(本記事は、ひろゆき氏の著書『ざんねんなインターネット 日本をダメにした「ネット炎上」10年史』=扶桑社、2023年3月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
誰でもユーチューバーになれる時代の功罪
2019年はユーチューバーが小学生男子の「将来つきたい職業ランキング」(学研調べ)で初めて1位になった年でもあります。
その一方で、ユーチューバーの間で流行していた「おにぎりの早食い」に挑戦し、窒息死する姿をライブ配信する女性が出るなど、ネガティブな話題も出た年でした。
儲かるかどうかは別として、ユーチューバーはスマホさえあれば誰でもなれるハードルの低い職業なので、芸能人から一般人、大人から子供までこぞってユーチューバーになっている昨今だったりします。
その一人として有名なのが、「少年革命家」を名乗る少年、ゆたぼんさんです。小学校に通わず、中学生になったゆたぼんさんは、自身のYouTubeチャンネルを心理カウンセラーを自称する父親と運営しています。
2019年当時には「『不登校は不幸じゃない』10歳ユーチューバーは幸せか?」というネットニュースも話題になりました。
連載当時も「親が悪い」と書いていましたが、やはり今でも、ゆたぼんさんが稼いだお金で親が暮らしているような気がしてなりません。まるで親のロボットのように、一家の大黒柱として頑張っている感じがしてしまうのです。これが江戸時代の話なら美談になったのかもしれませんが、現代でそれはどうなのだろうと……。
もし本当に大黒柱なら、ゆたぼんさんは家族を養うためにユーチューバーを続けるしかない。いろいろな情報を見ている限り、ゆたぼんさんは、それなりに学校へ行っているらしく、給食を食べたり、学校に行きたいのかもしれないと思えてくるのです。
でも、親と世間的なキャラの手前、それを公言できない。一部報道によれば、ゆたぼんさん一家が住むエリアを管轄する沖縄県コザ児童相談所にも多数の相談が寄せられているようです。
子供をダシにしてネットで稼ぐ親たち
ゆたぼんさんに限らず、最近は子供をダシにしてユーチューブやSNSでアクセスを稼ぐ親がさらに多くなった気もします。
僕は子供を働かせたお金で親が食うことを日本で合法にすべきではないと思います。
例えばフランスの場合、子供がお金を稼いだ際は法律上決められた口座に入れなければなりません。そして、大人になるまでの期間、毎月数百ユーロ程度しか引き出せない。これを破ると児童違法労働ということで捕まります。
だから、子供の稼ぎで家族が暮らすことはできないし、そもそも子供を使ったビジネスも少ないのです。
フランスでは日本のアイドルがウケていますが、それは児童労働の禁止により若年のアイドルが珍しいからという面もあります。演劇や芸能など児童の労働が許される枠はありますが、短いスカートをはいてパンツを見せるようなアイドルは違法です。
あくまで個人的な意見ですが、僕はこれが正しいと思っています。
例えば、女性が中学生でアイドルになり学校へ通わなかったとします。そのときはよくても、年月が経過しアイドルとは言えない年齢になって引退をしたら、まともな教育を受けていないアホが世に放たれることになり、食えない大人が生まれてしまう。
事実、アイドルを引退後に食えなくなる人は少なくないですし、なかには性産業で働くことになる人もいる。これはもはや構造問題だと思うのです。
同じように、ゆたぼんさんは今は不登校の中学生ユーチューバーだから話題になっていますが、卒業したらただの無職ユーチューバーになってしまう。もちろん、それなりに知名度はありますが、今ほどの稼ぎになるかは疑問です。
実際にユーチューバーとして数百万の再生数を誇った幼児が成長し、中学生になった際の動画再生数は、数千再生かよくて数万再生しかされていません。
これと同じ状況になることを考えると、子供がユーチューブで家族を食わせ続けていくのは、ちょっと難しいと言わざるをえないのです。
少子高齢化で日本にとって子供は宝のはずです。それなのに子供が幸せにならない仕組みが残り続けているのは、大人が得をしたりラクできるから。そんな状態があるのはいかがなものかと。残念な状況でしかないと思うのです。