(本記事は、藤嶋 由香氏の著書『一緒に飲みたくない客は断れ!』=ポプラ社、2021年10月6日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
たった100人のファンでどんな店も儲かる
100人と聞くと、数の多さに驚かれるかもしれませんが、1日30~50人のお客様が来店すると考えれば、その全員に心配りし、サービスを提供するのはそれほど難しいことではありません。
仮に来店する30人のうち、1割の方が当店の味とサービスを気に入りリピーターとなってくれた場合、1か月で100人くらいの方が後日、来店してくださり、その方達がまた新しいお客様をお連れくださいます。毎日、目の前のお客様に気配り、心配りをし、お店の良さを伝え続ける──どのような形態の店舗でも、日に30人であればやれるはずです。
その際、私が心掛けているのは、お店の良さを言語化しアピールすることです。
当店であれば串がメインですから、「美味しい!」とおっしゃってくださったお客様には、一言目に「朝まで生きていた新鮮な豚を使っているんです」とお伝えしています。
この言葉に、だいたいのお客様は好反応を示し、興味がある方は「産地は?」「自分たちで捌いているの?」など、次々と質問をくださることもあります。
こういったパワーフレーズを1つ準備しておくだけでお客様の心を掴むことができるので、お店の魅力や自信を持ってお伝えできることは、ぜひ〝決めぜりふ〟としていくつか用意しておくと、お客様の印象に残りやすいでしょう。
また、お店を気に入ってくださると、お客様からお名刺を頂戴することもあります。大体、居酒屋ではお名刺をいただいて終わりという店がほとんどですが、私は時間がかかったとしても必ずメールをさせていただき、お礼を伝えます。
そうすると、「お店のこういうところが素晴らしかったよ」「ここに感動したよ」というお返事をくださる方が多いです。
お客様としても、「まさかメールが来るとは思わなかった」と驚くようで、こうしたアフターサービスも感動の1つになっていると実感しています。
そしてもう1つ、ファン作りで心掛けているのは、焼き場に立つときは〝魅せる〟ことを意識する点です。
ホールにしても、キッチンにしても、絶えずお客様の目に映ります。ですから、飲食業には表舞台、裏舞台もなく、どんな作業でも自分を輝かせることが大切です。
ただ、その中でもうちのメインの商品を扱う焼き場は、神聖な場所であり、舞台で喩えるなら〝座長〟とも言える役割を担う場です。
私自身、焼き場に立つときは全神経を集中させ、一挙手一投足に気を配り、店全体に〝魅せる〟ことを意識しています。
エンターテインメントと言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、私は訪れた人みんなの記憶に残り、たくさんのエネルギーをチャージしてもらいたいと願い、焼き場で串を焼いています。
そうやって真心を込めてお酒とお料理、サービスを提供できたのちに、お客様から「楽しかったよ」「美味しかったよ」と言ってもらえることこそ、やきとん屋冥利に尽きる、そんな瞬間となります。
お客様を楽しませることがリピーターにつながります。今の時代は、お店やあらゆるビジネスでもファンづくりが大切だと感じています。それこそ芸能人のような意識も必要になる時代なのです。
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