(本記事は、堀江 貴文氏の著書『死なないように稼ぐ。: 生き残るビジネスと人材』=ポプラ社、2021年3月24日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
二元論ではなく「儲け」あってこその「ロマン」
「宇宙にロマンを感じているんですか?」と聞かれることが多い。
僕が投資しているロケット事業に興味を持ってもらえるのはいいのだが、そういった質問には正直、うんざりしている。
ビジネスをやる上で「ロマン」か「儲け」かの二元論で考えるのはナンセンスだ。資本主義の社会でビジネスを継続するなら、利益を出すのが原則だからだ。
ビジネスの世界では、金銭的に成功しなければ意味がない。むしろ、利益を出すことは「最低限の責務」だ。
社会的な付加価値を生み出し、利益をあげ、納税できて初めて、最低限の責務を果たしたことになる。
利益をあげられない企業は一人前とはいえない。利益をあげられなければ「継続性」もないだろう。
継続しなければ、いくら立派な「理想」を掲げていても、それは果たせない。
赤字まみれで倒産するような会社をたくさん見てきたからこそ、心底そう思う。
夢を実現するためには、専門知識や情熱、折れない心が必要だ。でも、それらが揃っていてもたいていの人は資金難で頓挫してしまう。
お金なんかで頓挫してしまうのはもったいないし、悲しいことではないだろうか。
だから僕は、自分にできる資金提供をしている。
僕は子どもの頃から宇宙開発を夢見ていたわけではない。
ロケットが当たり前に飛んでいる未来が来ると思っていたのに、2000年代になっても実現していなかったから関心を持っただけだ。ロケット開発が進んでいない現状に対して「何かできることはないだろうか」と考え、いろいろと調べた結果、現実的な選択肢を見つけた。日本でロケットを作っているチームを支援することにしたのだ。
インターステラテクノロジズに投資しているのは、他に誰もやる人がいなかったから。だから僕がやっているだけのことだ。
宇宙開発では、有人宇宙飛行の経費を現在の1/100以下に抑え、多くの人々を輸送するシステムを作りたいと考えている。
ロケットは今、需要に供給がまったく追いついていない。
人工衛星を作る技術が革新してどんどん小型化し、スマホで使われているような高機能で低価格なセンサーが大量に使われるようになっているのに、その人工衛星を打ちあげるためのロケットが足りていないのだ。
ブロードバンドインターネットや地球のリアルタイムなイメージングなど、人工衛星でいろいろなことを実現しようとしているが、ロケットが不足しているのだ。
つまり、ロケットが実用化できれば「巨大な市場」に参入できる。
しかも、マネタイズの方法は他にもいろいろとある。
たとえば、ロケットの「機体広告」、発射場の「ネーミングライツ」、「発射ボタンを押す権利」、ホンダジェットに乗りながら「ロケットを見るツアー」などを販売しているし、したいと考えている。他ではない体験を提供するのだ。
実現すれば、自ずと「儲け」もついてくるはずだ。