保つ努力が評価され、新しい焼却プラントを建設するにあたって地域住民への説明を行った際もすんなりと理解を得られた。取り扱っている産業廃棄物処理の重要さも、そうした理解にプラスに働いた。「当社は、病院から出る医療・感染性廃棄物の処理では長野県でトップクラスの実績を持っています」(村井社長)。これらが適宜処理されなければ、人の命を預かる医療そのものにも支障が出てしまう。取り扱いには細心の注意が求められるが、そのことも含めて確かな仕事を続けてきた同社への信頼が、新しい焼却プラントの導入を後押しした。

ドライバーが持つスマートフォンに搭載されたマニフェスト管理ソフトへの入力で、1日250枚の入力作業から解放。請求作業まで自動化可能

医療・感染性廃棄物の処理を手掛けているため、2020年初頭から大流行した新型コロナウイルス感染症の中で取り扱う量も激増した。病院だけでなく療養施設から出る廃棄物の処理も請け負うことになり、「普段通りの回収では間に合わなくなるため、ドライバーをやりくりして配車し、乗り切りました」(村井社長)。2023年に入って下火になったとはいえ、感染者の数は高い水準で推移している中、同社では新たなマニフェスト管理ソフトを導入して、回収業務の効率化に乗り出した。

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
エコロジカル・サポートの村井連峰代表取締役

「回収に行った際、ドライバーは何をどれだけ回収したかを紙に記入する必要がありました。これをデジタルで行えるようにしたのが今回導入した新ソフトです」(村井社長)。ドライバーは全員がスマートフォンを持って回収に向かう。そして、訪れた先で回収した廃棄物の種類や数量をスマートフォンから入力する。「その時点でデータが本社に転送されて記録されます。従来のように、戻って来たドライバーから集めた紙のマニフェストを元に、事務員が入力し直さなくてもよいのです」(村井社長)

1人が1日で記入するマニフェストは20枚から30枚あり、全社的には1日に250枚ほどのマニフェストが上がってくる。従来は、事務員がそれらの入力業務に夕刻から翌日の午前中まで時間をかけていた。そうした業務の合間に、顧客への請求業務も行っていたが、「今回導入した新ソフトなら、回収時に入力した段階でお客さまへの請求業務までを一括して行ってくれます」(村井社長)。事務作業の負担が大きく減った。

ドライバーも手作業で発生していた記入ミスが激減。今では「新マニフェスト管理ソフトがないと仕事にならない」と

ドライバーにとってもメリットが出た。「紙で入力していた時にはどうしても避けられなかった記入ミスがなくなりました。スマートフォンを使い慣れていない年配の人も、最初は覚えるのが大変だったようですが、今では導入したマニフェスト管理ソフトがなければ仕事にならないと言ってくれるようになりました」(村井社長)。どのような種類の廃棄物を回収するかは、営業担当があらかじめ登録しておいてくれるため、回収先に合わせて出てきた画面をチェックするだけで済む。次に向かう場所も指示してくれるため、初心者でも回収業務が務まるようになった。

新マニフェスト管理ソフトで顧客の利便性が向上し、値引き合戦回避

顧客の側も、どのような種類の廃棄物を出すかをあらかじめ登録しておけば、あとはドライバーの側で数量を入力し、回収していってくれてそのデータもフィードバックしてくれる。請求書も自動的に届く。そこに「ある種の付加価値が生まれる」(村井社長)と同社ではにらんでいる。例えば、他県からより安く、より多く回収する新規事業者が入って来ても、「新マニフェスト管理ソフトによってお客さま自体が楽になっていれば、これまでどおり当社との取引を継続してくれます」(村井社長)。値引き合戦になって双方が消耗する事態を避けられるというわけだ。

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
お客さまが入ってきたらすぐに気づけるよう全員が入り口を向いた事務室

「回収業務を請け負ってくれている事業者には、今も紙のマニフェストを使っているところがありますが、こうした利点を説明して導入してもらいたいと考えています」(村井社長)。ただし、そうした効率化の過程で、それまで必要としていた事務の仕事が減ってしまうことは避けられない。簡単に人は減らせないとなると、どのような仕事を作ってあげられるかが鍵となる。「当社ではそこで、事務をしてくれていた人たちに、営業事務的な仕事をしてもらうようにしました」(村井社長)

効率化によって生まれた人手を営業事務に振り向け、営業の活発化

営業担当者が外回りをしている間に、見積書や契約書の入力を行ってもらうようにして、営業の仕事をサポートする。これによって営業活動自体も活性化して、より多くの仕事を受注できるようになる。マニフェストという一つの効率化が、業務効率化や人材の適正な配置を実現し、全体の業務拡大も後押しする。

社内の様子をカメラで記録。まじめに働く人が評価される会社にする

仕組みを整えても、実際に働く人の心構えが弱ければ効果は出ない。同社では、回収車に位置を把握するGPSだけでなく、社内の様子を記録するカメラも取り付けて、社員の仕事ぶりを把握できるようにした。「監視されているようだと思う人もいるでしょう。それでも踏み切ったのは、まじめに働いてくれている人が、しっかりと評価される会社にしたかったからです」(村井社長)。

次代に向けた人材確保と「ビジネスパーソンとして何が大切か」に重点を置いた人材教育に力を入れる

効率化への道筋を整え、業務拡大に対応できる体制を整えた。こうなると必要なのは、次代に向けた人材の確保と育成だ。育成という意味では、「月に2回、課長職以上を講師役としの社員を集めて、社会人としてのマナーや、報告・連絡・相談の大切さを考えてもらう勉強会を開いています。数人しかいなかった20代の社員も6人くらいにまで増えたので、そうした若い人には、ビジネスパーソンとして何が大切かを重点的に学んでもらっています」(村井社長)。

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
パソコンに向かうエコロジカル・サポートの村井連峰代表取締役

同社では医療・感染性廃棄物以外にも、引火しやすい廃油や強酸、強アルカリといった化学物質、農薬なども回収・処理しており、取り扱いには相当な知識が必要だ。「自分でもそうした廃棄物の危険性を話して聞かせています」(村井社長)。6月1日に出した第22期の経営方針では、社長自ら「学びて思はざれば則ち罔(くら)し。思ひて学ばざれば則ち殆(あやう)し」という孔子の言葉を引いて、教えられたことを実践するだけでなく、自分で考えて行動する大切さを全社員に訴えた。

「身だしなみにも注意してもらっています」(村井社長)と言い、自身も夏場でもスーツにネクタイ姿で仕事に就く。大学を出てすぐに入社した村井社長だが、当時の社長だった父親の下で帝王学を学ぶのではなく現場に出て営業を経験し、重機の操作も体験したりして覚えていった。資格の取得にも挑み、これまでに仕事に必要な20以上の資格を取得した。そうした努力で自分の存在を周りの社員に認めさせ、2年前に社長に就任してからの改革も成功させた。

環境分野の分析・測定業務で選択と集中進める

新マニフェスト管理ソフト導入で産廃回収業務を効率化、環境を整備して地域の理解にも努める エコロジカル・サポート(長野県)
エコロジカル・サポート村井連峰代表取締役は関連会社である株式会社環境科学の代表も務める

2022年9月には、関連会社で環境分野の分析・測定を行っている株式会社環境科学の社長にも就任した。解体工事を行う際にどれくらいアスベストが出るのかを測定する仕事をしている。これから重要になる分野と考え、自ら陣頭指揮を取ることにしたという。「それまでは浅いながらも広い分野の業務を請け負っていましたが、今後はこれが来そうだといった分野に絞って深く手掛けていくようにしたいと考えています」(村井社長)。4,000万円相当をかけてX線検査機などをを導入したのも、そうした意欲の現れだ。

まだ36歳の社長の下で、産業廃棄物事業者というイメージを大きく変える動きが着々と進められている。

企業概要

会社名株式会社エコロジカル・サポート
住所長野県松本市大字笹賀7170番地3
HPhttps://www.ecological-support.co.jp/
電話0263-86-7585
設立1993年9月22日
従業員数35人
事業内容産業廃棄物収集・運搬及び処分業務