味の素冷凍食品は5月24日、本社で専門紙向けに2022年度業績報告会を開いた。
2022年度の売上高は1057億円で前年度比4%増、事業利益は73億円で前年度を3億円上回った。事業利益率は6.9%で前年度並みを維持した。原燃料費の高騰や為替影響で日本事業は減益だったが、海外事業の伸長が寄与して増収・増益となった。
味の素の決算では共通費を差し引いた数値を公表しているが、より経営実態に近い数値を明らかにしている。国内事業の売上高の内訳は、家庭用が1%減、業務用が9%増、キーアカウント(KA=外食チェーンやコンビニエンスストア、病院・施設など特注品を中心として事業展開する領域)が1%減。
家庭用でギョーザ類は主力品が前年を下回ったが、全体で前年度を上回った。シュウマイ類は2桁弱の増加。野菜デリ(中華丼の具、アンパンマンポテトなど)は2桁増と伸長した。
ギョーザについて伏見和孝常務マーケティング本部長は「価値訴求を徹底する方向に期中から舵を切り、特売価格も抑制したことで、2022年度後半から競合品との売価の差が開き、それを埋める価値訴求が不十分だった。一方で大袋餃子は売価帯はかなり高いが、手ごたえはいい。この春の棚替えでも取り扱いが増えており、値崩れもない展開が出来ている」とした。
家庭用の米飯類と鶏肉加工品は減少した。「米と鶏は競合に比べて高価格帯の商品が多く、価格改定による生活者の受入れ負担が高い。需要喚起にはもっと取り組む必要があった」(伏見常務)とした。
家庭用は物量ベースでは2桁減となった。家庭用について寺本博之社長は「マーケットは当社が苦戦したカテゴリーも伸びている。価格のいき値を外したことには手を打っていかざるを得ないと思うが、構造強化しながら、新製品を含めて総合的に手を打ちたい」と述べた。
業務用について、これまで構造強化として不採算品のアイテム削減を進めてきたが、コロナ規制の緩和による市場回復に伴い、売上げを回復した。ただしコロナ前の規模には届いていない。餃子やスイーツ、野菜加工品(レンコンはさみ揚げなど)が伸長した。
寺本社長は業務用について、単に市場回復に乗ったものではなく、力強く回復しているとして次のように話した。「マーケットの回復もあるが、自信の根拠は、それ以上に人手不足への対応という提案型の取り組みが支持を得ていることにある。双方向のコミュニケーションを通じてお客様の課題を解決していくというのは味の素グループのDNAだ。味の素グループの中の冷凍食品会社という位置づけをさらに強めたいと思っており、味の素グループが持つ技術を使って差別化された製品と差別化された提案力に挑戦していく」。
キーアカウントは減収となったが、そのうちメディカルは大幅に伸長、その他のチャネルが苦戦した。ただし構造強化により、利益は伸長した。
国内事業の利益は減益となった。原燃料の高騰や原材料の調達難、為替影響(全体で44億円の減益要因)により、この間、計3回の価格改定でも吸収しきれなかった。ただし、工場においてAI活用によるロス削減や代替原料の開発によるコスト削減策を積み重ねたことが利益確保に大きく貢献したと強調している。
海外事業の2022年度売上高は、前年度比29%増と伸長。中国から北米・欧州に輸出しているチャーメン(焼きそば)、タイから欧州向けに輸出している餃子が好調だった。売上げ拡大に伴い利益も増加した。事業規模は全体の1割程度だが、業績全体を牽引した。
2023年度について、羽賀俊弘執行役員経営企画部長は「家庭用を成長軌道にどのように回復させるかが大きなポイント」と述べた。伏見常務はこの点について「値引きの世界を脱却して、価値訴求を徹底する。この4月からは値引きを抑制し、いろいろなマーケティング施策に着手している」と述べた。
一例が、SNSのギョーザをうまく焼けなかったというコメントに対して、同社がフライパンの引き取りを申し出て、大きな話題となった事例。「私たちがどういう会社で、どういうことをお客様に対してしてきたかを、多面的に積極的に生活者と双方向にコミュニケーションしていきたい」とした。
〈冷食日報2023年5月25日付〉