飲食店は不況の時こそチャンス? コロナ禍だから実現した新規出店
(画像=Vittaya_25/stock.adobe.com)

(本記事は、藤嶋 由香氏の著書『一緒に飲みたくない客は断れ!』=ポプラ社、2021年10月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「どん底期の出店」ほど強いものはない

景気の良い時は、勢いで出店しても、それなりにお店は儲かります。しかし、不況の中、飲食店を出店するということは、しっかり戦略を練らなければうまくいきません。これは飲食店経営だけでなく、すべてのビジネスで言えることです。

2020年11月、当店の4店舗目の出店は、まさにそうした状況下での決断となりました。

串焼きで提供するホルモンではなく、お客様自身でロースターで焼いていただくホルモン屋をやりたいという思いは、実はコロナ禍以前からありました。けれど、なかなか良い物件が見つからず、出店の話は先送りになっていたのです。

そうした中、新型コロナウイルス感染症が蔓延し、飲食業界は大打撃を受けました。相次ぐ閉店、倒産は、同業者としても心が痛く、見るに堪えぬものでした。

しかしながら、幸運にもその最中に理想の物件が見つかったのです。

新橋の路面店でした。通常であれば競争率が高く、大手企業が独占してしまうため、私たちのような個人店には回ってこない好物件でした。しかも、不況のせいで家賃面でも融通が利くというではありませんか!

物件を見に行ったところ、ひときわ輝きを放つ店舗が目に飛び込んできました。私の心は一瞬で決まりました。

とはいえ、勢いだけでスタートするのは危険です。「こういう時代だからこそ回ってきたチャンス!絶対に失敗しない!」と思えるまで、戦略を練りに練った後に、慎重に開店しました。

その後、お客様の応援もあって、無事にお店を運営できていますが、全力で応援してくださるお客様は皆、店に対して「親心」を抱いてくださっているように思えます。「俺がこの店を育てるんだ!」と言わんばかりに、知りうる限りの「食べる」「飲む」が好きな方を大勢連れてきてくださいます。

そういった姿を見ると、「たくさんのお客様を喜ばせて、成功したい!」という思いがより強くなるものです。そのお陰もあって、気持ちが前向きになり、たくさんのアイデアが閃き、それらを次々と実践しています。

4店舗目の出店で感じたのは、不況の今だからこそとにかく〝目立つ〟ということです。もし、景気回復しつつある時期だったら、他店も相次いで出店するため、競争率も高く、当店の出店は埋もれてしまった可能性があります。

しかし、ここに落とし穴があります。目立つが故に「顧客満足度の低いメニュー」を提供してしまうと、噂が回るのも早く、早々に店じまいとなってしまうということです。

どん底の時の開店やビジネス創業は、徹底的にサービスや商品の質を高めることで、普段の何倍もの目立ち方をします。どん底の時の強みを活かし、新しい挑戦に踏み出してゆきたいものです。

一緒に飲みたくない客は断れ!
藤嶋 由香(ふじしま ゆか)
新橋のもつ焼き居酒屋「やきとんユカちゃん」店主。居酒屋経営コンサルタント・居酒屋コメンテーター。1976年、北海道室蘭市生まれ。短大時代、モデル・歌手の道を目指し、20代の頃、クラウンレコードからジャズシンガーとしてデビューし、アルバム2枚をリリース。モデル、歌手、ホステス、エステスクール講師、エステ店経営者を経て結婚、夫が経営していた串焼屋の女将となる。「居酒屋文化の推進」をライフワークとし、多方面にて活動中。YouTube チャンネル「やきとんユカちゃんねる」を運営。コロナ禍による営業自粛要請と戦う「新橋一揆」や権力に対する歯に衣着せぬ発言で注目を集め、これまで100を超えるメディアから取材を受けている。

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