矢野経済研究所
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シニア関連市場のコロナ禍からの回復は道半ば

~訪問サービスや介護福祉用品、介護食・高齢者食などはコロナ禍でも成長が続く~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のシニア関連12市場65サービスを調査し、2021年からのシニア関連マーケットの動向を幅広くまとめた。

1.調査結果概要

 少子高齢化が進み、人口構成や世帯構成が変化していく中で、消費購買層としてのシニア層の重要度が高まっている。使えるお金や時間に余裕があるとされているシニア層の消費をどのように取り込むかが、今後のマーケティング活動のポイントの一つになるからである。

本調査では、シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業などに焦点をあて、その市場動向を分析し、参入の取り組み等を広く調査した。特に、介護・リハビリや老人ホームなどといった、従来からの高齢者向けマーケットだけでなく、レジャー、スポーツ、趣味、習い事といった新しいカテゴリーや流通事業者の動向も捉えている。
ここ数年で、様々な市場や企業でシニア向けの取り組みが行われたが、シニアに支持されて拡大するものがある一方で、既に撤退した業態やサービスも出ている。
また、2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う様々な行動制限は、シニア関連市場にも多大な影響を与え、特に旅行市場と娯楽市場は甚大な打撃を受けた。
そのような環境にあって、介護・リハビリ市場のうち、訪問サービスや介護福祉用品、福祉用具貸与、介護ロボットなどはコロナ禍にあっても成長が続いているほか、健康食品・サプリメント、介護食・高齢者食なども市場が拡大している。一方、介護・リハビリ市場でも、通所サービスや短期入所サービス、趣味・習い事市場などは市場の縮小が続いている。また、スポーツ市場や衣料品・日用品市場は復調傾向にはあるものの、依然としてコロナ禍前の水準には届かず、市場の本格的な回復には至っていない。

2.注目トピック

需要が高まる高齢者見守りサービス、IoT機器の活用で多様なサービスが登場

 核家族化や高齢世帯の増加などに伴い、様々なシニア向けのサービスが登場してきた。そのなかでも、高齢者や高齢世帯を対象とした生活支援サービスとして、見守りサービスの成長が続いている。
見守りサービスは、高齢者の安否確認などのニーズの高まりに応え、2000年前後から市場が形成されてきた。当初は警備会社が手掛けていたホームセキュリティシステムを通じ、遠隔地に居住する高齢者を家族が見守る安否確認用として普及した。現在では、訪問介護サービスや在宅配食サービスなどの付帯サービスとして展開する事業者も増え、電力会社やガス会社なども自社のインフラを活用して見守りサービスを手掛けている。
この数年は、通信ネットワークやIoT機器類を用いたサービスも増加しており、携帯電話会社、ケーブルテレビ事業者のほか、家庭内で利用される日用品メーカーなども参入し、照明、テレビ、ベッド、玄関ドアなど、シニアの生活の動きに結びつく家電や家具、住宅資材を通じた見守りサービスが普及している。

その他、見守りサービス専業の事業者も現れている。また、介護サービスや高齢者住宅の事業者などと提携し、サービスを提供しているケースも増えている。特に、訪問介護サービスや在宅配食サービスなどの事業者では、家に訪問した際に人の目で確認するサービスで差別化を図っている。
また、認知症などによる高齢者徘徊が社会問題化しており、これには地域が一丸となって取り組む必要もあるため、民間事業者のリソースやIoT機器を活用し、高齢者世帯向け見守りサービスを提供する自治体も多い。見守りサービスは、高齢化の進展に伴い今後も需要が増加する見通しである。

調査要綱


1.調査期間: 2022年10月~2023年3月
2.調査対象: シニア世代を主力ターゲットとするマーケット、もしくはシニア世代の需要を積極的に取り込もうとしている企業など
3.調査方法: 当社専門研究員による文献調査、ならびに直接面談調査併用
本調査では、以下のシニア関連12市場65サービスを対象とし、マーケットの動向を調査した。

介護・リハビリ市場(訪問サービス、通所サービス、短期入所サービス、施設サービス、介護福祉用品、介護ロボット)、住宅市場(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、シニア向け分譲マンション)、宅配市場(在宅配食サービス・宅配弁当、生協個配、ネットスーパー宅配、外食チェーン宅配)、各種支援サービス市場(見守りサービス、家事代行サービス、シニア人材派遣・シニア向け起業支援、婚活支援・マッチングサービス、終活支援サービス、金融サービス)、旅行市場(ツアー、介護旅行・バリアフリー旅行、クルーズツアー、鉄道旅行、バスツアー)、スポーツ市場(フィットネスクラブ、ゴルフ、登山・アウトドア、ボウリング、卓球、ダンス)、娯楽市場(音楽、映画、カラオケ、ゲームセンター、テーマパーク・遊園地、温浴施設)、趣味・習い事市場(カルチャーセンター、大学公開講座、日本文化教室、アート教室、資格取得教室、パソコンスクール、音楽教室)、食品・外食市場(食品、健康食品・サプリメント、介護食・高齢者食、総菜・弁当、飲食店、コーヒー・カフェ)、衣料品・日用品市場(アパレル、化粧品、大人用紙おむつ、毛髪業(かつら・増毛)、杖、眼鏡・コンタクトレンズ、補聴器)、家電・情報機器市場(生活家電、音響機器、シニア向け携帯電話・スマートフォン)、流通(スーパー、コンビニエンスストア、百貨店、ドラッグストア・薬局、通信販売)
<市場に含まれる商品・サービス>
同上

出典資料について

資料名2022年版 シニア関連市場マーケティング年鑑
発刊日2023年03月28日
体裁A4 600ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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