(本記事は、下矢 一良氏の著書『巻込み力 国内外の超一流500人以上から学んだ必ず人を動かす伝え方』=Gakken、2022年12月15日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
一瞬で効果を生む文章力アップのテクニック
ある巨大企業の、実際のプレスリリースを基につくった文章を例に見てみます。大企業のプレスリリースは社内からの指摘を恐れるあまり、細部の正確さを重視しすぎて、一般には「かなりわかりにくいもの」が少なくありません。
当社はこの度、データ利活用に取り組むさまざまな事業者向けに、個人の同意に基づいたデータ流通をより安心・安全に実現する「個人情報管理サービス」を開発し、販売を開始します。本サービスを利用することで、個人の同意に基づいたデータの幅広い利活用により、時代やニーズの変化に応じた高付加価値サービスの提供やデジタルトランスフォーメーションの推進が可能になります。
この難解な文章を「わかりやすいもの」に変えるには、どうしたらよいでしょうか。最も簡単な方法は、ひとつの文章をできるだけ短くすること。専門用語を一般的な言葉に言い換えれば、さらに「わかりやすいもの」となります。
当社は「個人情報管理サービス」の販売を開始します。ここで取り扱う個人情報は全て本人の同意を得たものです。本サービスによって、個人情報を幅広く安全に活用できるようになります。時代の変化に応じた、価値の高いサービスの提供やデジタル化の推進が可能になるのです。
「この度」「データ利活用に取り組むさまざまな事業者向けに」など、わざわざ書かなくても意味が通じる言葉は全て省きました。「安心・安全」は似たような意味なので、「安全」だけで十分です。「利活用」は「利用」と「活用」を合わせた、主に役所で使われている言葉です。これも「活用」だけで理解できます。
「デジタルトランスフォーメーション」とは、「デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより便利にすること」です。シンプルに「デジタル化」としても意味は通じます。
余計な単語を省いて、一文を短く。これだけで文章は格段にわかりやすくなります。
わかりやすい文章にするだけではなく、もう一段、文章を上手に見せるためのコツもあります。
コツのひとつは「思います」という言葉を使わないようにすること。「思います」や「考えています」「感じます」で結ばれた文章が並ぶと、どこか自信なさげに見えてしまいます。思い切って削ってください。
どうしても断言したくないという場合もあるでしょう。その場合は「思います」を「自負しています」「確信しています」といった言葉で言い換えてみてください。「思います」よりも力強い表現ですが、「客観的事実とまでは言い切りたくないとき」に使いやすいものです。
もうひとつは「そして」「また」「しかし」といった接続語を、できるだけ使わないようにすること。文頭に接続語が並ぶと、それだけで幼稚な文書に見えてしまいます。接続語は、なくても意味が通じることがほとんどです。
最後は同じ単語を繰り返し使わないようにすることです。文章を書くと、どうしても同じ単語を頻繁に書いてしまうことがあります。そんなときは、類語で言い換えてみてください。類語はネットで検索すれば、簡単に出てきます。
この3つのコツを心がけるだけで、「幼稚な文章」という印象を避けることができます。
周囲に溶け込むのが苦手で「技術者になれば、人付き合いをせずに済む」という理由で、早稲田大学理工学部に入学。しかし就職活動を迎えると、「自分の好きなことを仕事にしよう」と、テレビ局を目指す。面接を勝ち抜くための「アピール方法」を分析し発揮した結果、倍率100倍以上の面接を突破しテレビ東京に入社。『ワールドビジネスサテライト』『ガイアの夜明け』を経済部キャップとして制作。スティーブ・ジョブズ氏、ビル・ゲイツ氏、孫正義氏、三木谷浩史氏、髙田明氏、藤田晋氏、前澤友作氏らにインタビュー。500人以上の一流ビジネスパーソンを取材し、彼らに共通する「うまく伝える法則」を見出す。併せて、7万通以上のプレスリリースを読んだことで、典型的な「伝え方の失敗例」も知ることに。その後、ソフトバンクに転職。孫正義社長直轄の動画配信事業(Yahoo!動画、現・GYAO)を担当。この際、孫社長の情報発信術を間近で学ぶ。年に1組しか選ばれない「ソフトバンク・アワード」を受賞。現在はPR戦略コンサルタントとして中小企業のブランディングや宣伝のサポート等を行う。
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