2030年度の新設住宅着工戸数は2022年度比13.5%減の約74万戸を予測
~長期的な需要減に伴い、住宅供給事業者や建材・設備事業者の淘汰が進む可能性も~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内住宅市場及び住宅関連市場を調査し、2030年度の将来展望を明らかにした。
新設住宅着工戸数予測
新築注文戸建住宅におけるZEH化率予測
1.市場概況
新設住宅着工戸数は、人口・世帯数の減少や住宅余りの状況等を理由に、長期的に漸減傾向で推移し、2030年度の新設住宅着工戸数は、2022年度比13.5%減の744,600戸を予測する。
新設住宅市場が長期的に縮小傾向である一方で、既築住宅数の増加に加え、経年劣化に伴う修繕需要や住生活空間の充実を図るようなリフォーム需要が長期的にも底堅く推移することが見込まれることから、新設住宅市場を事業の中心としてきた参入事業者は、これまで以上に新築市場から既築市場に移行すると考える。
2.注目トピック
2030年度以降のZEH義務化を見据え、ZEH化率は向上
政府の2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、住宅・建設業界では建築物の省エネ性能の強化を加速させている。2030年度には、戸建住宅か集合住宅かを問わず、新築住宅の省エネ性能をZEH※水準に引き上げる目標を示した。そのため、2030年度以降の新築住宅は、必然的にZEH水準が標準になるものとみる。
こうしたなか、大手ハウスメーカーではZEH住宅に対応した商品を展開するなど、すでにZEH技術を確立している。ハウスメーカー各社では各社のZEH化計画に則って、2030年度までにはZEH化率100%を達成していくものと考える。
一方、地域密着型の一般工務店では、現下、ZEHに関する技術やノウハウを持っているところは多くはない。2030年度以降のZEHの義務化を見据え、ZEH住宅に関する専門的な技術の確立や建築実績の獲得、あるいは外部のサポートを受けてZEHを受注できる体制を構築することは、必要不可欠な選択肢となる。
※ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス:Net Zero Energy House)とは、断熱性能の向上等により大幅な省エネルギーを実現させた上、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入などにより、年間のエネルギー収支をゼロ以下にすることで、カーボンニュートラルの実現に寄与する住宅である。
3.将来展望
今後も長期的に人口は減少する見込みであるため、住宅市場規模は縮小傾向にある。2020年代初頭は80万戸台を維持している新設住宅着工戸数も2030年代には70万戸台、2040年代には60万戸台に減少していく可能性がある。
長期的な住宅需要の減少に伴い、住宅供給事業者や建材・設備事業者の淘汰が進む可能性があるとみる。今後、こうした市場環境において生き残るためには新築市場から住宅リフォームなどの既築市場への参入や海外市場への進出など、成長性や安定性を見据えた事業内容の構築や建築請負型のほか、住宅売買取引の仲介料などの手数料型ビジネスの強化など収益源の多角化を進める必要があると考える。
調査要綱
1.調査期間: 2022年12月~2023年3月 2.調査対象: 住宅市場及び住宅関連市場の参入事業者、関連団体等 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査および文献調査併用 |
<住宅市場とは> 本調査における住宅市場とは、新築住宅市場(持家/分譲戸建/分譲マンション/貸家)のほか、中古住宅流通市場、買取再販市場、住宅リフォーム市場、住宅解体市場、住宅ストック市場、空き家市場などの既築住宅市場までを対象とする。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 新築・既築住宅市場及び住宅設備機器市場などの住宅関連市場 |
出典資料について
資料名 | 2030年の住宅市場の展望 |
発刊日 | 2023年03月29日 |
体裁 | A4 171ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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