(本記事は、ひろゆき氏の著書『ざんねんなインターネット 日本をダメにした「ネット炎上」10年史』=扶桑社、2023年3月29日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【現在のひろゆきが振り返る2013年】
ひろゆきも逮捕寸前だった?ネットの犯罪予告が社会に与えたもの
2013年1月、僕が書類送検されたことがネット上でも話題になりました。理由は、2ちゃんねるのユーザーが掲示板上で隠語を使いながら薬物の取引をしていたことで、2ちゃんねるを立ち上げた僕が「麻薬特例法違反ほう助」の疑いで、書類送検されたのですね。
当時、2ちゃんねるには犯罪予告が書き込まれることもあったのですが、僕が管理人をしていたときには、警察から要請があればログやIPアドレスの提出など捜査に協力をしていました。
そんな犯罪予告のひとつに「パソコン遠隔操作事件」がありました。他人のパソコンにウイルスを感染させて乗っ取り、そのパソコンを遠隔操作して犯罪予告をした、という事件です。犯行予告を書き込んだパソコンの持ち主が4人も逮捕されたのですが、後から真犯人が犯行声明文を発表して、警察が誤認逮捕を認め謝罪しました。
その事件の真犯人が片山祐輔さんです。彼は他人のパソコンを遠隔操作して殺人予告をした疑いで身柄を拘束されていたものの、一貫して無罪を主張。結果、証拠不十分で裁判にもならず、一度は釈放されました。
しかし、釈放されてから真犯人を名乗り報道機関などへメールを送信したことで足がつき、最終的に逮捕され懲役8年の実刑判決を受けています。
釈放後に何もしなければ普通に逃げきれたのに、「なんでそんなバカなことをしたのか?」と思う人もいるでしょう。個人的に、彼は警察がもっとバカだと思っていた気がします。実際に4人が誤認逮捕されたことについて彼は、「意外に簡単だった。逮捕されたと聞いて『やった』という気持ちになった」と言っていたようです。たぶん彼は愉快犯なのです。
警察トップがひろゆきを逮捕したがっていた?
そして、僕が逮捕されなかったのは〝この事件のおかげ〞という部分もあるんじゃないかなと思っていたりします。
というのも、ある週刊誌の報道で、当時の警視総監が就任の所信表明的なもので、「自分の目が黒いうちに、2ちゃんねるをつぶす」と、公に言っていたと書いてあったのです。
その警視総監は生活安全課出身。生活安全課はインターネット上の犯罪などを取り締まる部署でもあるので、あながち間違いでもないような気がしています。
知人のマスコミ関係者からも、「警察は2ちゃんねるをつぶしたいのではなく、本当はひろゆきを逮捕したい」ということも伝えられていました。
要は、2ちゃんねるでは犯行予告などが行われていることから、「それを管理しない僕が悪いはずである」と思ってしまう、頭の悪い警察の人たちがいた。
そして、「犯人が捕まらない以上は、犯罪が起きたことの責任を誰かに被せるべき」という考えで僕がターゲットになり起訴されたわけです。
でも、そんなところにパソコン遠隔操作事件が発生。警察は4人を誤認逮捕したうえに真犯人すら捕まえられなかった。
これが大きな汚点となり、警視総監は退任。別件であろうとなんであろうと、僕を逮捕する方針もあったと思うのですが、書類送検で終わったわけです。