全国味噌工業協同組合連合会・満田盛護新会長
(画像=全国味噌工業協同組合連合会・満田盛護新会長)

全国味噌工業協同組合連合会(全味工連)の2023年度通常総会で役員改選が行われ、新会長に会津天宝醸造社長の満田盛護氏が就任した。現状のみそ業界をどう捉え、どのような方向に導いていくのか。満田新会長にグローバルな視点に立った今後の展開について聞いた。

現状については、「国内人口の減少、食の欧米化などにより、みその消費量は減少傾向だ。子どもの好きな食べ物のランキングも洋食化している。みそ汁を飲む機会が少ない層への提案が必要だ」と、まずはみそに興味を持ってもらえる策を講じることが重要課題と指摘する。

「和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食の良さは世界的に認められている。この事実をリアルとネットの2つの軸を上手く組み合わせることで、みその消費を促すようなPRを展開していかなければならない」とし、国内外に向けた情報発信の重要性を提案する。

新型コロナの影響にも触れ、「新型コロナの影響は、みそ業界にとっても大きな痛手となった。3年ぶりに規制が緩和されたことで業務用・家庭用ともに復調の兆しが見えてきたことは大変嬉しい。インバウンドも元に戻りつつあり、外国人観光客に向けた和食やみそのPRもコロナ禍前のように継続してきたい」とし、日本経済の復活に期待を高める。

〈郷土料理のおいしさを支えているのは伝統的な調味料、地域の食材と合わせてPRを〉
みその輸出に関しては、「国が食品の輸出額目標として5兆円を打ち出した。海外における日本食レストランの出店ラッシュが始まっているようだ。海外で日本食が広まり、インバウントで日本食の良さを再認識して頂くような循環が生まれることを期待したい。2022年、全味工連として初めて出展したシアルパリで豚汁を提供したところ大変好評だった。手応えを感じたものの、実際には、海外の一般家庭の食卓で日本食(みそ)が登場する機会はまだまだ少ない。海外での日本食が『レストランで楽しむご馳走』から一般家庭料理へも浸透していくことを願う」とする。

「日本の歴史に魅力を感じる人は多いはず。歴史の古さは貴重な遺産だ。日本各地の気候風土に適し、その地のものを使った郷土料理が各地域の食文化を形成してきた。そして、郷土料理を支えているものの一つは、みそ・しょうゆ・酒など、古くから伝わる発酵食品である。地域の食材と伝統調味料を組み合わせてアピールすることは、地域・農業の活性化だけでなく、海外向けのビジネス展開にも繋がる可能性は大いにあると考える。試行錯誤をしながら方向性を見出し、共感の輪が広がれば大きな流れになる」と力を込める。

異業種の団体とのコラボにも前向きで、「豆腐・納豆など他の食品業界とのコラボレーションも興味深い。意外なイノベーションが生まれるかもしれない。そうした取り組みが小売における販促連動にもつながってくる」とし、業界の垣根を超えた提案にも意欲的だ。

WHOなど国際機関がSDGsの活動目標で最貧国の貧困や飢餓を収束させる目標設定をしているが、これに対し、満田会長は、「世界には栄養状態が良くないことが原因で子どもの死亡率が高い国もある。みそは栄養価が高く、炭水化物、たん白質、脂質の3要素に加え、ミネラル、ビタミンなど栄養も豊富だ。塩分摂取の1つとしてみそを使ってもらえれば、栄養状態も改善されるのではないだろうか。日本の健康長寿を支えてきたみそが、世界全体の健康に貢献できる伝統調味料として飛躍していくことを切に願う」と述べる。

海外への出荷が増えれば、大豆や米、麦なども必要になり、日本の農業の活性化にもつながる。日本の伝統調味料の潜在需要は、計り知れないと言えるだろう。

〈大豆油糧日報2023年8月14日付〉