飲食店経営者は店に出るべき? 人気居酒屋の女性店主が目指す「従業員全員がリーダーのお店」
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(本記事は、藤嶋 由香氏の著書『一緒に飲みたくない客は断れ!』=ポプラ社、2021年10月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

経営者が現場に立つことが大切

あなたは普段、どのくらい自分のお店に滞在していますか?

お店は従業員に任せきり……そんなことはないでしょうか。

時折、帳簿の数字だけを見て口を出す経営者がいますが、もしそれで成り立っているなら、相当、優秀な従業員なのでしょう。

私も経営者となり今年で13年目ですが、お店のほころびは、数字には出てこないところから生じるものです。

まして、従業員の日々の努力は、なかなか数字に反映されるものではありません。けれど、その小さな努力の積み重ねが成果へと現れるものですから、従業員みんなの日々の努力と成長を、真っ先に評価したい、私はそんな気持ちで絶えず店頭で見守っています。

そんな私ですから、経営者だろうと、お店に立つのは当たり前。現場を良くすることを第一にと考えたとき、スタッフの不満を解消することも役目の1つだと思っています。

特に掃除に関しては、従業員の誰よりも率先して行うと決めています。

焼き場に立った後の炭火のダクトも閉店後にピカピカになるまで磨くため、先日もお客様に「ユカちゃんの店ってすごくきれいだよね。何年目?まだ新しいよね?」と尋ねられ、「10年目になります」とお答えしたら、ものすごく驚かれました。

単純な私は、そういう反応が見られるのも嬉しいと感じ、来る日も来る日も新品同然に磨きあげています。

従業員に指示を出して「お前はやってないくせに」なんて絶対に思われたくないですし、とにかくお店は現場がすべて。経営者だからこそ、お店を良くしよう、お客様を幸せにしようと接客する姿を従業員には背中で見せたいと考えています。

時折、お客様からも「従業員に任せればいいじゃん」と助言をいただくことがありますが、もしも従業員に「現場にいなくてもいい」と言われるような仕事をしているようなら、それは経営者として恥ずかしいことです。

それに、人はどうしても楽をする方に流されてしまうもの。

毎日、同じものを売り、同じ流れで開店から閉店までをルーティンワークとしてとらえてしまえば、掃除1つとっても「今日はこれでいいや」、盛り付けにしても「これでいっか」とサボる気持ちが出てしまいがちです。

そうした従業員たちの気の緩みを正すのも、やはり経営者の役目。何か1つでも毎日、新しいことに取り組めるよう、課題を共有しています。

「今日は昨日よりも大きな声で〝いらっしゃいませ〟を言ってみよう」
「今日は誰よりも早くオーダーを取ろう」
「今日は最低でも5人のお客様の名前を覚えよう」

そんな風に刺激を与えることで、従業員も緊張感を持ち取り組めるようになります。

お店は生き物ですから、常時新しい栄養と刺激を与えなければ、健康は保てないのです。

中でも私が効果的だと感じているのが、その日のリーダーを決めることです。

「今日はあなたが掃除リーダー」
「あなたはドリンクリーダー」
「あなたはフードリーダー」

など、責任ある立場を任せることで、従業員の意識は大きく変わります。

結果、店内も新鮮な空気が流れ、それぞれが目的を持ち、みんなでお客様の幸せを願い働くことができるのだと実感しています。

私は、全員がリーダーのお店を目指しています。そして、経営者としてリーダーたちに背中を見せていきたい、そう思っています。みんながリーダー、なのに、ワンチームのチームプレーもできる。そんなチームは最強のチームとして結果も出せると考えています。

一緒に飲みたくない客は断れ!
藤嶋 由香(ふじしま ゆか)
新橋のもつ焼き居酒屋「やきとんユカちゃん」店主。居酒屋経営コンサルタント・居酒屋コメンテーター。1976年、北海道室蘭市生まれ。短大時代、モデル・歌手の道を目指し、20代の頃、クラウンレコードからジャズシンガーとしてデビューし、アルバム2枚をリリース。モデル、歌手、ホステス、エステスクール講師、エステ店経営者を経て結婚、夫が経営していた串焼屋の女将となる。「居酒屋文化の推進」をライフワークとし、多方面にて活動中。YouTube チャンネル「やきとんユカちゃんねる」を運営。コロナ禍による営業自粛要請と戦う「新橋一揆」や権力に対する歯に衣着せぬ発言で注目を集め、これまで100を超えるメディアから取材を受けている。

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